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サキヨミ  作者: ドヨ破竹
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母親

お店を出る。外は一段と冷気が増していた。

俺は札幌の星空を見上げる。


「寒いなジョー」

『…うむ』


俺は札幌の街を歩く。特に行先は決めていない。


「何とか言えよジョー」

『ふむ』

「…」

『まあ淳平よ、気を落とすな。人間は失敗する事がある。失敗したのち、原因を分析し、問題の本質を明らかにして、解決策を実行するのだ。そうやって人間は進歩して来た』

「ああ」


結局お店では最後まで出来なかった。緊張したせいか、気分が乗らなかったのか。途中で出来なくなった。

お金も別にもったいない状態ではなかったので、そのまま退店したのだ。


それにしても寒い。もう札幌で泊まろう。


「どこに泊まればいいんだ?」

『ふむ、ビジネスホテルでもラブホテルでも泊まれるだろう。未成年は親の同意や、身分証を求められるホテルもあるが、無いものもある』

「はは、相変わらず何でも知ってるね」

『ふふ、我こそは世界創造の神、我が知らぬ事など、この世に存在せぬのだ!』

「そうだね」

『ふん、元気がまるで無いな』


お姉さんに触られ過ぎたので、疲れてもいた。出来なかった事もあり、チョット気力が足りない。

ビジネスホテルの前に来る。【未来視】でホテル受付を確認する。ここのホテルは特に身分確認は無いようだ。俺はフロントで一室借り、部屋に入る。


コンパクトなベットで寝ころんでいたら電話が鳴る。

母親からだ。電話に出る。かかってくる電話に出なくなったら世捨て人になるらしい。



「はいもしもし」

「ウチの不良息子君は、今どこにいるのかな?」


もう23時は超えていた。

この母親はいつも余裕がある。うらやましい。

北海道に居ると言うのも、めんどくさいので、ウソをつこう。



「ん、今日は友達の家に泊まるよ」

「そういう事はちゃんと連絡するように。心配するでしょ」



この母親は割ともっともな事を言う。

架空の友人加藤君。今日は君のウチに泊まるよ。



「はいはいごめんごめん」

「明日は帰ってくるのよ」

「はいー」

「うん、ではお休みなさい。しっかり向こうの御家族にも挨拶するのよ」



加藤君は年上で一人暮らしだ。御両親は一緒に住んでいない。そういう設定にしよう。



「はいはい、お休みなさい」



電話を切る。

報告もしたし寝よう。ススキノの夜は終わりだ。



そして、目覚める。ホテルの朝食はバイキング形式だ。普段と違う朝は、プチセレブな気分になる。

帰る為に、チェックアウトもし、空港に向かう。



『淳平よ』

「なんだジョー」

『この街を旅立つのに、大人になっていないな』

「うるせ!」


飛行機は離陸し、俺は北海道を離れる。さらば北海道、雄大な大地よ。カニも何も食べなかったな。



夕方に家につく。

リビングのソファーには妹の奈津美が寝ころんでテレビを見ていた。

頭だけテレビを向いて身体は仰向けだ。時間が経つと姿勢が変わっていく。


「ただいま」

「あ、お兄ちゃん、不良ー、連絡せず外泊なんて、お父さん怒ってるよー」

「連絡はしたよ」


正確には向こうから来たんだが。


「お父さんは?」

「まだ帰ってないよ」


そりゃそうだ。父親は仕事に行っている。

声を聞いて、キッチンから母親がやって来た。


「淳平、おかえりなさい」

「ただいま」

「学校は行ったの?」


そう言えば今日は学校の日だった


「行ってない」

「明日は行くの?」


ここで行かないと言うとめんどくさいかな。


「明日は行くよ」

「そう、わかったわ。あ、別にお母さんは、無理して学校に行かず、働いてくれても良いと思ってるわよ」

「うん、分かってる」


母親は俺を割と本気で、中卒で働かせようとしていた。チョット常識外れな人である。

他にも学校の成績は悪くてもいいから、女の子を家に連れて来なさい、とか無理難題を吹っかけてくる。

学校の成績より、女の子にモテる男になる方が大事だと考えて、俺に言ってくるのだ。

正直、学校の成績を上げる方が簡単そうだ。モチロン上がらないが。


自分の部屋にいたら父親も帰宅し、夜飯となる。

父親からは少し注意された程度だ。

俺に無関心なのでは無く、男の子なので、外泊はあまり気にしてないようだ。

奈津美との扱いには大分差がある。まあ、特に気にしていない。

奈津美が無断外泊したら、父親はとても怒るだろう。とても可愛がっているので。


学校についても明日行くと言えば、特に何も言われなかった。

怒って見せていたのは、奈津美に対して、無断外泊について父親の態度を示していただけかも知れない。


ご飯も食べ、お風呂にも入り、自分の部屋に戻る。



『なんだ淳平、結局学校にいくのか?』

「うーん、まあしょうがない。特にやることも無いし」

『前島彩と石川隼人にバカにされているかも知れないぞ』


二人の名前を聞いた瞬間、気分が揺れる。

前島さんはそんな人ではない。


「嫌な事を言う奴だな」

『ああそうだな。それでは前島彩はバカにしてないかも知れない』

「きっとそうだ」

『だが石川隼人にお前の事は言うだろう。恋仲の二人ならば自分に起きた話題として、淳平に告白されたと教えるはずだ』

「く、そうだな。そうなるはずだ」


なんて胸の痛い事を言うんだ。この自称神は。悪魔じゃないのか。いや、悪魔に間違いない。


『自分の彼女に告白する淳平など、石川隼人から見れば、バカにする要素しかないぞ。間違いなく周囲の友人に言うだろうな』

「ああそうだな!」

『前島彩はバカにしないかも知れないが、石川隼人周辺から学校の皆に淳平が振られた事が伝わるだろう。そんな所に明日から行くのかい?』


ああ、なんでこんなに苦しまなくてはいけないのか。告白して振られただけじゃないか。モテない俺が悪いのか。

とても行く気がしなくなって来た。そして無性に腹も立ってきた。



「俺は家にいる!」

『ははは、ニートは嫌いじゃなかったのかい?』

「稼げばいいんだろ!?」

『そうだとも、家にいても、稼げばそれはニートではない』

「俺は金を稼ぐ!」


ニートになんてなるものか。かっこう悪い!寝れないながらも俺は目をキツク瞑るのだった。

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