偵察
俺は今、モール近くまで来ていた。
半ば強引に偵察もとい捜索を指示された俺は二体のピグミーゾンビと共に昨日スカルリザードと対峙したこのモールに来る羽目になったのだ。
しかしモールはトラロープで封鎖されており警察の車が数台付近で止まっていた。
「はあ、やっぱり入れないか」
遠目に見て、窓が割れてるところがあったり、溶けて変形したエスカレーターも視界に入る。
明らかに惨状はテロでもあったかのようであった。警察が出動して事情聴取するのも無理はない。おそらく昨日の時点で機動隊がいろいろ済ませておいたのだろう。スカルリザードの骨はそこになかった。
「どうしようか。なあ、お前らはなにかわかるか?」
俺を抱いて移動するピグミーゾンビの一体に話しかける。
「さあ、わかりやせん。とりあえずここら一帯をあたりやすか」
モール内に侵入できないとなると、そうするほかない。問題はスカルリザードはいつ召喚されてどこからモールに来たのかが判ればいいのだけど、さすがに侵入経路は警察が抑えているだろう。その付近を重点的に当たってみることにした。
「ただこの世界は魔力が薄い。魔力の残り香で召喚した場所はわかるやもしれやせん」
「魔力が薄いのか。それでルーナは急激な魔力不足になったんだな」
朝まで俺に実際に魔法を見せていたのだ。当然魔力切れを起こす。それに回復するのが遅いともなるとあの状況になるのも無理はない。
歩いていると、モールの出口あたりにまた一台の警察車が止まっていた。どうやらここがスカルリザードの侵入経路っぽかった。
「トオルさん、ここ結構臭いますぜ。魔力量がちょっとだけ濃い」
ピグミーゾンビの一体が鼻をひくひくとさせながら言う。そうなると、やはりここで間違いないのだろう。俺たちはここにやつらの遺したものがないかを探す。
しかし、そんなものはどこにも落ちていなかった。召喚したのなら魔法陣が描かれているはずなのだが、それは魔力で描くことで跡を残さず発動できるために当てにならない。それに足跡を探すと言ってもここはアスファルトだ。跡が残るわけがない。
「万策尽きたのか」
すでに彼らは去っているだろう。跡がつかめない以上もはや為す術はなかった。
落胆はしている。しかしこれ以上変なことに首を突っ込まなくて済みそうだということに若干の安堵を覚えた。
やることはやった。これで帰ってもマリーダに何か言われることはないだろう。それはこのピグミーゾンビも味方になってくれるはずだ。
そうしてさっそく切り上げて帰ろうとする俺を、俺を抱いていないもう一体のピグミーゾンビが制止する。
「ん? なんだ? もうやることないから帰るぞ」
「待って下せえ。あの娘……」
ピグミーゾンビが指さす方向、そこに一人の少女がいた。その子はじっとこっちを見ながら汗をかいている。
「あの娘から魔力がぷんぷん匂いやす」
そういった瞬間、その少女はヒッと小さくうめいた。
うん……。明らかにあやしいよね。
「よし、ピグミーゾンビたちよ。追え」
「あいあいさー」
「いえーす」
小柄でずんぐり体型のわりにはすばしっこいこいつらは俺を抱えたまま少女に向かって突撃をした。
その様子をみて叫び声をあげた少女は一目散に逃げだすが、わりとあっさり捕まった。
最近腕が痛いです。なぜでしょう。腰もやばいです。
はい、どうでもいいですね。




