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13話 ピクシード族



「待ってたわソラ! 無限の彼方へさあ行くわよっ!」



「めっちゃバズってるじゃん」



 地下1階層に着いた途端、どこからともなく飛んできたピクシード族のパモチに連れられてフロアの中を進んでいく。

連れられてというか、ティンカーベルみたいなのが俺の前をパタパタ飛んでる感じだけど。

田んぼの近くとか歩いてる時に途中で出会った蚊柱がしばらく一緒についてくるのを思い出した。なんなんだろうね、あれ。



「それにしてもここは凄いね。地下なのに空が高くて開放感があって、上のフロアよりも広くて自然がいっぱいで」



「そうでしょっ? 住み心地バツグンでとっても良いところなのっ!」



 地上の階層……といっても第1階層以外のフロアは人づてに聞いた内容だけど、そっちの構造はこの地下階層とは違って天井も低く、石畳の巨大迷路のような景色がひたすらに続いているだけなので、タワー内でこんな開放的な空間にいるというのが不思議な気分だ。

まるでこの階層だけ別世界というか……



「ここって、何か名前はあるの?」



「地下1階層よっ!」



「渋いね」



 特にエリア名とかは無いらしい。

彼女は自分の暮らしてる地域の名前が『地下1階層』なのに対してなんとも思ってないのだろうか。



「さあソラ、こっちこっち! こっちにレッツゴーよっ!」



「分かった分かった……それでパモチ、今ってどこに向かってる感じ?」



「ワタシたちの住処よっ!」



 どうやらこの元気溢れるパモチナビは、彼女の自宅にルート案内を設定しているようだ。

フロアの中央に鎮座する巨大な木の根の束『グランルータ』を眺めながら森の中を進んでいく。

元々パモチたちピクシード族はあのグランルータを住処としていたらしいが、今は悪いヤツ……つまりモンスターに住処を奪われてしまったらしい。



「グランルータから追いやられちゃったから、今はこの先にある泉の周りに住んでるのっ!」



「へえ……」



「今の住処もとっても良い所だけど、やっぱりグランルータに戻りたいわっ!」



 なんだろう、今のパモチたちは結構かわいそうな状況なんだけど、語り口が軽快すぎてあんまり悲壮感がないんだよな。

ピクシード族っていうのはみんなこんな感じなのだろうか。



「そういえば、パモチの言ってる『悪いヤツ』っていうのは結局なんなんだい? 俺は見たことないから少し詳しく聞きたいんだけど」



「悪いヤツっていうのは、おっきくて、黒くって、動きが早くって、とっても食いしん坊なのっ! グランルータの蜜を独占するためにワタシたちや他の生き物を追い出したのよっ!」



「グランルータの蜜?」



「とっても甘くて美味しいのよっ!」



 パモチの説明によると、グランルータの蜜というのはその名の通り、グランルータの表面に滲出する甘い樹液のことらしい。

今まではグランルータに住んでいるピクシード族たちが主食としていたが、独占するということはなく、この地下1階層に住む他の生き物たちも自由に蜜を食べられていたという。

しかし、今は件の黒くて大きい悪いヤツが独占して他の生き物を寄せ付けないようにしているらしい。



「というか、このフロアには普通の生き物が生息してるんだな」



 昨日見たフェニックス(仮)とかもモンスターとかじゃなくて無害な動物なのだろうか。

そういえばよく見るとそこら中に小さな虫や小鳥がいるな……まあ、襲われない限りは放置で良いだろう。



「あっソラ! この先は悪いヤツの行動エリアだから見つからないように静かに移動するわよっ!」



「じゃあまずは君が静かにしたほうが良いよ」



 これ、実は例の悪いヤツがグランルータの蜜を吸おうとしたらピクシード族がうるさすぎて追い出した説もワンチャンある気がしてきたんだけど。

……あと、パモチから聞いた悪いヤツのイメージが、なんとなく家の中に出るあの虫に似てる気がするんだけど、さすがに気のせいだよね。



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