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4話 フロアキー



 第20階層へと向かうコハルちゃんを見送って、俺も別のリフトの中へと入っていく。

ユグドラタワー内の階層を移動するリフトは1人乗りのエレベーターのようなもので、中に入ってライザーカードをスキャンすると自分が今行ける階層を選択することができる。

とはいっても俺は第1階層しか行けないから選択の余地が無いんだけど。



「第1階層は入ってすぐ着くから楽でいいや……はあ」



 第1階層のボタンを押した瞬間、ポーンと音が鳴って入ってきた時とは別の扉が開く。

まあ階層変わってないからね……実質、素通りみたいなもんだ。



「さてと、コハル神社にもお参りしたし、今日こそフロアキーを手に入れるぞ!」



 俺はリフトから出て、1日ぶり千数百回目くらいの第1階層攻略を始めるのであった。



 ……。



 …………。



「はあ、はあ……今度こそ……フロアキーを……!」



 倒したモンスターがうっすらと光る煙のようなエフェクトを出して消滅する。

そして消滅したモンスターの跡には……何も残されていなかった。



「ドロップ、無しか……」



 現在の収穫は、約2時間活動してモンスター6体討伐。そんでもって砂粒みたいな魔石を2つドロップ。



「はは、魔石の売り上げでカップ麵でも買って帰ろうかな」



 なんなら残り時間で収穫ゼロだったらカップ麺も買えないレベルだ……今日の夕食は駄菓子かも。



「なんか、序盤で無駄に気合い入れたせいで余計に疲れちゃったな……今日はもうやめにしようかな」



 いや、コハル神社のお参りを無駄とか言うのは良くないな、罰が当たってしまう。



「……ぽよぽよ」



「おっと、モンスター出現だ」



 カップ容器からプッチンしたゼリーのようなモンスターがぽよぽよと這いずりながらやってくる。

第1階層に出現するモンスター、スライムだ。

半透明なゲル状の身体の中にある丸いコアを破壊すれば倒すことが出来る。



 このコアが結構固くて、ゲル状の身体で守られてて攻撃の威力が削がれるうえにコアが身体の中を移動し続けているから、第1階層のチュートリアルモンスターとはいえ倒すのに苦労するのだ。

……まあ、昨日絡んできた郷原くんとかは蹴り一発で倒してたけど。



「活動可能時間ギリギリまでやろうと思ってたけど、今夜もバイトのシフトが入ってるし、コイツを倒したら終わりにしよう」



 スライムのコアを破壊し続けてそれなりに固くなった拳を構え、俺は本日最後のモンスター討伐を開始した。



 ―― ――



「はあ、はあ……これで、終わりだっ!」



 ゴッ!! パッキイイイン!!!!



「ぽ、ぽよ…………」



 ゲルが付いた拳を拭いつつ、コアを破壊されて消滅していくスライムを見つめる。

この手についたスライムのゲルも本体を倒したら消滅するんだけど、なんとなく先に拭いたくなってしまう。



「せめて魔石でもドロップしてくれれば、夕食にカップ麺が食える……」



 スライムが消滅し、消滅時に発生する光のもやが晴れていく。

するとそこには、小さな黒いカギのような物が落ちていた。



「……ん? これって、もしかして……フロアキーか!?」



 黒いカギを拾い、頭上に掲げてよく観察する。

見た目はなんというか、南京錠用のよくあるカギをプレス機でペッチャンコにしたような、平べったいカード型のカギだ。

色が黒っていうのはなんか珍しいかもしれないけど、ユグドラタワー内のアイテムだから普通も何もないし、こういうものなのだろう。



「……フロアキー、ドロップしたんだ」



 ライザーになり、ユグドラタワーの攻略を始めて約5年。

俺は遂に第1階層を攻略し、第2階層に上がるためのフロアキーを手に入れたんだ……!!



「やったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 5年分の嬉しさがこみ上げてきて、さすがに叫ばずにはいられなかった。

少し離れた所に別の初心者ライザーがいた気がするけど、そんなのも気にしていられない。

もう本当に、本当に嬉しい。



「はあ、はあ……あはははは! 叫びすぎて、酸欠……っ!」



 今日の活動可能時間の残りはあと40分ちょっとか……予定通りこれで活動終了にして、明日第2階層に行くことにしようかな。



「いや、せっかくフロアキーを手に入れたんだ。時間はあんまり無いけど、とりあえず行くだけ行ってみよう」



 俺は早速フロアキー使って第2階層へ上がることを決め、早歩きでリフトへと向かう。



「それにしても、フロアキーってこんなんだったっけ。昔、郷原くんに自慢されたときは白いカギだった気が……ん?」



 リフトへと急ぎながら黒いフロアキーを眺めていると、カギの持ち手部分に何か数字のような物が刻印されているのを発見する。

黒い素材に暗い灰色の刻印だったので気づかなかった。



「えーと……『-1』かな」



 …………。



「……ん? マイナス1? な、なんで?」



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