トラブル詰め合わせ
どうもみなさん、基本眠い狛太郎です。
投稿遅れて本当に申し訳ない!ゲームばかりやってました。最近ようやくPS4を購入しました。キングダムハーツばかりやってますw
あと、PQ2(ペルソナQ2)もやってます!ペルソナシリーズはおすすめ!アニメも見てほしい!
話が脱線しましたね。今回は王都に着き、問題を起こした後の話です。お楽しみください!
ユリナは作業着を晒が隠れるまで深く着用し、カレンと一緒に出入り口に向かった。出入り口に着いたと同時に、扉は開かれ外から大勢の鎧を着た輩が入ってきた。全員軍人だろう。その中には遊楽に蹴られた赤鎧の男もいた。相変わらず頭まで装備しているため表情は分からなかった。
「お国のお方がこんな小さな店に何の用ですか?」
「この店に五人組が来なかったか。ここにいるという情報は掴んでいる。大人しく引き渡せば貴様らには手出ししない。」
「そんなこと言われましても、私は知りませんよ。カレンも知らないでしょう?」
ユリナがカレンに目配せすると、大きく数回頷いた。
すると、外に居た軍人も店の中に入って行き、店の中を隅々まで探した。物品を棚などから落としながら乱暴に。しかし、躊躇する様子は見られなかった。
「ちょっと!何するんですか!」
「捜索だ。異論は認められない。」
ユリナは言いたいことをぐっと堪えた。ユリナ1人ならば言いたい放題だったかもしれないが、カレンのことを考え今回は感情を押しこんだ。
しばらく横暴な捜索をしていると、幾人かが報告を行った。すると赤鎧が全員を招集した。
「どうやらこちらの手違いだったようだ。しかし、いい店の様だな。」
すると、赤鎧の男は壁に寄り2回トントンと叩いた。
それが聞こえたアリエスは遊楽に話しかけた。
「2回叩かれたわよ?」
「これじゃ出ちゃダメだ。あんなに近くで話してたのに、盗み聞きされてないわけがないでしょ?だから、カレンさんには合図を変えてもらったんだよ。」
これを聞いたルーイとアリエスは納得したように手をポンッと打った。そして優華は遊楽の耳元で
「遊楽君はずる賢いね。」
と呟いた。
「そこは用心深いって言ってほしかったけど…。」
というわけで、遊楽達は外に出なかった。結局出てこなかった遊楽達に痺れを切らした赤鎧は捜索を諦め、店を出て行った。店の品々を元に戻さずに。
「はぁ…。これだから軍は。それじゃあカレン、遊楽さん達を呼んできて。」
「うん、分かった…!」
カレンは壁にテクテクと歩いていき、壁をリズミカルに叩いた。そして、漸く遊楽一行は外に出た。
「合図がこんなリズムだとは。ほんと遊楽君は何考えてるかわからないよ。」
「リズム自体はお任せだったけどね。カレンさんもユリナさんもありがとうございました。」
「それは全然いいんですけど、事情はしっかり説明してもらいますよ。」
全員が総出で、こうなってしまった経緯を説明した。するとユリナは呆れた顔に。カレンは憧れている顔になった。
「こんな感じなんですけど、巻き込んでしまってすいません。」
「その…。勇者様、みたいで、かっこ、いいです…!」
カレンは輝いた顔で、憧れの目を遊楽に向けた。
「カレンちゃん。こんな男に憧れちゃダメだよ?」
そこに優華が茶茶を入れた。
「おい、優華さん。ちょっと黙ってようか。」
遊楽は怒り込の笑顔で答えた。それに対して優華は鳴らない口笛を吹いていた。その様子を見ていたユリナはより呆れていた。
「それが皆さんの平常運転なんですか?まぁもう乗りかかった船ですから、私は降りるつもりはありませんよ。でも、軍となれば今回捕まらなかったので放送で呼び出される可能性があります。ですが、そっちの方がいいです。どうせ呼び出されるからと言って今回出て行けば、間違いなくこの場で全員殺されてたでしょうね。ここは人目も少ないですし、目撃者である私とカレンもやられてたかもしれません。そんなことになるぐらいなら、私は協力しますよ。」
「その、微力、ですけど…、私も、協力、します…!本当に、ちょっと、ですけど…。」
「そんなことありませんよ。私達はこの街について知らないことばかりです。特に私とロウガは滅多に外に出ませんでしたから。少しでも人はいた方が助かります。」
「それじゃあ、対策を練りましょうか。正直、呼ばれていくのは僕1人でもいいんですけど。」
「多分それは無理ですね。この街は基本連帯責任。パーティーの誰かが呼ばれたら全員行かないといけません。」
「そうなると、仮ってことでも優華さんも行かなきゃならないっすね。いざとなったら、片っ端から倒しまくって外に行けるっすよ。ここ以外にも街はあるっすから!」
「だから、それは駄目だって言ってるでしょ。そんなに死に急ぐがないの。」
遊楽達は結局全員で出向くということで話がまとまり、店を後にしようとした。その時、丁度街に声が響き渡った。
【この放送に心当たりのある者、リネス城まで。】
「対応はっやー…。それじゃあそういうわけで僕たちは行きます。本当にいろいろすいません。」
「それを言うならお礼の方がいいですよ?まぁ頑張ってください。これからもどうぞ御贔屓に。片づけは気にしないでください。」
ユリナがそういう見送ると、カレンが急ぎ足で遊楽の前まで走って行った。すると、もじもじしながら何かを言いたそうにしていた。そこで遊楽はきっかけとなるように話しかけた。
「どうしました?」
すると、徐々にカレンの顔が赤くなった。そして、息を整えてから話した。
「えっと…。その、よかっ、たら、もう一回、頭を、撫でて、もらっても、いいですか…?」
「…?そんなことでいいのなら、減るものでもありませんしいいですよ。」
そういい遊楽はカレンの頭を優しく撫でた。するとカレンの顔が徐々に緩んでいき、満足気な顔を浮かべた。それに吊られ遊楽の顔も緩んだ。しかしここでも優華が茶茶を入れた。
「遊楽君ってロリコンなの?」
「違うわい!いい加減にしないと、僕の鉄拳ぐらいなら飛んでくるかもよ。」
「おっと、それは遠慮しておきたいわ。」
その様子を見ていたユリナは、苦笑した。そして、再度見送った。
「その調子で変なこと起こさないでくださいよ?」
「それ、じゃあ、お気をつけて…!」
こうして、呼び出された遊楽一行はリネス城へと向かって行った。
リネス城は王都パチナオの1番の城だ。他にも幾つか城は存在しているが、最も有力な王族が過ごしており、パチナオのシンボルであるのはリネス城だ。また、他の王都と過ごしている王族に比べても、かなりの立ち位置らしい。その証拠に、今だに持っている王族が少ない拡声の魔道具を使用していた。先ほどの放送もそれによる物だ。
城までの道中、居場所が漏れたことについて議論されていた。
「どうしてさっきの場所がばれたんだろう?私にはさっぱりだよ。こういうと時こそロウガ君の直感の出番なんじゃないの?」
「俺の直観は固有魔法じゃないんっすよ。それに、俺の頭じゃ難しい事は考えられないっすよ。アリエスさんとかどうっすか?」
「私も分からない。可能性があるとしたらあのトリンって人じゃない?遊はどう思う。」
遊楽は問われたことに対してしばらく悩んだ後、思いのほか簡単な答えに笑った。それはある種定番だったのかもしれない。
「何か分かったんですか?」
「みんな、固く考えすぎだよ。トリンさんはシロ。つまり無関係。答えは、ただの尾行。」
その答えに歩きながらではあるが、唖然としていた。そして最初に口を開いたのはロウガだ。
「でも、あの時鎧の連中は帰ったじゃないっすか。俺達がギルドで話している間も戻ってきたやつはいなかったっすよ?」
「そうだよ、誰も戻ってなんかない。全員戻ったと見せかけて、あの場に1人残ったんだよ。そして、ギルドを出てったところを尾行して、留まった時に報告したってことだと思うよ。軍ともあれば携帯できる連絡鏡の1つでも持ってるでしょ。常日頃から魔力の在りかで人の場所を察知してる人なんてなかなか居ないし、仮に居たとしても、予め周りに馴染んでおけば不審に思われることもない。よくある手口、だと思う。」
「あぁー、私も漫画で見たことあったなぁ。友達がゲームでやってるところも見た気がする。その子はすごく嫌そうな顔してた。」
「それじゃその子はまだまだ初心者だね。ま、とにかくトリンさんは無実で、ただ単に僕たちが騙されてただけ。結論はこうだよ。全員納得?」
「納得はしましたけど…。納得できないというか…。」
「ルーイさんでもやっぱそうなりますよね。」
「まぁ、ここでいま項垂れてても、遊の起こした問題が消えるわけじゃないし、なんやかんやでもう城も目の前だし、気持ち入れ替えよう!」
遊楽、アリエス、優華はこの答えに納得し軽快に城へとあるいて行ったが、ルーイとロウガはどこかで納得がいかなかったようで、姉弟揃って思い足取りで城に向かった。
「貴様ら、そこで止まれ。リネス城に何用だ。」
城の立派な城門で、遊楽達は足止めを食らった。だが、その足止めは一瞬で終わった。奥から全身鎧武装の現れ、「通せ」と一言城門の兵士に言った。城門の兵士の装備は軽装備で、王族にしては金がかかっていないようだ。
通せと言った鎧兵士は奥へと戻って行き、それに遊楽一行はついて行った。
城の扉は豪華なことに大きく、身長の何倍もあった。内装もとても豪華なもので、ビジョンのあの城など、足元にも及ばなかった。しかし、遊楽の城のイメージである絵画などは一切飾られていなかった。ただ、無駄に長い廊下が続いていただけだった。
王室の扉の前に付くと、案内した鎧兵士が扉を叩き「失礼します」と言い、中に入って行った。中には整列された兵士が大勢居た。そして、何れも先頭に色の付いた一際階級の高い兵士が立っていた。そこには遊楽が蹴飛ばした赤鎧もいた。色は、赤、青、黄、緑の4色。基本となる4属性の色だ。闇と光である黒と白はない。一般兵の鎧の色は灰色と言った所だ。
そして奥には階段があり、昇った所には玉座に座った王女が座っていた。王女は幼く、赤髪赤目が特徴的だ。ストレートヘアで、髪の長さは腰辺りまである。ドレス姿に髪の長さからみると幼さが目立つが、その雰囲気を払拭する王らしい雰囲気が漂っていた。
その隣には女性秘書が立っていた。
話を切り出したのはその女性秘書だ。
「今回呼び出された理由は分かっていますね。被疑者、容疑者共に説明を。」
すると、先頭に立っていた赤鎧が前に出ていき、王女の視界に入るよう立った。それに続いて遊楽も移動し、横に並んだ。
「騎士軍火の部隊、騎士長ダレン・フィオ・ルーカスです。私はこの者に中立域であるこの場で攻撃を受けました。それだけなら、まだ国沙汰にはなりませんでしたが、軍の兵士であり騎士長の私に攻撃を企てたという事です。」
「それについて、間違いはありますか?」
「あながち間違っていませんが、それについての理由はあります。自分の仲間に対してこの方に不当な発言を受けました。確かに私自身かっとなってしまった点はあります。ですが、それも含めて私は罪に問われるとは思ってません。」
「…という事ですが、姫様どうしますか?」
秘書は堂々としすぎた遊楽の発言に少しばかり驚いていたようだが、遊楽は気にしかなった。様子を見ていなかったわけではなく、自分が決して間違ったことはやっていないと思っているからだ。
この国のみならず、この世界では国のトップが審判を下す権利がある。普通なら街で裁判を行い、審判を下すところを、王族は段階を飛ばして一気に判決できるらしい。つまりは、性格次第でどうにでも変わるということだ。
王女は、口を開き判決を下した。
「スメト・ファルオラ・ルシルスの名の元に、判決を下します。」
その瞬間、息を飲む音が遊楽の後ろから聞こえてきた。どうやら遊楽以上にアリエス達は緊張しているようだ。しかし、ロウガだけは一応心は逃走の構えだ。
「今回の事は不問とします。そこの冒険者には悪いことをしましたね。後で私の部屋に通してください。」
その瞬間、兵士はざわつき、遊楽は安堵の溜息をこぼした。
「なっ、姫様!このような冒険者を通すなど―」
「異論は認めません。それとも、異論を申し出てまで騎士長の座を退きたいですか。」
「い、いえ。失礼しました…。」
「それではこれにて解散します。ミル、私の部屋に冒険者様達を案内して。」
「かしこまりました。どうぞこちらに。」
ミルと呼ばれた秘書が遊楽達を王室の外に出し、王女の部屋へと案内した。その時から、遊楽はずっとダレンの視線を感じていた。相変わらず鎧で表情は読めないが、怒りと悔しさが入り混じった視線は嫌でも読み取れた。
王女の部屋は3階にあるようで、階段を2つ昇った。2階は修錬場になっており、パッと見ただけでも木刀や木製の盾が多数置かれていた。中庭でも修練自体は行われるが、魔法を兼ねての修練らしい。2階を使うのは、武器使用だけの時。もしくは雨天時だそうだ。それを聞いたのは優華だ。質問に対してミルはすんなりと答えてくれた。その言葉にはダレンのような怒りなどは含まれていなかったが、疲労しているような雰囲気は感じ取れた。
王女の部屋の扉は飛びぬけて巨大なわけではなく、一般的な大きさだった。扉を開けた先には、いかにも女の子と言った部屋が広がっていた。色は落ち着いた白や青。ベッドの上には多数のぬいぐるみ。窓辺には花。先ほどの発言と雰囲気からは全く予想もつかない内装だった。
「しばらくしたら姫様が到着します。ご自由に座ってお待ちください。」
そう行ってミルは扉を閉め、再度下へと降りて行った。
部屋の様子を見ていた遊楽達は、立って待っているのも退屈なため、近くにあったソファーに座った。その座り心地は柔らかく、これまた一級品というのが分かった。そしてそのまま遊楽は冷を膝に呼び、座ったところで頭を撫でた。相変わらず冷は満足気な顔をしていた。
全員落ち着かない様子でそわそわしていると、扉がノックされ「失礼します」とミルの声が聞こえた。その瞬間、座っていた全員が立った。冷は頭の上でなく、ソファーの上で立っている。扉が開かれると、そこにはミルと王女ルシルスの姿があった。
「どうぞ、皆さんお座りください。」
「し、失礼します。」
王女がそう勧めると、遊楽は精一杯声が裏返らないよう返事をした。緊張感が解けてからの王女の再開は流石に再度緊張せざるを得なかったらしい。
反対側にルシルスとミルが座ると、話をルシルス自ら進めた。
「今回の件は本当に申し訳ありませんでした。仲間の冒涜は自分への冒涜。私でもそう教わりました。それにも関らず本当に申し訳ありません!」
ルシルスが頭を勢いよく下げると、ミルも一緒に下げた。カシオ・フォルズの近くに居た兵士とは違い、ミルからも謝罪の気持ちがひしひしと伝わってきた。
「頭を上げてください!本来なら僕は処刑されててもおかしくないところを、王女様に助けられても同然です。そんな方に頭を下げられてばかりでは、こちらも困ります!」
「ですが…」
「姫様、冒険者様もこうおっしゃっています。下げたままというのも失礼に値します。」
「ミルがそう言うなら…。」
そうして、ようやくルシルスとミルは頭を上げた。そして、しっかりと対面した。
膝上の冷は、常に怯えていた。自分の仲間がやられているので当然だ。
その様子の冷に気づいたルシルスは、優しさの目を向けた。
「スノーウルフさんもご迷惑をかけました。言い訳をするつもりではありませんが、実際に軍の方向性を決めたのは、兄上と父上です。現在その2人は他国の防衛に協力するため遠征中です。どうにか止められないか、私なりに努力したのですが、結局採決の場には立ち入らせてもらえませんでした。その…、差し出がましいお願いだとは思いますが、よろしければスノーウルフさんの頭を撫でさせてもらえませんか?」
ルシルスは冷を一目見た時から少し興奮していたようで、あまり落ち着いた感じではなかった。遊楽達はなぜそわそわしているか分かっていなかったが、これでその謎も解けた。
「だってさ、冷。」
「も、もちろん強要はしません!」
すると、ずっと怯えていた冷が話を察したようで、体の震えが止まった。そして遊楽の膝から立ち、ルシルスの膝まで移動し、頭を向けた。
ゆっくりと手を伸ばし、ルシルスは冷の頭を撫でた。
「~っ!」
ルシルスは冷の触り心地とかわいさに負け、撫でるどころか勢いでギュッと抱きしめた。
「ひんやりとしてて、もふもふで…。…あっ!すいません!ついつい…。」
ルシルスは赤面になっていた。よっぽど恥ずかしかったのだろう。だが、年相応の反応ということで、特に誰も触れはしなかった。その様子をミルは優しく見守っていた。
「コホン…。それでは話を戻します。そのですね、今回の事は不問にすると言う話でまとまりましたけど、兵士の皆さんの反論が強く、無対価で解放に反対する人が多数だったんです。そこで丁度良い話があるのですが、聞いてもらえますか?これは冒険者様方に関係のある話です。」
「どんとこいよ!」
「優華さん!ここでその調子は駄目ですよ!」
「いえ、気にしないでください。それでは本題に入りますね。今度、私も他国との交流の為に遠征があります。ですが、あくまでお忍びなんです。なので護衛は極力少数で行くと決まりました。その時の護衛を任せたいのですが、よろしいですか?」
「別にいいんですけど…。」
「何か問題がありますか?」
遊楽の頭には幾つか懸念するべき問題があった。まず1つ、王都周辺のモンスターに対して自分等の力で太刀打ち出来るか。もう1つは、果たしてこの内容を反発した兵士たちが吞むのかということだ。恐らく反発している理由は、攻撃を企てた対象にある。軍の兵士に攻撃をしたとなれば、王族に攻撃をしないという確証はどこにもない。また、遊楽と優華に関しては身形もあまり見ない物だ。そうなるとより不信感も増す。そこが心配だった。
「いい忘れてましたが、一応これで話は通ってます。あとは皆様が了承していただければこちらで手続きは進めとくのですが、どうしますか?」
話を進めたのはミルだ。手元には詳細が書かれた紙があり、そこに目を通していた。
「それなら、ありがたく受けさせてもらいます。みんなもいいよね?」
「「「異議なーし」」」
「私もありません。」
言葉が被さったのはアリエス、ロウガ、優華の3人だ。唯一言葉が丁寧なのはもちろん残りのルーイだ。
「それでは、詳細は明日連絡させていただきます。皆様こちらの街で滞在しますよね?それでしたら、客室がこの城にも設備されています。そちらに泊まられてはいかがですか?それでしたら、こちらの交通証をお渡しします。」
そう言うとミルはポケットから人数分の城内入室許可証を取り出し、机に置いた。
兵士達の宿はまた別にあるため、気まずい雰囲気になることはないとミルは念を押した。
「そういうことならお言葉に甘えさせてもらいます。」
「それでは案内いたします。それと、私の事は気軽にミルとお呼びください。」
「こちらも、自己紹介しておきます。僕は遊楽とでも呼んでください。」
「私はアリエスで。」
「それじゃあ俺はロウガで。」
「んじゃ私は優華で。」
「私はルーイ・メルンです。お好きなように呼んでください。」
こうしてとても簡易な自己紹介を行い、各自が交通証を受け取り部屋に移動しようとした。その時、ルシルシが遊楽を呼び止めた。
「あの!遊楽さんだけ残ってもらう事は出来ますか?部屋なら私が後で案内します。駄目、ですか?」
その顔には幼いおどけなさが滲み出ていた。遊楽は自分ではロリコンではないと自覚しているが、これは誰でも断れはしない案件だったため、優華も茶化すことはしなかった。
「構いませんよ。アリエス達は先に行ってて。」
「それでは先に案内させていただきます。姫様、失礼します。」
「粗相のないようにね。それでは皆さんまた明日。」
ルシルスは遊楽を除く4人に向けてそう言った。ミルを先頭に4人は部屋を後にした。
扉が閉まると、部屋には静けさが拡がった。その雰囲気には、遊楽も息を飲んだ。
そんな様子の遊楽を見かねて、ルシルスはお題を持ち出した。
「その、遊楽様にお願いがあるのですが…。私を、城の外に連れて行ってくださいませんか!」
「察するに、お忍びですね。別に僕としてはいいのですが、それって法に触れませんか?」
その瞬間、ルシルスの体がビクッと揺れた。そして遊楽がじっと見ると、目が泳いでいた。
「そ、ソンナコトアリマセンヨ。」
ルシルスは動揺を隠し切れていなかった。これは、誰でも嘘をついていると分かってしまう。気付かない方が難しい。
「…それで、本当の所はどうなんですか?」
「えっと、その…」
「ポート。教えて」
[いないことに気づかれれば、即誘拐扱い。それも国に関する重要人物とあれば、刑は免れないかと]
この時、あえて遊楽は外部にも聞こえるように、ポートには可能な限りの大きさで話してもらった。その為、ルシルスにもしっかりと聞こえていた。そして、戸惑いを隠しきれていなかった。
「姫様、とりあえず外に行きたい理由は聞きます。それによっては、ある程度考えてみます。」
すると、ルシルシはぱぁっと顔を明るくした。
「行くと決まったわけじゃないんですから、そんなに期待されても…。まぁとりあえずどうぞ。」
「理由はですね、本物の冒険者様の戦いが見てみたいんです。あわよくば私も参加してみたいです!兄上も父上も、城の兵士達も私には争い事は向いていないと言って、鍛錬の様子すら見せてもらえないんです。それに、城下町がどうなっているのかにも興味があります。」
「大体予想通りだったけど、まさかここまで的を射ているとは…。連れて行ってあげたいのは山々なんだけどなぁ…。万が一にでもまた暴走的なあれが発動して、姫様を傷付けでもしたら…。考えるだけでも恐ろしいっ!」
遊楽がぶつぶつと独り言を呟いている姿を、ルシルスは不思議そうに覗いていた。今の状況は確かに不審がられてもおかしくはない。
「うーん…」
と遊楽が呻きながら悩んでいると、部屋の扉が勢いよく開かれた。その事態に遊楽は反射的に銃を引き抜き、安全装置を外し即打てるように構えた。相手からすれば、何の武器かは分からないが、威嚇射撃でもすれば威力は直ぐ分かるだろう。
しかし、扉を開けたのは予想していたような敵襲ではなく、優華だった。
「面白そうな話してるじゃぁないの!って、なんで銃構えてんの?」
「なんだ、優華か…。奇襲かと思ったじゃんか。」
「なんだとはなによ。城内うろうろしてて、ここの前通ったら面白そうな話してるから来たんじゃない。姫様が外に出たいんだって?連れてってあげればいいじゃない。」
「でも、今の出来事に驚いて当の本人は固まっちゃってるよ。」
よほど驚いたのか、ルシルスは遊楽と話していた態勢のまま固まっていた。当初悲鳴の1つも上げないのはさすが国の主要人物、と遊楽は思っていたが、上げなかったのではなく、上げられなかったらしい。しかし、この事態だけで固まるとなると、より外に連れ出すことについての懸念が増える。
(ここで驚いて固まるとなると、草陰からモンスターが飛び出たりしたとき大丈夫かな?不安だ…。でもなぁ、ここで好印象にしておけば後で役に立つだろうし…。まぁ優華も居るし大丈夫か。)
覚悟を決めた遊楽は固まったままのルシルスに声を掛けた。
「姫様。起きてください。姫様ー?」
何度か声を掛けても復活しないルシルシを見兼ねて、優華は優しくルシルスの肩を揺らした。効果は覿面。見事にルシルスは目を覚ました。
「はっ!驚いてません、驚いてませんから!だから連れ出せないとかは言わないでください!」
「言いませんから安心してください。もう腹は括りました。ただ、条件があります。」
「私に可能なことならなんでも!」
「なんでもはそう簡単に言わない方がいいですよ。まぁ条件と言っても難しい事じゃありません。1つ、もしも連れ出したことがばれた時は、僕と優華が罪に問われないよう最大限頑張ってください。」
「もちろんです。最大限努力させていただきます。」
「もう1つ。絶対に1人で歩かない事。戦闘中に怪我をされては色んな意味で困ります。アリエスなら治療が出来ますけど、お忍びなら人数は少ないに越したことはないので今回は連れて行きません。それに、街中で迷子になられたら、それこそ大変です。姫様の顔は知られてるんですから、身代金とか言い出されます。姫様の身も無事では済まないかもしれなません。なので、絶対に1人でふらふらと何処かへ行かないと約束してください。」
「はい!心得ておきます!遊楽さん、優華さん、よろしくお願いします!」
「ほいほーい。よろしくねー」
「優華はもっと緊張感を持ってくれ…」
こうして遊楽の2度目の冤罪を掛けたルシルス脱出作戦が開始した。
今のルシルスは如何にもお嬢様と言ったドレスの様なヒラヒラとした衣装だ。さすがにこのままで行くわけにもいかず、一時着替える為に遊楽は部屋の外に出た優華は冒険に合った服を選ぶと主張を貫いた結果、ルシルスと一緒に選ぶことになった。遊楽は一言
「外で待ってる」
とだけ言い扉を開けた。開けた先にはミルが横ですっと立っていた。その様子からは中の会話が筒抜けだったようだ。ミルの表情は不安半分、嬉しさ半分と言ったところだった。
「姫様の無理な願いに応えて頂きありがとうございます。万が一にばれてしまったら、私も出来る限り手をまわしますので。」
「それはありがたいですけど、見つからないのが一番なんですよねぇ…。まあ、決まったことですし、ばれないようにもしますし、姫様も後悔させませんよ。」
「ありがとうございます。国と言う大きな立場で支援することは出来ませんが、私個人での助力はさせて頂きます。必要なことがあればお申し付けください。」
「今は特にはないですし、大丈夫です。いずれ頼みますよ。」
ミルはルシルスが外に出たいということは知っていたらしい。しかし、立場上連れ出す訳にもいかず、いままで我慢していたらしい。ミルに刑罰の覚悟があったとしても、ルシルスがかなりミルのことを気に入っており、「ミルが居なくなるなら我慢する」と堪えていたらしい。その窮屈さからようやく解放されるということで、ミルも自分のことのように喜んでいたそうだ。
「そういえば、姫様の冒険者っぽい服ってあるんですか?そういうのにも厳しかったんじゃ…」
「それは私が調達しました。服ぐらいでしたらしまっておけますし。一応三種類準備ましたが、恐らく姫様は魔法使い(ウィザード)の衣装で出るのではないでしょうか。」
「その理由は?」
「確かに姫様には戦闘は向いていないかもしれません。しかしそれは近接戦闘に限ってです。姫様はかなりの腕が立つ立派な方です。小さい頃、姫様が転ばれて泣いてしまったことがありました。その時、感情による魔法の発動があったのです。その時、偶然私が逆属性である水を使えることができたので姫様の火の魔力を打ち消すことが出来ましたが、魔法の自動発動はかなりの魔力を持っているという証拠なので、強い反面、不安定でもありました。ですが、感情をしっかり扱える今であれば、その心配もないでしょう。」
「1つ質問いいですか?感情による魔法の自動発動はすごい事っていう認識でいいんですか?いや、決して姫様をバカにしているわけではなくてですね!僕…じゃなくて私自信がこの世界の常識に疎いもので…。」
「構いませんよ。そもそも魔法の自動発動と言うのは―」
説明を簡単にまとめると、まず魔法が自動的に発動することは、予めセットしていない限りは基本ない。しかし、稀に膨大な魔力量の持ち主は、様々な条件はあるが無意識のうちに発動することがあるそうだ。基本、自分の魔力は意識せずともコントロールすることが出来る。しかし、魔力の量が多ければ多いほど、本人の考えているよりも脳は制御の為に頭を働かせている。しかし、怒り、嫉妬、悲しみなどの強い負の感情が優先度が高いらしく、その間は制御が緩くなってしまっているらしい。例を挙げるならば、浴槽の栓が緩くなってしまっている状態だ。そのため、感情のままに生活する幼少期はかなり危険らしい。さすがに今のルシルスは感情のままに行動するような小さい子供ではない為、ある程度の不安は拭られたようだ。
遊楽はミルから少しばかりの魔法の知識を教えてもらっていると、部屋の扉が内側から開かれ中から古典的な三角帽と身長よりも少し小さい杖を持ったルシルスと素面の優華が出てきた。その姿にミルは感動しているようで、言葉が出てきていない。
その様子から察したのか、ルシルスはミルの元に駆け寄り感想を尋ねた。
「どう?こんな私でも冒険者になれそう?」
「良くお似合いです。頼れる雰囲気が滲み出てますね。」
「もう、そんなに褒めても何も出てこないわよ。」
ルシルスは子供の様にはしゃぎ、ミルは保護者のように優しく接した。ここだけ切り取ったのであれば、本当の親子の様だ。しかしもちろん母親は別にいる。現在はルシルスの父と意見が衝突し、ルシルス同様納得のいかなかった王女は城を出て行ってしまったらしい。絶縁と言うわけでもない為、表向きは特に何も変わってはいない。ルシルス自体もこっそり連絡は取っているようだ。
「それじゃあミル、行ってくるわね。」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて。遊楽様、優華様、姫様をどうぞよろしくお願いします。」
「承知しました」
「かしこまりー」
こうして、ルシルスのお忍び冒険者が幕を開けた。
ユリナ「今回は私とカレンが次回予告をします。カレン、おいで。」
カレン「どうも、です…」
ユリナ「そんなに緊張することないよ。いつも通りやろう、ね?」
カレン「う、うん…!次回、は、ルシルス、姫様の、冒険話です…!」
ユリナ「何やら大活躍だったり大失敗を起こしたり、大変だったそうだよ。」
カレン「あとは、遊楽さん、と、優華さんの、新、装備、のお披露目…!」
ユリナ「今回は力作だったなぁー。あの良く分からない武器もうまく行ったし、良かったよかった。それじゃあ最後はいつも通りに!せーのっ」
ユリナ&カレン「次回もお楽しみに!
次回、も、お楽、しみに…!」
カレン「お姉ちゃん、早いよ…」
ユリナ「あぁー、ごめんごめん…」




