64話 ゴブリンエンペラー
「「キキキキッ!!」」
「はっ!」
「「キキキィッ……!?」」
ドスッ!! バッキイイイイイン!!!!
「「キ、キキィ……」」
ユグドラタワー第20階層フロアボス、ゴブリンエンペラー戦。
まずは左右でチョロチョロしているすばしっこいゴブリンジェミニたちを討伐する。
こういうのは雑魚を倒してから本丸に向かうのが定石って感じあるし。
まあ、こいつらも一応第11階層のフロアボスではあったから雑魚モンスターってわけではないんだけど。
「ゴブゴブゴブ~!!」
パアアアアアアアア……!!
「「キキキッ」」
「いや復活すんのかよ……っ!?」
両サイドから同時に襲いかかってきたゴブリンジェミニを倒して体勢を整えていた俺が見たのは、右手に持っていた杖を掲げて謎の呪文を唱え、新たなゴブリンジェミニを召喚するゴブリンエンペラーだった。
どうやらメインのボスモンスター以外は倒しても無限に復活するタイプらしい。
「なるほど、確かにこれは苦戦するライザーが多いかもしれないな……!」
コハルさんがしばらく第20階層でつまづいて先に進めなかった理由はこういうことか。
ゴブリンジェミニを従えているとは聞いていたけど、まさか倒してもまた召喚されるとは聞いてなかったな。
「……いや、もしかしたら説明してくれてたかもしれないけど、あの時酔っぱらってたからなあ」
コハルさんと日奈多さんに焼き肉を奢った日の事を思い出す。
うん、泥酔してたから聞いてても忘れてる可能性は大いにあるな。
「「キッキキ~!!」」
「おっと」
「ゴブゴブゴブッ!!」
「おわっとぉ!?」
ゴブリンジェミニの2匹同時攻撃を避けた先に、ゴブリンエンペラーが放った魔法の砲撃が飛んでくる。
「危ない危ない……回避先も考えないとだな」
ここまで戦ってみた感じでいうと、多分……というかほぼ確実に魔装変身してしまえばサクッと倒せてしまう気はするのだが、あまりあの力に頼りすぎてしまうと後々勝てなくなってしまいそうなので、今回は身体強化の恩恵だけ受けて戦闘を続けている。
まあ、第15階層のゴブリンスパイダーみたいに今の武器だと相性が悪い敵だったり、本当に無理そうだったらヴェノムイーターに変身しよう。
「ゴブリンジェミニをいなしつつ上手い事ゴブリンエンペラーに接近しないとだな。それなら……ふんっ!!」
ビュンッ!!
「ゴブッ!」
「「キキキッ!?」」
ゴブリンエンペラーに向かって俺が両手に装備している『黒鉄甲の打突旋棍』をブーメランのように投げ飛ばすと、ゴブリンエンペラーを庇うように2匹のゴブリンジェミニたちがブーメランの軌道上に飛び出してくる。
このままではゴブリンエンペラーに攻撃が届かず、ブーメランが当たって死んだジェミニをまた召喚されてしまう……
「まあ、その前に倒すけどなっ!」
「ゴ、ゴブゴブッ!?」
最初からこうなることを予測していた俺は、ブーメラン攻撃を仕掛けたと同時にゴブリンエンペラーへと突撃。
そのままゴブリンエンペラーの死角に入り込んだ時、ちょうどブーメランに当たったゴブリンジェミニが消滅していくところだった。
「そんでもって、お前もこれで終わりだっ!!」
「ゴブッ!?」
背後に回り込み、かかと落としの要領でコアがあるであろうゴブリンエンペラーの頭部に思い切り蹴りを入れる。
ドガッ!!!!!!!!
「ゴブゥ〝ウ〝ウウウウウウウウウウッ!!!!????」
バッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!
「ゴ、ブゥ…………」
…………。
「っしゃあ! ゴブリンエンペラー、討伐完了だっ!」