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11.5年ぶりの再会(美桜と彩梅)

夕方。

空は茜色に染まり、町には祭囃子が響いていた。

太鼓の音。屋台の灯り。浴衣姿の人々。

五年前と同じ、夏祭りの日だった。

彩梅は店の前に立っていた。

「今年も人が多いな…」

祖父の店は、祭りの日になると露店のように

漆の箸や小皿、蒔絵のアクセサリーを並べる。

その多くは――

彩梅が作ったものだった。

祖父が誇らしそうに言う。

「この蒔絵は、うちの孫が描いたんや」

彩梅は照れながら笑う。

「祖父さま、言い過ぎ」

「本当のことや」

五年前とは違う。

彩梅はもう、店を継ぐ覚悟を持っていた。

大学では経営を学び、空いた時間で蒔絵の弟子入りもしている。

まだ未熟だけれど、確実に前に進んでいた。

ふと、遠くで花火の音がした。

ドン。

彩梅は空を見上げる。

その瞬間――

人混みの向こうに

見覚えのある後ろ姿が見えた。

長い黒髪。少し細い背中。

彩梅の心臓が止まりそうになる。

「……え」

その人が振り返った。

目が合う。

「……彩梅ちゃん?」

声は、少し大人になっていた。

けれど、間違えるはずがない。

「……美桜さん?」

二人とも

しばらく言葉が出なかった。

五年。

長いようで、一瞬のようでもある。

美桜が先に笑った。

「久しぶり」

彩梅の目に涙が溜まる。

「……ほんとに、美桜さん?」

「うん」

「帰ってきたの?」

「仕事で、この町の観光企画を担当することになって」

美桜は少し照れたように言う。

「田舎の魅力を発信する仕事、したかったから」

五年前、

美桜が言っていた夢。

「北陸とか、地方の良さを伝えたい」

あの言葉を、彩梅は覚えていた。

彩梅は思わず笑う。

「ちゃんと夢叶えてるじゃん」

美桜は首を振る。

「まだ途中」

「でも…」

少しだけ、空を見上げて言った。

「五年前よりは、ちゃんと生きてる気がする」

その言葉を聞いて、

彩梅の胸が熱くなる。

「美桜」

彩梅は言った。

「私もね」

「店、継ぐんだ」

美桜の目が驚きで丸くなる。

「ほんと?」

「うん」

「大学で経営学んでる」

「蒔絵も修行中」

彩梅は少し照れる。

「まだまだ下手だけど」

美桜はゆっくり笑った。

「彩梅ちゃん、すごい」

その言い方が、昔と同じで――

彩梅の目から涙がこぼれた。

「……おかえり」

彩梅が言う。

美桜は少し驚いたあと、

静かに答えた。

「ただいま」

その瞬間――

夜空に大きな花火が上がった。

ドン。

五年前と同じ場所。同じ祭り。

でも――二人はもう、あの頃とは違っていた。

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