39話 新たな朝
「お次の方どうぞー……って、和取先輩じゃないっすか」
「おはよう、日奈多さん」
妹たちを泊めた翌朝。
一夜明けて二人とも落ち着いたのか、とりあえず実家に帰ってあげるということになり、駅に送りがてら朝食を済ませるため、近くに店を構える俺のバイト先のファーストフード店『モスドナルド』へとやってきた。
「今日昼シフト入ってましたっけ」
「いや、今日は夜から。ちょっと優雅なブレックファーストをね……」
「わーい! ソラにーちゃんのバイト先だー!」
「ソラにいがギャルと会話してる……もしかして、彼女?」
「ヒナ、騒ぐな。ルナ、普通にバイト先の後輩だから失礼な事言うな」
「なんか可愛いの連れてるっす!?」
―― ――
「和取先輩、こんなに可愛い双子の妹ちゃんがいたんすね」
「そういや話してなかったか」
朝食タイム限定のミニパンケーキとマフィンのセットを美味しそうに食べるヒナとルナを眺めながら、客席の清掃チェックに来た日奈多さんと少し話す。
「ヒナちゃんルナちゃん、うちは日奈多アオイっす。アオイお義姉ちゃんって呼んで欲しいっす」
「アオイねーちゃん!」
「アオイねえ……」
「うんうん、これで外堀をひとつ埋めたっす」
「何の話?」
「何でもないっすよ」
同性なうえに、俺よりも妹たちと年の近い日奈多さんはあっという間に仲良くなっていた。
さすが最強の現役女子高生、怖いものなしである。
「この後はタワー行くんすか?」
「そうだね。妹たちを駅に送っていったらバイトの時間まではライザー活動の予定……あっそういえば昨日、遂に地下1階層を攻略してね……」
「へーっ! すごいじゃないすか! 今度お祝いしましょうよ。メシ奢ってください」
「俺が奢るのかよ」
「ホールインワンした人が全奢りでパーティーやるじゃないすか。アレっす」
そんな感じで日奈多さんと話していた時。
ふと視線を感じて横を見ると、妹たちが何とも言えない表情でこちらを眺めていた。
「「じー……」」
「な、なに?」
「やっぱソラにーちゃんとアオイねーちゃんって付き合ってる?」
「いや付き合ってないって!」
「アオイねえ、女の顔してる……」
「ししし、してないっす!」
―― ――
「ふう、なんか朝からドッと疲れた気がする……」
俺と日奈多さんの関係をからかう妹たちをなんとか駅まで送り届け、ユグドラタワーへとやってきた。
あの年の女の子は元気が有り余ってるね本当……父親とケンカして2時間かけて兄の部屋まで押しかけてくる気力と行動力、見習いたい気もしなくもない。
「でもまあ、2人から元気貰えたというか……ちょっと気合い入ったかも」
やっぱり父さんはいまだに俺のやっていることを認めてくれていない。
ライザーなんか辞めろというのは、一向にフロアランク1の状態から抜け出せていなかった俺の将来を考えての言葉でもあるのは分かっているけど……
「今に見てろよ父さん。一流のライザーになって認めさせてやるからな」
俺は今一度気持ちを引き締めてユグドラタワーのリフトに乗り込み、新たに解放された攻略フロア『地下2階層』へと向かうボタンを押し込んだ。