埼玉の観光地は やたらと偏っている
埼玉は観光地と呼べるものが少ない。観光地は、県の魅力に直接 繋がるので、この話題を探れば、魅力が無いと呼ばれる所以に辿り着けるかもしれない。
観光地ねえ……。確かに少ないかも……。ってか、何かあったっけ?
……とは言え、素直に認めるのも癪なので、試しに列挙してみることにする。
゜~埼玉の観光地~゜
※筆者の定義に基づくものであり、正確な判断基準がある訳では無い。
※( )は所在地、《 》は観光的要素を表す
・埼玉古墳群 (行田市)《古墳が多く点在》
・鉄道博物館 (さいたま市)《鉄道車両等の展示・鉄道関係のイベント開催》
・荒川・ライン下り (長瀞町)《荒川渓谷の急流を小舟で下る》
・吉見百穴 (吉見町)《岩盤にたくさんの穴が点在》
・川越・蔵づくりの街並み (川越市)《歴史的建造物が市内に点在》
・鷲宮神社 (久喜市)《「らき☆すた」の舞台の一つ》
……とまあ、思いつくのは こんな物である。結構マイナーな場所も多いので、話について行けない人もいるだろう。
ところで私は、「ん?」と眉をひそめていた。
私は今、列挙した観光地を“マイナー”と言ったが、本当にそうだろうか? 私は半ば直感的に、“マイナー”とは言い切れないような気がしてきた。
偏っている……?
例えば、埼玉古墳群。冒頭でも問題視したように、あんまり胸を張って自慢したくなるような観光地ではない(行田の皆様、ごめんなさい!)。大昔の豪族の墓でしょう? 考古学者か歴史好きくらいしか、喜ぶとは思えない。まあ、この古墳群は、日本で一番大きな円墳(円形の古墳)であり、最近では、世界遺産登録を目指しているらしいが、どうしたものか。
吉見百穴も同様。コロボックルという小人が住んでいたとか、古墳時代の遺跡とか、結構 興味を引かれるが、実際には穴がボコボコと空いているだけの場所で、なんだか味気ない(吉見の皆様、ごめんなさい!)。実は、百穴には天然記念物であるヒカリゴケが自生している場所でもあり、また、史跡に指定されている由緒正しい(?)場所である。
両者とも歴史的観点から見ると結構 重要スポットだが、各地から観光バスが集結する訳でもないし、埼玉県民ですら行ったことが無い人も多いのではないだろうか?
続いて、鉄道博物館。
東京・神田の交通博物館が老朽化に伴って閉館、それが大宮に移転してきたもので、割と新しい観光スポット。タナボタ的だが、県では最も有名な観光地とも言えようか。
でもね、県で一番有名な観光地が“てっぱく”って、どうよ? 鉄道ファンならばともかく、多くの人にとっては、いまいちパッとしない。
鉄道の街・大宮は、全国から鉄道ファンが集結する「鉄道の聖地(?)」であるが、鉄道ファンが集まってきても自慢になるか? ちょっと厳しい気がする。
まして鉄道ファンを毛嫌いする人々も多い。ネット上では、鉄道ファンが叩かれることも しばしば……。
実際には割と来場者も多い人気スポットだが、子供にせがまれて行く家族連れと鉄道ファンが大多数のはずである。序盤から勝手に対抗している、浦安のあそことは、全く比べ物にならない。
最後に、鷲宮神社。
知らない人も多いだろうが、ここ、ある業界(?)の人々には、結構 名の知れた場所、らしい。
冒頭に記した「らき☆すた」とは人気アニメで、アニメの聖地巡礼の先駆けとなった作品である。埼玉県北東部がモデルになっていて、多くのファンが集う。
劇中の「鷹宮神社」のモデルが鷲宮神社とされ(あっ、確かに名前が似てる!)、聖地巡礼はここから始まったらしい。
アニメファンが、鷲宮神社の絵馬にキャラクターを描いたり(アニメキャラのラッピングを施した自動車、「痛車」になぞられ、「痛絵馬」と呼ぶらしい……)、コスプレ姿の参拝客が現れるなど、当時は地元民を驚かせたが、事情を知ると観光資源として活用するようになったのが始まり。
あまり(アニメファン以外には)知られていないが、埼玉県は なぜかアニメの聖地がやたらある。理由は定かではないが(制作会社は東京北西部に多いので、手近な“郊外の取材スポット”だったのだろうか?)、お陰様で観光資源として十分に機能している。県もこれに目を付け、埼玉県各地のアニメの聖地を観光資源として積極的に売り出しており、イベントも開催している。
観光資源がアニメの聖地というのも はっきり言って微妙だが、「らき☆すた」が地元にもたらした経済効果は10億円に及ぶとも言うし、案外 やってみるものである。
結果的に、埼玉の観光地は偏っている……という結論に至ってしまった。関東各地には、“デートスポット”として名高い名所があるのに対し、埼玉のデートスポットは皆無だし、デートをしたい埼玉在住のリア充は東京へ出没する事態となっている(最近は大宮近辺で間に合わせているらしいが)。
著名観光地に偏りが見られるというのは痛手である。歴史、鉄道、アニメの「オタク3拍子」が揃ってしまっては、私も、「埼玉に魅力が無い、と言われても仕方ないか……」と妙に納得してしまうのだった―――。