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1話 万年チュートリアル



「はあ、はあ……こ、今度こそ……!」



 長い時間をかけて倒したモンスターが消滅していくのを見ながら、消滅後にドロップするアイテムを確認する。

消えたモンスターの跡に残っていたのは、砂粒ほどの大きさの赤い結晶だった。

これが何なのか見た瞬間分かったが、一応入手アイテムを確認。



【赤の魔石】

・品質:低

・サイズ:極小

・入手条件:1~20階層に出現するモンスターからドロップ



「またこれか……」



 和取ソラ、22才男性。職業:フロアランク1の初級ライザー。



 10年前、突如としてこの世界に現れた謎の巨大な建造物。

調査を進めた結果、内部がまるでファンタジー漫画やゲームに登場するようなダンジョンになっていて、円柱型の塔のような見た目から政府は『ユグドラタワー』と命名。



 ユグドラタワーの内部には、この世界には存在しない異形の生物『モンスター』が生息しており、このモンスターを倒すことで『魔石』と呼ばれる未知のエネルギー物質などを手に入れることが出来る。

タワー内部は階層型になっており、階層が上がるごとに生息するモンスターも強くなるが、それに比例して手に入る魔石などのアイテムも良質なものになっていく。



 ユグドラタワーが出現した当初、政府はタワーの外壁を破壊することで最上階層まで一気に到達し、国の持つ最新鋭の兵器でモンスターを倒して最高品質の魔石を手に入れようと画策した。

しかしその計画は失敗に終わった。どんな攻撃を加えようとも、ユグドラタワーの壁には傷ひとつ付かなかったのだ。



「はあ……内部に何も持ち込めないのはキツいなあ……せめて竹刀でもあればもうちょっと楽に倒せそうなのに」



 ユグドラタワーの内部にはモンスターを倒すための武器になりそうなものが一切持ち込めず、持ったまま入ろうとすると入り口で消滅してしまう。

外部から干渉できず、武器も使えない。そのため、現在タワーの調査及び攻略は個々人の手に任されている。



 このユグドラタワーを攻略する人たちの事を、高みを目指す者『ライザー』と呼び、到達階層によってランク分けされており、これを『フロアランク』という。

1階層辺りの高さなどから計算して、ユグドラタワーの最上階は100階層と仮定されており、フロアランク1~20までが初級、21~50が中級、51~80が上級、そして81以上が超級ライザーと呼ばれる。



「5年やって、フロアランク1か……さすがに厳しいなあ」



 分かっている。俺には才能が無いのだ。

ユグドラタワーが出現した子供の頃からライザーになることを夢に見て、高校を卒業してすぐにライザーとなり、タワーの攻略を開始した。

5年前、一緒にライザーになった同期は着々と攻略を進め、今も続けているやつは全員中級以上だ。

自分の才能の無さに気付いて辞めたやつ、モンスターにやられて強制的にライザーではなくなったやつはいるけど、5年も経って未だに一階層もクリア出来ていないにもかかわらず、まだライザーにしがみついているのは俺くらいだろう。



「同期はどんどん上に行き、後輩にも抜かれて……そろそろ、潮時なのかなあ」



 砂粒みたいな低品質の魔石がいくつか入った小袋を確認しながらユグドラタワーの外へ。

数時間がんばった結果がこれだもんな……全部売っても帰りに牛丼が一杯食べられるかどうかくらいの稼ぎだ。

時給換算するとため息が出てしまう。



 戦闘力を上げる為に習った剣道と空手も最低限の実力しか身に付かず、始めて数か月の中学生にも負ける始末。

身長はそこそこあるけど、どれだけ食べて鍛えても全然筋肉が付かない。

チュートリアル代わりの一階層の雑魚モンスターを倒すのにも一苦労。



「よっしゃ、遂に50階層をクリアしたぜ! これでオレも上級ライザーだ!」



「さすがリュウト先輩っす! 自分はまだ40階層のボスに手こずってますよ」



 ユグドラタワーの入り口周辺に作られたライザーの為のサポート施設、ユグドラセンター。

そこにある魔石の換金所へ向かうと、ちょうど前から知り合いが歩いてくる。

同期の郷原リュウトくんと、郷原くんを慕う後輩の越野ギンくんだ。



「や、やあ郷原くん、越野くん。攻略、順調そうだね」



「お? そこにいるのは万年チュートリアルの和取クンじゃねえか。どうだ? そろそろ二階層に行けそうか?」



「い、いやあ、ははは。今日もダメだったよ」



「はっはっは! そうだろうなあ! ……いい加減、才能ねえんだから辞めちまえよ。お前みたいなんがいつまでも一階層でウロチョロしてると同期として恥ずかしいんだよ」



「…………」



「ギャハハハ!! リュウト先輩言い過ぎっすよ~!」



「わりいわりい、つい本音が出ちまった。じゃあな和取~魔石売って金が入ったら焼肉でも行こうぜ~。あ、そんな稼ぎねえか!」



「……あはは。まあ、その内ね」



 …………。



「……くそっ」



現在カクヨムにて第2章まで先行して投稿中です!

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