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しるし  -異世界での生活-

 「そめちゃん、染ちゃん。着いたよ☆」

 

 う、うーん。私はぼんやりとした頭でゆっくり瞼を開けます。先ほどの可愛い女子高生

が私の目をじっと覗き込んでいます。


「一緒に来てくれたんですね。もうあれでお別れかと思ってました。」

「そんなわけないよー。君一人じゃこっちまで飛べないし、この世界について色々説明してあげないとね。」


 にこにこしている彼女を見ながら、ここはどこだろうかと思いを巡らせました。私はどうやら椅子に座っている様です。何やら横に長い椅子でした。8人は座れるでしょうか。木材で出来ているらしく、暖かみがあります。そう思っていると、足が本当に暖かい事に気付きました。


「気が付いた?床暖房だよ。あったかいよねー。」


 私は頷きながら足を床にすりすりしてその暖かみを堪能しました。うーん、いいね。あ、そういえばこの床も木材なんですね。左右を見ると壁は丸太で出来ている様でした。ログハウスかな。ふと後ろを振り返ると私が座っているのと同じ長椅子がいくつも綺麗に並べられているのに気が付きました。前に顔を戻すと、彼女が立っている後方の壁に十字形のステンドグラスが見えます。もしかしてここは……


 「じゃあ、説明を始めるね。まず場所だけど、ここは教会。見ての通り丸太で出来てるから通称、丸太教会ログチャペル♪ ここを拠点に宣教師として新しい人生をスタートするよ」

「は、はい。え?」


 なんか今とんでもない事をさらっと言った気がします。



……



 「えと、確認したいんですが、宣教師ってあれですよね。神の教えを世界に広める為に、危ない所に行って、危ない人たちに迫害されて、最後には殺されちゃう、あれですよね。」

 「あはは。大丈夫だよー。君がやるのはそんなに危ないやつじゃないから。」


 いやいやいや。怖いです。無理です。


 「この世界はね、既に7割方宣教が終わってるの。すごくない?」

 「マジすか。」

 「だから、残ってるのは危ない所ばっかりなんだよ。」


 いやいやいや、だから無理です。


 「で、その危ない所は選りすぐりのメンバーに行ってもらってるから君は行かなくても大丈夫。そもそも君は喋るの得意じゃないでしょ。」


 あ、はい。それはもう。友達も全然いないですし。


 「人にはそれぞれ適材適所があるからね。与えられた役割っていうか、得意分野を伸ばせばいいんだよ。無理して苦手を克服する必要はないよ。あのモーセだって喋るの下手だったから、お兄さんに喋ってもらってたわけだし。」


 ……私に得意分野なんてあったっけ。っていうかモーセって、あれですよね。海を真っ二つにしたっていう。


 「衣食住は保障するよ。当面はこの丸太教会ログチャペルにある旅人用の寝室を使ってね。後はとりあえず掲示板を確認してね。君が出来るお仕事の依頼があるかもしれないしね。それと……」


 その時、突然音楽が流れ始めました。どうやら携帯の着信音のようです。これはバッハの有名な曲だったような。よく響きます。この建物の構造がそうさせるのでしょうか。それにしても一体どこから……


 「あ、もっすー。」


 お前かーい!


 「うんうん。うん。えー?今忙しいんだけどー。うん。分かったー。おっけー。」


 ピッ。彼女はポケットに携帯電話をしまいます。っつーか異世界なのに携帯電話って。


 「っというわけだから、説明はこれで終わり。」


 ええーーーーーーーー!?


 「別のお仕事入っちゃって、まあ大丈夫でしょ。あ、そうだ。忘れるところだった。プレゼントがあったんだ。」


 そう言うと彼女は手を私の額に翳し、何やらぶつぶつ呟いて、優しく額に手を当てま

した。とても心地良い暖かさを感じます。


 「はい。君にしるしをつけました。EASYモードって約束したからね。上からもOK出たし。私はもう行くけど、会いたくなったら、この丸太教会ログチャペルで会いたいよーってお祈りしてね。そしたら来てあげるよ。たぶん。じゃねー。」

 「ちょっと待って下さいー」


 バサッと羽ばたくような音がして、彼女は突然消えてしまいました。

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