プロローグ
朝起きたら天井の色が変わっていた。
掛け布団の模様や家具、部屋の形など何から何まで変わっていた。旅行とかに来ていた記憶は残念ながらないし床もフローリングの床から絨毯へと変わっている。実家なら誰かの部屋で間違えて寝てしまったのかと思えるけれど、それもまたまた残念なことに私はアパートに一人暮らし。
のそのそと立ち上がり歩くと、ふと一人の少年が目に入った。薄い茶色の目と髪に…というよりも全体的に色素の薄い美少年。ペコリとお辞儀をすると彼も全く同じタイミングでお辞儀をしたようだった。
____ これはまさか運命なのでは!?
突然変わった部屋の内装のことなんか、もう頭からすっ飛んでいた。
「あの…」
今、私は「あの…」と言った。美少年くんも「あの…」と言ったような素振りをした。
なのに声はひとつ、喉を震わしたのは私だ。そして自分の声がいつもとは違うように聞こえた。…私は恐る恐る美少年へと手を伸ばす。
ピタリ。
このひんやりとした感じは人間ではない。……そうだな、言い表すとすれば正しく『鏡』
そうか、これは鏡なんだ…つまりは姿見。そうなれば必然的にこの鏡に映っているのは、私。
「ははっ…………嘘だろ」
絶望を顔に浮かべる美少年、重ならないひとつの声。一切温かみを感じることのできない一枚の大きな姿見…これらによって有り得ないことが証明されてしまった。
___ 私、間宮日和は男になったようだ。