22話 ボス部屋の解放条件
ユグドラタワーの地下1階層へ行けるようになって10日程が過ぎた。
俺はピクシード族の住処『グランルータ』をブラックジェットローチから取り戻すために、毎日のよう地下1階層へ通ってブラックジェットローチを討伐し、ドロップした魔石を指輪型の魔装『NULL』に与えて成長を促し、時折ピクシード族の集落で息抜きをしてふたたびブラックジェットローチと戦い……遂に、その時が。
「はあ、はあ……よしっ! 大型個体を殲滅したぞ!!」
「やったねソラ! すごいぞソラ~!!」
グランルータ周辺を徘徊する小型のブラックジェットローチを倒し、殲滅した後は中型、その次は大型と地道にやってきて、遂に最後の大型個体の討伐に成功した。
これで残るは超大型個体の親玉、ブラックジェットローチのクイーンだけだ。
「ソラ、最初に来たときよりも強くなったねっ!」
「まあ、ずっと同じモンスターの相手をしてきたから戦い慣れてきたっていうのもあるし、あとはやっぱコイツのお陰だな」
パモチに向かって右手の中指を立てて見せる。
……いやこのハンドサインはダメだな。ふぁっきゅーになってしまう。
「ソラの魔装、随分成長したねっ!」
「見た目はあまり変化してないんだけどな」
右手の中指に装着された指輪にライザーカードをかざしてアイテム鑑定を行なう。
【魔装NULL】
・起動状態:蕾Lv.10
・入手条件:地下1階層に到達し、ピクシード族と接触する
・装備効果:身体能力向上、貫通力強化
「レベル10ってことは、次に成長したら花が咲くってことか……?」
最初は種の状態だった魔装が発芽状態になり、魔石を与えてレベル10まで成長。
その後はレベル11にはならず、蕾状態に進化した。
おそらく、次のレベルアップで新たな状態に進化すると予想される。
「とはいえ、もう倒す相手がいなくなっちゃったな」
「一昨日、2度目の土の日を迎えてしまったわっ! 今ごろ親玉は産卵を終えてタマゴが孵るのを待っているはず……そしたらまた悪いヤツらがたくさん増えちゃうっ!」
ブラックジェットローチのクイーンは月に1度、産卵と孵化を行なって子供を増やす。
それを今まで苦労して殲滅してきたわけだけど、これでまたタマゴが孵化したら元の木阿弥だ。
「うーん、魔装の成長の為にあえて孵化させて倒しても良いんだけど……」
「今こそ親玉を倒すチャンスよソラッ!! ここで殺らねば漢が廃るわっ!」
「殺意高いなあ」
見た目も性格もぽわわんとしていて物理的に地に足ついてない感じのピクシード族だけど、グランルータを奪って独占しているブラックジェットローチに対しては相当お怒りらしい。
「よし、それじゃあ今のうちに倒しちゃうか!!」
「ソラ~! ファイト一発よ~っ!」
ユグドラタワー地下1階層、ついにフロアボスとの決戦だ……!!
―― ――
「……なんか、入れないんだけど」
パモチの案内で複雑に絡み合う巨大なグランルータの根の上を歩き、ブラックジェットローチの超大型個体『クイーン』がいる洞の前にやってきた。
しかし、洞の前には頑丈なツルやツタがいくつも張り巡らされ、中に入ることが出来なかったのだ。
「ここにカードをタッチするのよっ!」
「ああなるほど、そういうシステムか」
入り口の右横にある謎のマークにライザーカードを重ねて情報を読み込ませる。
なんかファンタジー世界の中でICカード決済やってるみたいでなんともいえない気分だ。
…………。
「開かないね」
「うーん、おかしいわね~」
「もしかして、まだ何か別の条件が……ん?」
入り口横のマークにタッチしたライザーカードに何か追加情報が表示されている。
「これって……」
【蜚蠊女王の洞】
・解放状況:進行不可
・解放条件:フロアランク11を達成する。
「ソラの今のランクは~……あっ」
「あって言うの傷つくからやめてね」
どうやら地下1階層のフロアボスに挑むには、地上階層の攻略を進めないといけないようだ。