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小話②「美桜の初診日」
「ひかりこころクリニック」
小さなクリニック。
古い木造の建物で、待合室には観葉植物が置かれている。
美桜は膝の上の封筒を見ていた。
「坂元美桜さん」
受付に呼ばれる。
診察室に入る。
穏やかな男性医師が座っていた。
「どうぞ」
美桜は椅子に座る。
医師は封筒を見て言う。
「紹介状、読ませてもらいました」
美桜は少しだけ肩をすくめる。
「全部書いてあります?」
医師は少し笑う。
「だいたいは」
少し沈黙。
医師が優しく聞く。
「今、死にたいですか?」
美桜は少し考える。
「……日によります」
医師は頷く。
「生きたい日はありますか?」
美桜は窓の外を見る。
雪の残る田んぼ。
静かな町。
少しして答える。
「あります」
医師は言う。
「それなら大丈夫です」
美桜は驚く。
「え?」
医師は穏やかに言う。
「生きたい日がある人は、完全には絶望していません。ここでは、そういう日を増やしていきましょう」
美桜は少し笑う。
「変な診察ですね」
医師も笑う。
「よく言われます」




