静かな夜
モールでの一件が終わり帰路につくトオルとルーナと唯。これからの方針を決めていくことになる。
家に着いた俺は、ルーナの死霊術でふたたびぬいぐるみの中に入った。
唯は、しばらくすると目が覚めたが、モールでの記憶がないという。
時間も時間だったのでそのまま唯は家に帰った。
「にしても、大変だったな。今度から骨なんか持つんじゃないぞ」
「はい、わかりました……」
自分のせいで大騒動になったのだと感じているルーナはシュンとしていた。
まあ、追ってくることを想定していなかった俺も悪い気はするがな。
「今回は何とかやり過ごせたけど、またあんなのが起こると対処できないな」
「そうですね、私は一応霊媒師ですけど、追ってくるのはみんな上級霊媒師ですから。私の力じゃ逃げ切ることはまず不可能ですね」
そうなると、非常に厄介だった。
おそらく、先の騒動でこちらの世界に逃げてきたことがギルドに知られている。またやつらがやってくるのも時間の問題だろう。
「なあ、上級霊媒師と普通の霊媒師って何が違うんだ」
ルーナは普通の霊媒師だ。そんなルーナよりも格上を相手にするのだから少しでも情報がほしい。ルーナがいなければ俺の身体探しはできないのだから。
「そもそも私たちとでは練度が違いますね。普通の霊媒師なら、霊と対談して、契約してもらって初めて霊を操ることができるんですけど、上級霊媒師ともなると、霊の意思関係なく操れるんですよ。しかも操る霊も霊力が高いので、憑依するときの執着も強くてなかなか倒せないんです」
「なるほどな。つまり普通の霊媒師は霊と仲良くして戦ってもらうが、上級となるとなんでも霊を使えるんだな」
「そういうことですね。あ、でも例外があります。生霊や悪霊などですと自我が強すぎるので操れないんです。トオルみたいに勝手に暴れちゃうこともありますね」
「俺、暴れてないだろ」
つまり悪霊や俺みたいな生霊だと操作不能なわけなのか。俺が敵に捕まるなんてことはなさそうだな。操作できないからこそ、生霊の召喚は危険なのだろう。
「俺がなんとか蹴散らすほどの力があればいいんだろうけどなあ」
「たぶん、トオルにはありますよ?」
ん? 今何て言った?
「生霊は精力が強いので、霊力とは違った強さがあるんです。精力がありますと魔力もありますでしょうし」
「じゃあ、俺もなんか魔法陣みたいなの出せるのか?」
「それはトオルの適正次第ですね」
ふむ。それじゃいっちょ試してみるか。
「むむむ。……出ない。」
「そんなんじゃ出ませんよ。魔法を使うには魔法陣が必要です。最初は魔法陣を手書きで書くのです。手慣れたら魔力でもって陣を空中に展開できるようになります。そして初めて一流の魔術師になれるんです」
「それじゃあ、その魔法陣を教えてくれ。俺が戦力になれば多少は役にたつだろう」
「はい。それじゃ基礎から教えますね」
こうして、ルーナの魔法基礎講義が朝まで続いたのだった。
いつになったらトオルは体を探すことができるんでしょうか。




