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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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人間を食べたら殺人で捕まるので、私は幽霊を食べることにしました。

掲載日:2025/09/06

いつからだろう?私が人間をおいしそうだと思うようになったのは。



しっかりとした肉の弾力のありそうなふとももに、ふわふわと柔らかそうな頬、それに、しっかりとした歯ごたえがありそうな首筋。


そのすべてが、食欲を刺激する。けれど、人間を食べるわけにはいかない。それをやると、私は捕まってしまうから。人間を食うなんて、それこそメディアの飯のタネになってしまう、なんて。



けれど、その時私は気が付いた。私には霊感がある。それなら、どうにかして、幽霊を食べることが出来れば、疑似的に人間を食べたことにならないだろうか?




「ーーーそれが、私は除霊師を始めた理由。だから、今からあなたは私に食べられちゃうの。」



始めてくる1DKのアパートの一室で、既にお札で封印をした地縛霊に私はそう告げた。


幽霊らしい血の気のない顔で、幽霊とは思えない程青ざめた表情をした彼に、私は体中を血が熱くなるような興奮を覚える。きっとこれは、嗜虐心に姿を変えた、狩猟本能だ。



恐らく若くして死んだのだろう。少し線は細いが、全く肉がないというわけではないし、適度な弾力がありそうな肉質をしている。筋肉質すぎもしないし、太りすぎてもいない。


養殖でないことを考えると、かなり上質だ。人間の養殖がいるのかは、私は知らないけれど。



「お、お願いだ!辞めてくれよ!俺、ここで死んで、どこにも行けなくなっただけなんだよ!怖がらせるつもりなんてーーー」



既に死んでいるのに命乞いを始める彼が少し愉快で、私は口元を抑えて笑みをこぼす。そんな私に呆気にとられるように、彼は口を開けて呆けた表情で私を見つめた。目には、絶望の光が見える。




「あのね、そんなことはどうでもいいの。さっきも言ったよね?私は、人間が食べたい。けれど、それが出来ないからあなた達幽霊を食べるの。貴方の行いとか、過去には一切興味がないんだ。」



怯えた表情は、嫌いじゃないけれど。



まだ何か喚き続ける彼を無視して、私は準備に取り掛かる。まずは、部屋に備え付けてあるベッドに、車に積んでいた同じくらいのサイズの木の板を置いて、清めた大型の斧を取り出す。



板に必死にもがく彼をうつ伏せに置いて、注連縄で彼の身体が動かないよう、しっかりと固定する。この後もかなり重労働だけれど、やっぱり何度やってもここが一番疲れるな、なんて思いながら額の汗を拭う。



首筋がしっかり見えるようにバリカンで襟足の毛を刈って、私は斧を振りかぶった。


「多分、動けないと思うけれど、動けたとしても抵抗はしないでね?余計痛いと思うよ。まあ、私はやったことないから分からないけれど」



「待って!お願いします!いやだ!許しーーー」


ブンっと斧を振り下ろす。


必死に喋っていた彼の喉から、「ヴぇっ」という音が聞こえると同時に、彼の首はサッカーボールのように転がり落ちた。


一瞬間を置いて、彼の首から大量の黒い液体が流れる。どうやらこれが人間で言う血の役割をしているみたいで、これをきちんと抜かずに食べた時は、明らかに血なまぐさい味がした。以来、こうしてきちんと血抜きをするようにしている。


他にも、首を切り落とすのは、これ以上喚かれないように、というのもあるけれど。霊感のある人にしか幽霊の声は聞こえないらしいから、近所迷惑にはならないが、充分私からしたら迷惑だ。


首を落としたところで意識はあるらしく、パクパクと口を動かしながら苦悶の表情を浮かべているが、肺と繋がっていないからか、何も聞こえない。消音でテレビを見ている時のような面白さがある。



一旦顔を放置して、胴体の両足のアキレス腱と手首に包丁で深く切れ込みを入れて、そのまま彼を浴室に運ぶ。


この部屋が浴室乾燥で助かった。浴室にかかった洗濯竿にフックを引っ掛けて、そのフックに両足を突きさす。これで、あとは待つだけで血抜きは完了。胴体は今日は食べないから、しばらくしたら四肢を落として車に積んで、後日食べよう。



という事で、血抜きが終わるまでの間、私は彼の頭を食べることにした。



今回、依頼してきた大家さんに頼んで、生活インフラは使えるようにしてもらっている。だから、キッチンは問題なく使用できる。


けれど、家庭用のキッチンで人間の頭をそのまま兜焼きにするのは、少し難しい。どうしても火の通りが甘くなってしまう。



どうすればいいか、と熟考して、私はひらめいた。コンロは2口ある。真っ二つに割って、それぞれフライパンで焼こう、と。幸い、フライパンは二つ持ってきているし、脳は塩で少し締めてからコンロで焼くことにした。




という事で、私は調理に取り掛かる。まずは、やかんにお湯を沸かす。沸騰したら、頭とやかんを風呂場に持ち運び、首元に小さく切り込みを入れて、全体にお湯を回しがける。こうすると皮膚が縮んで手で引きはがすことが出来るようになる。



皮を綺麗に引きはがすと、幽霊とは思えないくらいに新鮮な筋肉の赤が露になり、私は思わず唾を呑み込む。このままかじりつきたい欲求を抑えて、私は斧で豪快に頭を真っ二つに割った。



中に隠れていた黒い液体と、真っ白の脳が溢れ出る。脳を先程のお湯で洗った後、全体に塩をして水分を飛ばす。こうすることで、焼くときに崩れなくなる。



割った頭も同様の手順を行い、少し置いた後、フライパン、コンロでそれぞれを2時間程度焼くと、『兜割り焼き』と、『ブレンズ焼き』の完成だ。




熱々のそれをさらに盛り付けて、私は先程彼がいたリビングに運ぶ。まさに地産地消だな、なんてしょうもない事を考えながら。


残念なことに机はない。ため息を吐きながら、私が床に皿を置いて、「いただきます。」と手を合わせた。




まずは、どちらから手を付けよう?私は2品を交互に見て、ブレンズ焼きから手を付けることにした。


箸ですくうと、白子よりもとろとろとしていて、辛うじて箸で持ち上げることが出来る程度の固さしかない。


途中で溢してしまいそうで、仕方なく顔を近づけて迎えに行く。口に含んだ瞬間とろけて、濃厚なクリーミーさが口いっぱいに広がる。お酒が飲みたくなる味だ。車出来ていなければ、と少し後悔をする。



次は、『兜割焼き』に手を付ける。これも箸でいこうかと思ったけれど、骨に身が張り付いていて、上手くとることが出来ない。


折角だから、私は首と頭頂部を指で持ち、直接かじりつくことにした。熱さに苦戦しながらなんとか指先でつかみ、世界一熱いキスだ、なんてしょうもない事を考えながら、私は頬肉にかじりつく。



ぷりぷりとした触感、それでいて、筋っぽくない。万人受けする味だ。目の周りは少しゼラチン質で、プルプルとした官能的な食感をしていて、癖になる。少し食べづらいが、それに見合う美味しさはある。



しばらく夢中で貪り、十数分後、私は完食した。残った頭蓋骨は、光となって消えた。何故か、非可食部は可食部が食べられると光になって消える。理屈は分からないけれど、便利で助かっている。




お腹いっぱいだ。少し眠くなりそうなのを必死で堪えながら、私は胴体を下ろして、四肢を切り取って食後の運動だ、と車に詰めた。


部屋も綺麗に戻して、大家にも除霊を終えたことを伝えると、私は車を発進させて、帰路に着く。




兜割焼きもブレンズ焼きも美味しかったな。


身体はどうやって食べよう?


手は揚げ物にして、胴体は内臓もあるし部位ごとにバラして焼肉にしようかな。


足はどうしよう?


それにしても、本当に美味しかった。


幽霊はきっと、人間の加工肉みたいなものなのだろう。そういうものは保存がきくけれど、味は落ちると相場が決まっている。


という事は、幽霊じゃない方がやっぱり美味しいのかもしれない。



…………そろそろ、いいかな。飯のタネにされても。美味しいご飯が食べられるのなら。






読んでくださりありがとうございます。

共食いはブリオン症を引き起こすので、皆さんは絶対に真似しないでください。あと、普通に犯罪です。



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― 新着の感想 ―
怖い…… 主人公の冷静ながらも狂気あふれた心の声が恐怖を増幅させますね……
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