57話 EXタイムポーション
「よし、これで第11階層は攻略完了だ!」
ゴブリンジェミニを討伐し、消滅後に出現したフロアキーと緑色の魔石を拾ってボス部屋を後にする。
「おまえ、ボスたおした。もうようずみ」
「いや用済みって……ここはタウンエリアだし、また来るよ」
ボス部屋の前にいたクラフターと軽口を交わしつつ、フロアキーと一緒にドロップされた緑の魔石を照明にかざす。
緑の魔石は第11~30階層で入手できる魔石で、赤の魔石のような爆発的な力は出ないが、安定してエネルギーを取り出すことが出来るらしい。
まあ俺の場合は地下2階層でも入手が可能なので、今回手に入れた魔石以外にもイノシークを倒した際にドロップしたものをいくつか持っている。
「おまえ、みどりのませき、もってるな?」
「えっ? ああうん。何個かあるよ」
さっそく第12階層に移動しようとフロアキーを持ってリフトに向かっていたところ、タウンエリアで店を出していたクラフターの一人に声を掛けられた。
「みどりのませき、クスリにできる。つくるか?」
「薬? なんの?」
「じかんをのばす、クスリだ」
「じ、時間を延ばす薬……?」
なにそれ、玉手箱的なやつ?
普通に怖いんだけど。
「みどりのませき、ふつうサイズ10こでつくれる」
「結構素材使うんだね……でもちょっと興味あるし、作ってもらおうかな」
俺はライザーカードのインベントリを確認して魔石の量を確認し、クラフターに謎の薬の作製をお願いした。
昨日持ってた魔石を結構換金しちゃったから、残ってたのもこれで消費して……もうすっからかんだ。
まあ、後先考えないところもライザーをしている者の特徴といえば特徴かもしれない。いやよくない特徴だねそれは。
―― ――
「よし、それじゃあ今日は第14階層からだな」
昨日、第11階層のフロアボスを倒した勢いで第12階層に上がった俺は、結局そのまま第12、13階層の攻略を完了させてライザー活動を終えた。
やはりコハルさんの情報通り、出現するモンスターはフロアボス含めて全てゴブリン系で、『ゴブリンチップ』という謎のアイテム素材をドロップすることもできた。
一夜明けた今日も地上階層の攻略を進める予定で、出来れば第14……いや、第15階層もクリアしていきたい。
「……ん? クラフターからのお知らせ……あっ昨日頼んだヤツか」
どうやら昨日作製をお願いしていた『時間を延ばす薬』とやらが完成したみたいだ。
武器の作製をお願いしていた時は完成までにもっと時間がかかっていたから今回も同じくらいかかるのかな? って思ってたけど、消耗品の作製は結構早くできるっぽいな。
「一旦、第11階層に寄ってアイテムを受け取ろう」
……。
…………。
「よくきたいらいにん。クスリ、できてるぞ」
「なんか怖いなあその言い方」
クラフターから緑色の液体が入った試験管のような物を受け取る。
「これをつかえば、おまえのじかん、のーびのび」
「時間がのーびのび、ねえ……」
ライザーカードをかざしてアイテムの情報を確認してみる。
【EXタイムポーション】
・入手方法:薬品職人のクラフターに作製を依頼
・使用素材:緑の魔石
・使用効果:活動可能時間の延長(使用日のみ、1時間)
「活動可能時間の延長……ああ、なるほどね」
どうやらこの『EXタイムポーション』を使うとその日の活動可能時間が1時間延長されるらしい。
地下階層であれば無制限で活動できるが、地上階層はフロアランクによって活動可能時間が決められているので、これはかなりありがたいかも。
「めちゃめちゃ使えるアイテムじゃん……依頼して良かったよ、ありがとう」
「ごりようは、けいかくてきにな」
「借金はしてないけどね」
でもまあこれを作るのにめちゃめちゃ魔石使うから、そういう意味では計画的というか、ここぞという時に使わないとな。