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敵の魔力で、肌がチリチリと焼けた。
しかし、父竜の度外れた体力と母の大いなる霊力を継ぐ、彼女の足は止まらない。
鎧の核から発する波動が、レリオスが受けた迫害の記憶を、断片的にドラセナに見せた。
だが、彼女は同情しない。
ある意味、同じ境遇の自分は、それでも彼のようにはならなかった。
(わたしは強い!)
自分の良さは、自分が分かればいい。
誰に何を言われようとも、それは揺らがない。
そして、その心の強さが、自らを守り抜く。
「うあぁぁー! 寄るな! 寄るなー!」
レリオスの顔が恐怖に歪む。
鎧のエネルギー波が強まったが、それをローワンの魔法がぎりぎりで制した。
「おおおー! 年寄りには、ちと酷じゃわい!」
黒球から、小さな雷がバチバチと爆ぜる。
先ほどブレスで相殺した攻撃が、もう1度来ると分かった。
「ぬおぉぉーッ!」
ドラセナは吼えた。
それはまさに竜の咆哮。
「ダーガンファング! あの人の苦しみを終わらせて!」
渾身の力を込め、ドラゴンズドーターは両手剣をレリオスに投げつけた。
規格外の膂力で投擲された名剣は、鎧の魔力の圧をも斬り裂き、まっしぐらに核へと飛んだ。
月明かりに煌めくツーハンデッドソードは、深々と黒球を貫き、レリオスの背中から刀身を現す。
「ぎゃあぁぁぁーッ!」
絶叫と共に、ハーフエルフの身体は、今まで自在に操っていたエネルギーに飲み込まれた。
そして、爆発を起こす。
爆風が、ドラセナの焼けた頬肌を撫で、ローワンの白ひげを揺らした。
レリオスは呪いの鎧共々、跡形も無く消えた。
彼の白馬が悲しげな嘶きを上げ、来た道へ走り去っていく。
ドラセナは、地面に残った愛剣を拾った。
ローワンが、傍に来る。
「お嬢ちゃん、上手くやったな」
老人が褒めた。
「まあね」
「並の人間なら、無理じゃったろう。やはり、お嬢ちゃんがここに来たのは必然じゃよ」
「そんなの分からない。わたしはわたしの流儀を通しただけ」
「ファファファ、なるほどのぅ」
辺りが霧に包まれる。
ここに来た時と同じ現象だ。
「わしらの役目も終わったようじゃな」
「元の世界に帰れる?」
「うむ。お別れじゃて」
ローワンの姿が霧に隠された。
「お嬢ちゃん、達者でな。そうそう、1度違う世界に招かれた者は、不思議と何度も同じ目に遭うという。わしのように使命を帯びて世界を渡る者もおるが、またどこかで出会うかもしれんな」
「それは面倒だな」
ドラセナは、ため息をついた。
もう、老人の声は聞こえない。
霧が晴れていく。
元の川辺に戻っていた。
ドラセナはダーガンファングを背の鞘に納め、歩きだす。
今夜の寝床を探さなくては。
あてもなき、彼女の旅は続く。
そこで待つのは新たな冒険。
それを語るのは、またの機会に。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/




