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102話 ライザーの父



「やっきにく~♪ やっきにく~♪」



「ソラにい、テールスープ半分あげる……」



「あ、ああ……ってそれ、ルナが飲みきれないだけだろう」



 焼肉くいーんユグドラ駅前店。

ライザー活動を終えた俺を待っていた両親と妹たちが本日のユグドラバトルの祝勝会をしてくれるということで、みんなで焼肉食べ放題へ。

父さんも一緒なのはだいぶ久々だ。多分母さんともども、妹たちに言われてユグドラバトルの中継見てたんだろうな……



「ソラ、最近はどうなの? ちゃんとごはん食べてる? 出来合いの物でもいいけど、栄養バランス考えて食べなさいよ」



「だ、大丈夫大丈夫。クラフターみたいなこと言うんだから……」



「もぐもぐ……ホラにーひゃん、くらふらーっへなひ?」



「ヒナ、一旦食い終わってから喋りな」



「ふぁーい」



「ソラにい、冷麺半分あげる……」



「俺は食べ放題の助っ人じゃないんだが……」



 好き勝手食べる妹たちとその相手をする俺……そしてそんな俺たちを見ながら食事をする両親。

まあ、昔から家族の食事ってこんな感じだったな。



「…………ソラ。ライザーの方は、どうなんだ」



「……最近、中級ライザーになったよ。まだバイトもしてるけど、ほとんどライザー活動の稼ぎだけで食っていけてる」



「…………そうか」



「もぐもぐ、ごっくん。おとーさん、ソラにーちゃんは凄いんだよ! 前は全然ランクが上がらない雑魚雑魚にーちゃんだったけど、今はフロアランクぐんぐん上げて大活躍なんだから!」



「今日の試合も、ゴリラみたいな人に勝ってたでしょ……? あれで知名度も上がって、人気急上昇中……彼女もいる」



「アオイねーちゃんっていうんだよ!」



「あらそうなの? ソラったらそれを早く言いなさいよ~!」



「いやアオイは彼女じゃなくてただのバイト先の後輩だから……」



「…………ただの後輩を、名前呼びはしないだろ」



「そうだそうだー!」



「と、父さんまで乗っからなくていいからっ」



 ―― ――



「ふぃ~いっぱい食べた~!」



「色々食べれて、満足……」



「俺はルナのお下がりばっか食って腹一杯なんだが」



 焼肉店で散々食べて飲んで、最後にデザートを食べてシメにする。

っていうかこれ、俺の祝勝会だったんだよね?

妹の残飯処理で呼ばれたわけじゃないよね?



「…………タバコ、吸ってくる」



「もう少ししたら出るから1本だけにしなさいよー」



 母さんはちょくちょく電話してたけど、父さんはマジで久しぶりだったな。

ライザーやるって言って家出てから、ほとんど帰省してなかったし……ここ最近は、父さんに反発して帰らなかったというより、第1階層をクリアできない自分が情けなさ過ぎで会えなかったところが大きいけど。



「……実はお父さんね、30才くらいまではフリーターだったのよ」



「えっ、そうなのか?」



「お義父さん……ソラたちのお祖父ちゃんに、30までに結果が出なかったら就職するって約束して、それまでは夢を追ってたんだけど、結局うまくいかなくって。30才からだと未経験でそれなりの仕事に就くにもだいぶ苦労して……そんな感じだったから、ソラにも『夢を追うならせめて大学は出ておけ』って言ったのよ」



「そうだったんだ……」



 実際、ライザーを始めたは良いものの結果が出ずに年取って体力が落ちて引退からの就職……という人はかなり多い。

中級、上級で活躍してたライザーならまだしも初級ライザー程度の実績を評価してくれる企業は正直ほとんど無いのが現状で、30、40過ぎても高卒フリーターという元ライザーは結構いる。



「でもソラにーちゃんは今活躍してるんだし、引退してもユグドラタワー関係の会社に就職できるんじゃない?」



「あはは、そんな世の中うまくいかないって。むしろ中級ライザーになれただけでも奇跡みたいなものだったんだから」



 ライザー活動を始めてから今までの辛い数年間を経験してるからこそ、現状の上り調子を楽観視しないでがんばろう。



「…………なんの話をしてたんだ?」



「いや、父さんも大変だったんだなーって」



「おとーさんも昔は雑魚雑魚とーちゃんだったんだね!」



「雑魚雑魚は遺伝する……」



「…………お前、話したのか」



「あら、なんのことかしら?」



これにて第3章終了です!

なろうとアルファポリスでは第3章で一旦完結とさせていただきます。

カクヨムでは先行して第4章を連載中です。

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