呪いの首輪
「は、放して!!」
「いや、ダメだ! 絶対逃がすなよ!」
一体のピグミーゾンビが少女を捕まえ、俺を抱いたピグミーゾンビが、俺を少女の前に置く。
「おい、お前は何者だ」
「な、なんのことよ!」
「しらばっくれるな。ぬいぐるみがしゃべっているのに不思議に思わない。それに魔力が漂ってる。普通の人間じゃないだろ」
「……」
少女は言い逃れできないのを感じ取ると、急に態度を変えた。
「そうだ! 私は崇高なる組織、グリモワールの一員だ! ひれ伏すがいい――って痛い痛い!」
態度が気に食わなかったのかピグミーゾンビはさらに絞める。俺は特にそれを止めることはしなかった。
「で、お前はなんでここにいるんだ。組織の目的と現在の場所を教えろ」
「なんで、あんたになんかに言わなきゃいけないのよ! 仲間を裏切るなんてできるわけないじゃない!」
「そうか、じゃあピグミーゾンビよ。もうちょっとキツく絞ってくれ」
「や、あ、ちょっと! やめて! は、話す! 話すから!」
拷問紛いの行為など初めてだったが、案外こいつがチョロくて楽だな。
「い、今はみんなの場所はわからないわ。目的も私は知らない」
「役に立たねえじゃねえか」
「し、仕方ないじゃない! 召喚したスカルリザードが勝手に逃げ出して、組織から追い出されちゃったんだもん!」
「お前かよ……」
とんだ役立たずだった。全くなにも貢献できていない。でもまあ組織がグリモワールという名前だけはわかった。真偽を確かめるため、一旦こいつを家まで運ぼう。
「ちょ、私をどうする気!?」
「お前をとりあえず俺達のいる場所に連れてく」
「ふっ、そんなことはさせないわ。今から叫んでおまわりさんを呼んでやるんだから!」
「ちょ、お前何を言って!」
「トオルさん」
少女が叫ぼうとする瞬間割って入ってくるピグミーゾンビ。手には首輪を持っていた。
「これをコイツにつけてくだせえ」
「え、なに突然」
「いいからいいから」
言われた通り、首輪を彼女の首に巻く。
「トオルさん、そいつを付けたら、もうコイツはトオルさんのいうことを聞くしかねえ。呪いのアイテムだ。マリーダ様から預かってたんでせえ」
「ふっ、そんなことしたって、助けを呼ぶのはやめないからね!」
叫ぼうと息を深く吸い込む少女。今まさに大声を出さんとする瞬間に。
「黙れ」
「ぷはっ!」
声にならない声をあげて少女は息を吐きだした。突然のことでせき込む。そして自分の声が出せないことに疑問を浮かべる。
「おお、ほんとだ。いうこと聞くね」
なるほど効果は一目瞭然だった。何をされたか状況を理解した少女はキッと俺をにらみつける。おお、怖い怖い。しかし今の俺なら全然余裕だった。
「よし、じゃあお前、一緒に家に行こうか」
表情とは裏腹にスクっと立ち上がった少女は黙ったまま俺たちについてきたのであった。
この娘、ちょろいです。はい。




