75話 アリゲーマン
「ガビガビガービガビ!!」
【アリゲーマン】
・生息地:地下3階層
・ドロップ:青の魔石、鰐心鈹
「こいつがアリゲーマンか」
「も、も、もうだめぴょん……おしまいぴょん……」
「ベ〇ータみたいな諦め方するなって」
いきなり現れたワニ型のモンスター、アリゲーマン。
見た目はいわゆるファンタジー作品に出てくる『リザードマン』と呼ばれる、トカゲと人間の特徴を併せ持つモンスターのワニバージョンといった所だろうか。
まあ、ぶっちゃけるとドンキーコ〇グに出てくるキングク〇ールに似ている。
「ガビガビガビィッ!」
「ぴょぴょぴょぴょ~んっ!?」
「おっと!」
「ガビッ!?」
俺には目もくれず、口を開けてダッチーに向かっていくアリゲーマンの腹を蹴り飛ばして距離を取る。
「くそ、地面がこれだと力がうまく入らないな……」
足首辺りまで浸水している地面から繰り出した俺の蹴りは、水圧を受けて本来の威力が出せずにいた。
「ひ、ひいいいいいっ! お助けぴょん~!」
「うわっ!? こらダッチー! 飛び乗ってくるなって!」
「ソ、ソラはアタイを置いて逃げるつもりぴょん! そんなことさせないぴょん!」
「逃げないから! ちゃんとあいつ倒すから!」
アリゲーマンに襲われてパニックになったダッチーを背中にしがみつかせたまま、ライザーカードを操作して武器を……
「って、ダッチーが邪魔でカードが取り出せねえ! ちょっと降りてくれマジで!」
「も、もう離さないぴょん!」
「こんな場面じゃ無かったらときめくんだけどなチクショウ!」
「ガビガビガビィッ!!」
背中にはパニックになったラビンヘッド族、正面からは蹴り飛ばしたアリゲーマンがバシャバシャと音を立ててこちらに突撃中、武器を装備する為のライザーカードは取り出せない……
「くっそー! もうこれしかねえ! 魔装化・右腕っ!!」
『レッツ! マソウトランスフォオオオム!!』
ギュインギュインギュイン!!!!
「ソ、ソラから変な音がするぴょんっ!? 怖いぴょおおおおおんっ!?」
「ガービガビガビガビガビイイイイイイイ!!!!」
「かかってこいやあああああああああああああああ!!!!」
なんかもう後ろも正面もうるさすぎてヤケクソになった俺は、ヴェノムイーター状態になった右腕に体重を乗せて、突撃してきたアリゲーマンの胸部を思い切り殴りつけた。
「おらぁっ!!!!」
「ガビィッ!?」
ドシュッ!! バッキイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!
「ガ、ガビィ……」
胸部を貫かれ、どしゃっ! と崩れ落ちるアリゲーマン。
どうやら俺の攻撃がコアにヒットしたようで、ワニ頭の怪物は湿地の水面に立ち上る蒸気のように消滅していく。
「ふぅ……ほらダッチー、もう大丈夫だぞ」
「た、倒したぴょん? もうアリゲーマンいないぴょん?」
「まあ、実はもう一匹いました~とかじゃなければもう大丈夫だよ」
恐る恐る俺の背中から降りて消滅していくアリゲーマンを確認するダッチー。
「さ、さっすがソラだぴょん! ア、アタイは最初から信じてたぴょん!」
「君さっき『もうおしまいぴょん』とか言ってたよね」
なんとも調子のいいダッチーを放置して、アリゲーマンの消滅した跡からサファイアみたいな青い結晶と青緑色の苔が混ざったような平べったい鉱石を拾い上げる。
「こっちが青の魔石で、これが……鰐心鈹か?」
てっきりワニ革的な素材がドロップされるのかと思ったけど、普通に石だなこれは。
魔石みたいな結晶でも研磨された宝石でもなく、岩から切り出した鉱石みたいな感じ。
アリゲーマンの鱗を何枚か重ねてプレスしたようにも見える。
「まあ、適当に集めて後でクラフターに何か作ってもらおう」
アリゲーマンを倒した俺は魔装化していた右腕を元に戻し、再びダッチーと一緒に陸地を目指して湿地の中を歩き始めた。