八月の末に
産婦人科に行った。
その日の夕食の時、夫と話をした。
「ね、落ち着いて聞いてくれる?」
「ん?」
夫はそう言って顔をこちらに向けた。
「…赤ちゃん、できてたみたい。」
「本当か!?」
夫は箸を置いて椅子から立ち、机の向こう側からこちらに回って来た。
「そうか…よくやったなぁ。」
「ふふ、ありがと…。」
夫は私の頭を撫でてくれた。
恥ずかしいと言っても聞かなかった。
「…ね、名前何にしよっか?」
「え?…アホ、気ぃ早いって。」
「あ、それもそうだね。」
「…ちゃんと落ち着いてる?」
「興奮してるかな?」
「ちょっとね。」
「…ふふ、そうかもねぇ。」
それからしばらく二人で訳も無く笑った。
端から見たら変だったかも知れない。
「…私ね、あなたに会うまで男の人に好きになって貰ったことなかったんだ。」
少し落ち着いて食事を再開した時、私がぽつりと漏らす。
夫は微笑んでこちらを見ていた。
「だから、きっと私は結婚なんて無理なんだろうって…。」
「…そうか。」
「でもお前さ、高校の時の学園祭の付き合いたい人ランキング、一位だったんだろ?…披露宴でお前の友達が言ってたし。このラッキーボーイ!とか散々言われたんだぞ。」
夫は少し間を空け、こちらを見ながら言った。
「あんなの冗談だと思ってた。私をからかってるんだって。だって実際私に話し掛けてくれる人なんていなかったしね。」
「…へぇ?」
「みぃんな遠くで見てるんだ。それもなんか変な噂されてるみたいで嫌で…。」
「…そうか。」
「だから、私、あなたに初めて会ってから…男の人に好きになって貰うって、こういうことだって、初めて…。」
「アホ、泣いてんじゃない。」
「初めて分かっ…う、分かって…。」
それから少しの間、夫は私の自分でも何を言ってるか分からないような言葉に一つずつ頷いてくれた。
話し終わり、私が少し落ち着くと、私の頭をポンと叩き、
「赤ちゃんできたんだから、今日から俺も洗い物するよ。今日は俺がやっとくから、ちょっと休んどけ。」
そう言って食器を運び始めた。
…私ってばやっぱあの人に甘えてばっか。
さぁ、元気な赤ちゃん生まないとね。
結局今日もノロケみたいになっちゃったな…。
まぁ、いいか。
人に見せるモンでもないし。
今は八月か…赤ちゃんが生まれるのは…来年の六月ぐらいかな。
名前、何にしようかな。
もう眠いなぁ…
じゃ、今日の日記はこの辺で終わり…と。
えー、この小説のジャンルは何でしょうか?(汗
というか小説と言えるものなのでしょうか…審査に通るかが不安です。
若干ノンフィクション入ってます。
というのは…自分の学校にかなり可愛い感じの女の子がいるんです。
それはもう、すれ違ったらちょっと振り返ってしまいたくなるような。
ある時その子と話す機会があったんですが、「男子と話すのどれぐらいぶりやろ」なんて言われてびっくり。
聞くと、話し掛けてくれる人なんてあまりいないと。
自分から話し掛けてもあまり顔を見てくれないと。
更にはいつも見られてる気がして学校では落ち着かないと。
…レベルが高すぎる人ってそんなもんなのか?
そんなことを思いつつ、その典型のような人の幸せな未来書いたら面白そうだな、と思って衝動的に一時間ほどでまとめたものです。
半年ほど前だったでしょうかね。
…何か感じて頂けましたら幸いです。