表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

おっさん

おっさんは目を見開いて僕らを見ていた。見開くといっても、君達が想像するような単に目をおっきく開いたなんてものじゃない。見開くんだ。目を。白目がくるりと一周し、吸い込まれそうに黒い瞳孔がすうっと収縮して僕らを見てるんだ。

僕はそれだけで震えあがった。けれど僕の隣にはあいつの存在感が急に濃く浮きでてきたような気がした。僕はあいつを振り返った。あいつは相変わらずほれぼれするようなかっこいいにやけた面でおっさんを見ていた。あいつの背中はいつだってしゃんとしてるんだ。

「なあ、おっさん。」

あいつはズボンのポケットに手を入れ、上着を軽く乱しながら前に進んでいった。

「おまえ、なにしてんだよ。」

あいつはおっさんの前へ立ち止まって直接聞いた。僕らがずっと聞きたかったことを面と向かって聞いた。

おっさんは目を見開いたまま焦点があいつのもとのいた場所に、合ったまま固定していた。小さな椅子の上に背を丸めて硬直している。おっさんの顔から汗が大量ににじみ出てきだす。

「ねえ。」

あいつの発する音のつながりに暴力やそのほかの不純物はなんら含まれていなかった。ただ純粋に、聞きたい事を聞こうとしている声音だった。

「ここで」

おっさんはおもむろに立ち上がり、目の前の窓へ直進した。それは、あたかもその窓の存在を忘れて、この遥か高い場所からそのまま飛び降りようとしたようだった。

なにもないところを走るように、そのまま窓に走っていったおっさんは窓にぶつかった衝撃で頭が後ろに跳ね、頭を軸として体ごと回転した。

僕らが見る中、おっさんは何度も何度も窓に衝突した。何も知らないハトが誤って透明なガラスにぶつかり、それでもなお何度もその道を通ろうとしているようだった。

大量の汗をかきながらおっさんは窓よりもその先をただひたすら凝視していた。おっさんの息はだんだんと荒くなり、窓には引き延ばされた血が汚く貼りついていた。

それでもおっさんは痛みを知らないかのようにただひたすら飛び降りようとしていた。

「ああああっぁああああああああああああああああ」

おっさんは狂っていた。けれどそれは、おっさんの生来のものの様な気がした。それがこの企業で助長され、後に戻れないところまで来てしまったんだ。

そして僕らはその緻密で正確な歯車を内部奥深くまで入り込み、一瞬で破壊したのだ。

おっさんは窓を割ろうと自分の頭を窓にぶつけだした。

僕らにはどうしようもなかった。

あいつの合図で僕らはおっさんのパソコンへ歩み寄り、その中に何があるのかを僕らは調べ始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ