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 黒竜の父と、人間の巫女の母の間に生まれた娘、ドラセナの冒険譚のひとつ。




 大陸南部の森を抜けた川辺で、ならず者たちの襲撃を受けたドラセナは、容易(たやす)く彼らを退(しりぞ)けた。


 夜の闇で、彼女が2m超えの逞しいドラゴンズドーターだと気付かなかったのか、あるいは10人でかかれば勝てると過信したのか、はたまた(ただ)のバカだったのか。


 黒鎧に身を包み、名工(めいこう)作の両手剣ダーガンファングを振るうドラセナに次々と倒され、残った1人は「ひー! バケモノ!」と情けない悲鳴を上げて、森に逃げていった。


 そっちが襲ってきたのにバケモノもないものだと呆れる。


 これまでの旅の道中で似たような心無い言葉を投げつられたことはあった。


 だが、その(たび)に誇らしい父と優しい母を思い出せば、何ということもない。


 彼女は強い。


 言いたい奴には言わせておけば良い。


 ただ、行き過ぎた侮辱や理不尽な攻撃には、敢然(かんぜん)と逆襲する。


(ん?)


 いつの間にか、周りが濃霧に満たされていた。


 月明かりを(さえぎ)られ、額当ての宝石が色を曇らせる。


 あまりに急すぎる気象の変化に(魔法?)と推察(すいさつ)した。


 もはや、1歩前しか見えない。


 とにかく、川の位置を確かめようと進んだ。


 しかし、どういうわけか川がない。


 そんなバカなと思うが、地面は続く。


 不思議な霧は現れた時と同じく、たちまち晴れた。


 前方に魔法使い姿の白ひげの老人が立っている。


 広い荒野の右側に、中規模の街灯りが見えた。


「ほほぅ」


 老人がドラセナを見る。


「霧が他の世界を繋げたようじゃの」


 ドラセナは彼の前に立った。


「ここはどこ?」


「あそこに見える街ダイモンの近くじゃよ、お嬢ちゃん。わしはローワン」


「川辺に居たのに」


「魔法の霧の仕業(しわざ)じゃ。まれに違う世界を引き寄せる。わしは偶然ではなく、必然と考えておるが。今から、ここは危険になる」


「危険? どうして?」


「呪いの鎧に魅入(みい)られたハーフエルフのレリオスがやって来るのじゃ。あ奴はかつて、出自を理由にひどい仕打ちを受けてな。呪いの鎧を手に入れ、悪の(ちから)で復讐を果たしたが、その時はもう手遅れじゃった。自分の意思で行動しておると思っていても、今は鎧に操られておる。あ奴の次の狙いがダイモンというわけじゃ」


「どうするつもり?」


「わしが止める。いや何、これでも善の(がわ)庇護(ひご)を受けておってな。無益な殺生(せっしょう)は見過ごせんのじゃ」


「ハハハ!」


 ドラセナは笑った。


「善と悪なんて、立場で変わるよ」


「ふむ。お嬢ちゃん、真理を知っておるな」


 ローワンが、ニヤリと笑った。


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