表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

私室、そして色

「とにかく、それだけは伝えておこうと思ったんだ。」

「う、うん」

僕は実際のところ、こういうときどうすればいいのかさっぱりわからなかった。あいつの言っていることも、どうして急にそんな事を言いだすのかも、全く分からなかった。想像しようとしても、頭の裏側の北極星がある方角の方がじんと熱くなって想像できているのかどうかよくわからなくなる。

エレベーターはすでに音もなく84階に達し、スチールの扉をありありと開けていた。

「こっちを見なよ」

とにかく僕にはあいつにこっちを見て欲しかった。

「うん?」

お互いがゴーグルをつけていたから、どんな表情なのかはよくわからなかった。でも、こうしてお互いが向き合う事が大事なんじゃないかとそのときの僕はそれしか考えられなかった。

「おい」

「なんだよ?」

「こっちを見なよ」

「見てるだろ。」

「よし」

「行こうか。」


大口を開けたエレベーターのすぐ前は一面ガラス張りの窓だった。他の様々なビルがそそり立っている。その中の一角に、僕らはいるのだ。

ぴかぴかの黒い革靴で、深みのあるグレーの絨毯を踏む。

通路に出てすぐ右に曲がると、そこにおっさんがいた。

というか、エレベーターを出てすぐ左側にはなにもないただの木目が美しい壁で、僕らは右に行かざるを得なかったんだけれど、右に向いてしまうと、もうすぐに小さな部屋に通じていて、というかその部屋と一体に癒合していて、その中におっさんがただ一人、いくつものディスプレイと巨大なタワーサーバーに埋もれて小さな椅子に座っていたのだった。

おっさんは黒くて艶のあるキーボードをたたきディスプレイを必死に睨んでいた。

僕とあいつはある意味で途方に暮れた。困り果ててしまった。エレベーターに乗ってきたはいいけれど、それはオフィスフロアに通じているのではなく、おっさんの私室そのものに繫がっていたのだ。出口は、エレベーターしかない。ここには非常用の扉すらない。

おっさんの悲鳴を思いだす。

できればあまり関わりたくないな。そういう旨をあいつに送るとでもここまできたんだぜ?でもここだと逃げ場がないじゃないか、俺達は二人いるから大丈夫だって、いや、あいつは頭が…。


視線を感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ