16話 魔石食いの魔装
「というわけで、ソラが付けている魔装は魔石を食べて成長していくのよっ!」
「そ、そうなのか……」
ブラックジェットローチを倒して手に入れた高品質な赤の魔石を吸収した俺の魔装。
どうやらパモチの説明によると、魔石を魔装に与えることで成長が進み、装着者の能力を更にサポートしてくれるということだった。
「魔装にそんな機能があるなんて知らなかった……」
「この子がそうだってだけで、他の魔装は知らないわっ!」
「見た目は特に変わってないけどなあ……いや? よく見るとなにか文字が刻まれてるな。こんなのあったっけ」
右手の中指に装着された指輪にライザーカードをかざして魔装を調べてみる。
【魔装NULL】
・起動状態:発芽Lv.1
・入手条件:地下1階層に到達し、ピクシード族と接触する。
・装備効果:身体能力向上
「なんか、発芽してるな……」
たしか昨日確認したときは種の状態だったはず。
それに、謎のレベルも表示されてる。
これは魔石を与えていけば上がっていくものなのだろうか。
「装備効果、身体能力向上……」
「ソラに最適な魔装の効果が発現しているわねっ」
そういえば、オーダーメイド魔装とかいって変なアンケートみたいなのやらされたっけ。
つまりこの魔装は、俺が最も能力を発揮しやすいサポート条件として身体能力向上を見出したってことなのだろう。
「なんか、基礎的っていうか……もっとこう、炎の能力とか雷が出せるとかが良かったんだけど」
「基礎は大切だよっ!」
「まあ、それはそうなんだけどね」
「地盤がしっかりしてないと後々苦労することになるのよっ!」
「は、はあ……」
「でもしっかりと基礎を固めるのにも才能が影響してくるわっ!」
「うう……」
「それに、基礎だけ固めても応用が出来ないと頭打ちになるわよっ!」
「ぐはぁ……っ!!」
俺はパモチの言葉に心を痛めた。
うだつが上がらない底辺ライザーが気にしてることをズバズバと言ってくるなこの子は……
「でも大丈夫っ! この魔装を大事に育てていけばソラはちゃんと強くなっていくわっ! バンバン悪いヤツらをやっつけて、ドンドン魔石を手に入れて、グングン魔装を成長させるのよっ!」
「わ、分かりました……」
魔装が成長することで俺自身も強くなれるというなら、自分の贅沢よりも魔装の育成を優先した方が良いだろう。
しばらくはドロップした魔石は売らずに、この子(?)の餌にするのもやぶさかではない。
「はあ……まだまだ贅沢は出来ないな」
―― ――
「さあ着いたわソラッ! ここがワタシたちピクシード族の住処よっ! 仮住まいだけどねっ」
「おお……」
ブラックジェットローチを倒し、再びパモチの案内で森の中を進んでいき、しばらく歩いた所で小さな泉のある開けた空間に到着する。
泉の周りには花畑が広がり、パモチによく似たピクシード族たちが花の周りを飛び回っていた。
まるで蜜を吸うハチドリのようだ。
「あれは何をやってるの?」
「花の蜜を集めてるのよっ! ワタシたちのごはんなのっ!」
ピクシード族の住処を眺めながらパモチと話していると、俺に気付いた他のピクシード族の人たち(?)がこちらにやって来る。
「アナタがパモチの言ってたソラねっ!」
「この人おっきいわ! これならあの黒くて悪いヤツらもやっつけられるかも!」
「花の蜜は好き? こっちで一緒に食べましょうっ!」
「あっちょっと、待っ……!」
小鳥のような大きさのピクシード族でも、数十人も集まればものすごい力を発揮する。
俺一人の力では抵抗できずに住処の奥まで運ばれてしまう。
「い、意外と君たちが集まって戦えばブラックジェットローチも倒せるんじゃない……?」
「嫌よ、あんなのと戦うのっ」
「なんか黒光りしててセイリテキに受け付けないって感じねっ」
「カサカサ動いて不気味なのっ!」
「いやまあ、それは俺もそうだよ」
やっぱゴキブリフォルムのモンスターっていうのはみんな苦手なんだな。