81話 防具のメリット
「なるほど、グレープフルーツ版レモネードね……」
エルさんが注文したグレネードとかいうあまりに危険そうな飲み物をジーっと見てたら『飲みますか~?』と言われたので一口貰う。
あ、ストローは新しいの使いました。
「ここのドリンク、ちょっと変で美味しいですよね~。ちなみに梅雨川のオススメはウーロントイです~」
「ほぼ麻雀じゃん」
改めてエルさんの格好を確認してみる。
魔法使いみたいなトンガリ帽子に大きめのローブ、中にはカーディガンとちょっと丈の短いスカート。
そしてゴブリンエンペラーからドロップした『卑帝の巻角』を使って作成したワンド型の武器……
「なんというか、エルさんってライザー活動楽しんでま~すって全身で表現してるよね」
「梅雨川の全裸がなんですか~?」
「言ってねえよそんなこと」
これが無ければ良い子なんだけどね……
「冗談ですよ冗談~。ソラ氏は装備品とか作らないんですか~?」
「一応、武器はひとつ持ってるよ。防具は作ってないね」
「じゃあノー防具で中級ライザーまできたんですか~? 防御捨ててますね~」
「あはは……まあ、ひたすら回避して隙を見て攻撃するスタイルではあるかな」
そもそもヴェノムイーター状態になっちゃえば武器も防具も関係ないからね。
「でも防具はあった方が良いですよ~。学校の制服みたいなもんですから~」
「制服? どういうこと?」
「ほら、私立とかで制服が無い学校あるじゃないですか~。ああいう所って毎日コーデ考えないといけないんで大変なんですよ~。ファッションセンスとかも見られますしね~」
「はあ、なるほど……?」
「でも指定の制服があれば、毎日それを着て行けば良いじゃないですか~。ライザーも一緒で、こういう防具をひとつ作っておけば普段着のコーデを気にしなくても良いというわけです~」
「分かるような、分からないような……」
つまり、ライザー活動中の私服もファッションセンスが求められるから、防具を制服代わりに装備すれば毎回同じ格好でも問題ないってわけか。
うーん、そんな所まで気にしたことなかったな……これは結構、女性ライザー特有の考え方かもしれない。
「というわけで、ソラ氏も防具の一つや二つ持ってた方が女子力上がりますよ~」
「女子力って……」
でもまあ防具があると身体能力にもバフがかかるって聞くし、魔装変身してるときはともかく、通常時の俺はまあまあ紙耐久なので装備してた方が良いのかもしれない。
「俺の持ってる素材で何か作れるのがあるのかな」
「梅雨川は魔法使いスタイルに合わせて防具も考えてますけど、特にそういうのがないなら有り合わせで作製してくれるクラフターに相談してみたらどうですか~?」
「そんなのがいるんだ。知らなかった」
事前に提示された素材を渡すと武器や防具を作ってくれるクラフターや、オーダーメイドで各ライザーに合わせたものを設計して、それから必要な素材を割り出してくれるクラフターは知ってるけど、そんな有り合わせの素材というか、冷蔵庫にあるものでおかず作ってくれる系のクラフターもいるんだな。
「そうか……うん、そうだね。俺もなにか防具を作ってもらおうかな。アドバイスありがとうエルさん」
「いえいえそんな~。アドバイス料はグレネード代で良いですよ~」
「ちゃっかりしてるね君」
俺はエルさんにグレネードを奢ってあげた。
武器商人かな?