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異世界転生の儀式中に死んだ俺  作者: 三文小唄
異世界にとばされて
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未知なる道

霊媒師ギルドから抜け出すことに成功したトオルとルーナ。

二人は墓地を抜けた先に向かおうとするが、視界にとらえたのは巨大な森林であった。

 集団墓地を抜けた先には、端から端まで水平線まで続く森があった。

 未開の森グランデル。

 名こそついてはいるものの、謎のほうが多い巨大な森林地帯だ。

 俺たちは、背後を気にしつつ進んでいった。

「これ、ちゃんと抜け出せるんだよな」

「ど、どうでしょう。ここまでくれば追手はまず来ないと思ったので逃げてきたんですけど」

「ええ、無策で入ったの!?」

「ひぃっ、ごめんなさい」

 確かに誰も入らないような森なら、身を隠すのにもってこいだ。

 しかし、それはここが危険な場所ということであって、捕まりはせずともここから抜け出せずに餓死してしまったら元も子もない。まあ、今のおれはお腹も空かない体ではあるが。

「で、でも、こっちに何か道があるような気がしたんです」

「道?」

「はい……なにか呼ばれたような……」

 パキパキと地面の枯れ枝を踏み割りながら進んでいく。

 昨日一昨日で雨が降っていたのか土は湿っていて、歩き回るには不都合であった。

「ここで引き返して、別のルートで行くのが得策だと俺は思うぜ」

「う~ん……、あ、ほらまたっ。誰か呼んでる」

 なにを聞き取ったのか、ルーナは歩を早める。

 抱かれている俺は、ぐわんぐわん視界が揺れるので気持ちが悪かった。

「お、おい。俺を持ってるときは首が座ってない赤ちゃんだと思って接してくれ。全身が柔らかい布だから、激しい動きをされると首がっ」

「……」

 いつのまにやら走っていたルーナは、荒い息をしながら目の前を目指す。

 俺の声は届いていない。

 ようやく止まった息を整えながらそれを見つめていた。

 もうすでに辺りは暗い。

 月がいくらか斜め45度くらいの位置に見えている。

 月明りだけでは乏しく、本来ならもう闇一色に染まるはずであろうその広場は

 虹色にかがやくなにかが煌々と照らしていた。


「霊道……」


 彼女はぽつりとその名を口にした。

 霊道――それは霊が通る道。

 前の世界で、インチキ霊媒師どもがテレビの中でさんざん口にしていたものだ。

 ここには霊道がある。だからお札を張らなければいけない。そんなスピリチュアルなものであった気がする。

 しかし、俺の目の前で輝くそれは、決して誰かの商法で生み出されたような偽物ではなく

 本当に実在する霊道であった。

「おい、これ……」

「入りましょう」

「入るの!?」

「霊道は霊が世界を渡るのに使う道。ここを通ればどこか別の場所に逃げられる」

「でもさ、これって霊が使うモノだろ? 俺たちが入れるものなのか?」

「何を言っているんですか」

 ルーナは自信たっぷりに胸を張る。

 うん、年齢相応のふくらみだ。

「ちょ、どこ見てるんですか! ……まあいいです。霊道は本来霊だけが通る道。でもここには霊媒師がいるんですよ」

 霊のエキスパート。

 それは決して伊達ではなかったということらしい。

「霊がいるところに霊媒師あり!」

 なにかの決め台詞のように言い放つルーナ。

「それじゃ、いっちょやってみますね! 霊体化(トランス)!」

 ふわっと、全身に薄い光の膜が張られる。

 ルーナを見ると、同じく膜が張られていてどこか向こうの景色が透けて見えた。

「これで通れると思いますよ」

「お、そうか。んじゃ行くとするか。なにがあるかわかりゃしないけど」

「ここにずっといるよりはいいですよ」

 こうして俺たちはそのプリズムのように様々な色が漏れ出す空間に入っていった。






 轟轟と風が後ろに飛んでいく。

 気づくと俺はルーナと一緒に、大空にいた。


「なんじゃこりゃあああああああああああ」

「きゃああああああああああああああああ」


 空にはこれ以上ないくらい月が大きく見え、しかしそれはものすごい勢いで離れていった。

 自由落下と言えばいいのか、等加速度直線運動と言えばいいのか。

 何にしても落ちていくスピードは速まる。

「おい! ルーナ! なんとかできないのかっ。霊媒師なんだろお!」

「そんなこと言われてもぉぉぉぉ」

 顔が真っ青になったルーナは、ハッと顔を戻し何かを唱え始める。

召喚(サモンズ)浮遊霊(ゴーストフライ)!!」

 ルーナの持つ杖から怪しい魔法陣が浮き上がり、紺色の莫大な煙が爆発するように発生した。

「これに捕まってください!」

 ふわふわと形を変えるそれは、次第に巨大な風船の形状をとりはじめ、にょっと伸びた二本の触手に俺は捕まった。

 さながらパラシュート降下のようであった。

 雲を何層も突き抜け、視界が晴れたその時

 眼下には夜だというのにさまざまな灯りがあった。


「きれい……」


 すでに安心したのか、ルーナはそうぼやく。

 しかし、俺はこの景色に見覚えがあった。

 直接は見たことがないのだが、こういう風景を撮っている番組などで似たようなものを目撃している。

――そう、ここは。


「ここは、日本だ……」


 人口の灯りが空の星々と対比して、煌びやかに輝いていた。

再び日本に戻ってきたトオル。しかし身体はぬいぐるみのまま……。このまま元に戻らないのだろうか。ルーナはそんな悠長に景色を眺めていていいのか。

次回も乞うご期待!

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