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サキヨミ  作者: ドヨ破竹
6/6

お花

早く目覚める。今日から俺は社会人だ。けしてニートではない。ネオニートだ。


身支度を整え朝食の場へ

家族に宣言せねばならない。


「おはよう、今日は早いのね」


母親だ、息子が一人で起きれたのが嬉しいようだ。

家族が囲むテーブルへ俺も座る。


「おはよう、お父さん、お母さん、今日から俺は学校へ行かないよ」


単刀直入に切り出す。叱られた場合は家も出よう。まさに不退転の決意だ。


「それで働くのか?」


父さんが聞いてくる。落ち着いた声と表情だ。

俺は競馬で稼いだ60万円を置く。



「このお金は?」

「稼いだんだ、自分の力でね」

「ほう」


父親は少し驚いているようだ。


「お父さん、俺は株で稼ぐよ。」

「株?」


奈津美が首をかしげてる。


「株なんてなかなか勝てないぞ」


父親が言う。諭すような声だ。

父親自身も株をやっているので、経験からの言葉だろう。


「家にはどんな事をしても月に5万円は入れるよ。見通しが甘く儲ける事が出来なかったらバイトしてでも入れる。だから証券口座を1つ使わせて下さい」

父親は何個か証券口座を持っている。その一つを使わせてもらおう。


「お父さんの口座をか?」

「はい、使っていない口座を」


父親は少し考える。


「お父さんと同じ証券会社なら、未成年の淳平も口座を作れるぞ」

それは知らなかった。


「じゃあ、俺も口座を作るよ」


父親は少し考えてまた言う。


「お父さんも淳平が働くのは構わない。学校を卒業したとしても本人にやる気が無ければ、何も意味がないと思うからだ。ただもう高校生活は送れないぞ。本当にそれで良いんだな?」


高校生活=楽しい。そう思って、心配してくれているのだろう。

俺は、高校生活を思い出す。バラ色の高校生活ならば惜しいが、特にそうではない。今までは普通であったが、今は苦痛だ。


「はい。もう、高校には戻りません」


俺は宣言した。そして朝の食事の時間が始まる。


「淳平」


母親が話しかけて来た


「何?」

「無理せず、こつこつ稼ぐのよ、あと株をやるのなら絶対に情報を仕入れなきゃダメよ。株には、ほぼ確実に値段が下がる時期や上がる時期があるわ。そんな基本的な事を知らずに、株の世界に飛び込むなんて、カモがネギ背負って歩いているようなものよ」

「カモネギ」


奈津美が笑っている。


「大丈夫だよお母さん。俺には才能があると思うんだ」

「まあ、淳平ったら」


母親はやれやれと言った表情だ。でも駄目とは言わない。この人は子供にはやらせてみようスタンスの人だからだ。


食べ終わり。パソコンのある部屋に行く。母親からは、お仕事頑張ってね、と言われる。ついでにマネして奈津美からも言われた。

さて、まずは、自分用の口座を申し込む。

そして、父親にお金を渡しているので、父親の口座のお金を使って、株取引開始だ。


『ほう、淳平よ』

「何だい」

『ふむ、これが、日本国公認賭博場か』

「賭博?」

『ああ、日本はギャンブルは基本禁止しているが、株式市場は、上がるか下がるかの2択に掛ける鉄火場だ。楽しむが良い』

「分かったよ。でも俺の行動によって未来は変わるんだよな?」

『ああそうだ』

「じゃあ、上がると【未来視】で見た銘柄が、俺が買った為に下がる、って事も起こるんだよな?」

『ほう、そこに気づいたか、淳平よ。賢いぞ。下がった株を買い、うなだれる淳平に、神の声を授けようとしていたのに、無駄になったな』

「悪魔の間違いだろ」

『ふふ、どちらでも我はかまわない。人智の及ばない存在であるという事に変わりは無いからだ!』

「はいはい、それはどうでもいいよ。話を戻すけど、俺が銘柄を買った後に、また【未来視】で見れば、結果は分かるよな?」

『そうなるな』


話はついた。俺は未来視で上がる銘柄を確認し、上がり切った所で、買った株を売っていく。

単純作業だ。まだ俺の金額が小さいせいか、全部の取引は俺が参戦しても結果は変わらなかった。

取引を確定する度に利益が増えていく。

それを繰り返す。単純作業だ。

刺身の上に、お花を乗せるようなものだ。




「1日で、30万稼いだな」

『ふむ、乱高下する銘柄に乗り込んで、見事に乗りこなしていたな。周りから見たら、荒波を乗りこなす天才児だったな』

「誰も見てないけどね」


午後三時に取引は終わる。

母親に報告しよう




「お母さん、30万円稼いだよ」

「まあ、淳平ほんと?」


俺は収支画面を見せる

「あら、本当だわ。淳平って天才かもね。でも気を付けるのよ。気を張って体調も崩さないようにね」

「大丈夫だよ、母さん」


本当にね、ただの単純作ですから。

お花を乗せる程の集中しかしていません。

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