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8話 面倒くさい相手



 ピクシード族のパモチと別れ、リフトに乗って『EXIT』ボタンを押す。



「このほぼほぼエレベーターみたいな装置とか、ライザーカードに表示される文字がこの世界の言葉だったりするのはやっぱ何か学習して作ってんのかな……」



 そんなことを考えつつ、軽い上昇負荷を身体で感じながらしばらく待っていると、ポーンと音が鳴って第1階層にリフトが到着し、攻略に向かう際のフロア側の扉ではなく、タワーの出入り口側の扉が開く。

これで本日のユグドラタワーでのライザー活動は終了だ。



「やっぱり、このタイミングで動き出した」



 ライザーカードを確認すると、止まっていた活動可能時間の表示が第1階層に戻ってきたことで再び動き出す。

そして地下1階層にいたときに表示されていたカウントアップの時間表示は何故か消えていた。

このライザーカードの表示を信じるなら、地下階層にいる間はユグドラタワーでの活動可能時間は無視できるということになる。



「フロアランクも1のままか……」



 フロアランクは、フロアキーを獲得してリフト内のカード差込口に挿入した時点で更新される。

俺はあの時、地下1階層に行くための『-1』と刻印された下層用の黒いフロアキーを挿入した。

しかし、フロアランクの表記が『-1』になるわけでもなく、かといって第2階層に行けるようになったわけではないのでランク2に更新もされず……



「地下階層、いったいなんなんだ……?」



 今日起きたことは、ユグドラセンターで報告した方が良いのだろうか。

しかし、俺が地下階層に行ったという証拠が何も無い。

下層用フロアキーはリフト内で使用した時点で手元には戻らず、ライザーカードの所持データにも残っていない。

リフトに入れば地下1階層に行くためのボタンが表示されるが、そのリフトは1人ずつしか利用できないし、カメラなどの録画機器もタワー内には持ち込めない。



「はは、下手に相談したら『万年フロアランク1のやつが遂に幻覚でも見始めたか』とか言われそうだな」



 そんなことを考えつつ、ふと違和感を感じて右手を確認する。

ユグドラタワー内で入手したアイテムは、魔石以外はフロア外で具現化することが出来ず、ライザーカードにデータとして収納される。

つまり、さっきパモチから貰った魔装も消えているはずなのだが……



「あれ? なんでこれ、装着したままなんだ……?」



 俺の右手の中指には、何故かまだ指輪型の魔装が嵌められたままだった。

見た目は普通の指輪とあまり変わらないので装着していても問題はなさそうだが、なんとも不思議な現象である。



「そういえば、この魔装って……」



 俺はライザーカードを操作して所持アイテム欄を検索する。



【魔装NULL】

・起動状態:種

・入手条件:地下1階層に到達し、ピクシード族と接触する。



「魔装、エヌユーエルエル……ヌル……?」



 ヌルって、ゼロとか無意味って意味だっけ。

なんか、あんまりかっこよくないな……今までに見つかってる魔装は『スカイドラゴニュート』とか『イフリーター』とか『ブラッドウンディーネ』みたいなかっこいい名前が付いてるのが多かったのに。



「いや、冷静に考えると別にそんなかっこよくはないかかもしれない」



 学生の頃にトップライザーたちが自分の魔装を紹介してる番組を見たことがあって、たしかにその時はかっこいいな~って思ってたんだけどな。

なんか競走馬の名前みたいだし、イフリーターとかほぼほぼフリーターだし。



「起動状態:種っていうのは……あ、そういえばパモチが『魔装が馴染むまでに時間がかかる』とか言ってたっけ」



 魔装というのは本来、全身装甲……一種のパワードスーツのような装備アイテムだったはずだ。

今はただの指輪にしか見えないのは、まさに植物の種のような感じで眠っている状態ということなのだろうか。

魔装が俺に馴染んできたら、この状態が変化していくのかな。



「ちょっと楽しみだな」



 そんなことを考えて魔装の成長にワクワクしつつ、タワーを出てユグドラセンターに戻った時だった。



「お? そこにいるのは和取クンじゃねえか。相変わらずの3時間限定チュートリアルか?」



「げっ……」



 周りに聞こえるような声でこちらに近づいてくる、郷原リュウトくん。



「や、やあ郷原くん。結構遅い時間だけど、そっちはこれから攻略?」



「ああ。昨日フロアランク51になったもんで、上級ライザーの祝いで少し飲みすぎちまってなあ。和取も早くなれると良いなあ、フロアランク2にな! がっはっは!」



「あ、あはは……」



 相変わらずランクマウントがすごいなあ。

俺の事は放っておいて早くリフトに向かって欲しいんだけど。



「ん? 和取、お前……なんだその指輪」



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