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漂泊のベノス  作者: ism
【第五部・漂泊者の帰趨】

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95/116

形勢逆転

“何か”が衝突する寸前、素早く後方に退いた目隠しの男。

「…何事だ?」


爆風で巻き上がった砂煙から、ドラグガルドのマントを纏い魔法剣を携えたベノスの姿が見えた。

強い念を感じとり、マントと魔法剣が一瞬でベノスのもとに飛来したのだ。


目隠しの男を見据えたまま、一気に踏み込んで間合いを詰め、魔法剣で斬り込んだ。


「くっ!」

目隠しの男は紙一重で斬撃かわしたように見えたが、ベノスのスピードが僅かに上回り、斬りつけられた胸から鮮血がほとばしった。


その光景に一瞬気をとられた異形に姿を変えた女。

エルトロは女の隙を見逃さなかった。


翼と尻尾で4本の鎌をブロックし爪で人間態の上半身を掴むと、強烈な熱風のブレスを浴びせた。


断末魔をあげる間もなく上半身が一瞬で吹き飛び、カマキリの下半身はどしゃっとその場に崩れ落ちた。


「オレを相手によそ見なんて随分余裕じゃないの」

そういうとエルトロはすぐさまベノスと目隠しの男の方へ身体を向けた。


ベノスも目隠しの男に刃を向けたまま構えを崩さない。

完全に形勢は逆転、次の一手を誤れば男の命はないだろうという状況だった。


わずかな睨み合いの後、男の後ろに空間の裂け目が現れた。

「…一旦退かせてもらおう」


目隠しの男は静かに裂け目に身体を埋め消えていった。


罠の可能性を考え、ベノスもエルトロも追撃を加えることなく敗走をそのまま見逃した。


「大丈夫か?!タウザール!スリッグス!」

急いで傷を負った2人に駆け寄るベノスとエルトロ。

「すぐ応急手当てをする。ロンボルトの様子を見てくれ」

人間態に戻ったエルトロはすぐさま回復魔法をかけだす。

「無事か?!ロンボルト」

ベノスが声をかけると意識はあるようで

「あ、ああ…オレは吹っ飛ばされただけだから、なんとか。念の為に中に胸当てを付けていて助かった」

ベノスの肩を借りてヨロヨロと立ち上がったロンボルト。


「2人は大丈夫か?!」

回復魔法をタウザールとスリッグスにかけるエルトロにロンボルトは声をかけた。

「とりあえず、傷を塞いで出血を止めた。急いで村に運ぼう」

エルトロは再びドラゴンの姿になると、4人を素早く背に乗せ村に向かって飛び立った。



━━ヘキオン村の遥か南東。大陸からも遠く離れた絶海。

強力かつ巨大な結界に覆われ、普通の人間では近づくことはおろか目視することもできない島があった。


かつて異界より来訪した知恵を持つ竜達の末裔が住む国・ドラグガルド。

結界のみならず、海沿いには堅牢な監視塔が建っており、不逞な侵入は絶対に許さないという国の意思が伺える。


監視塔内、幾つもの念話用の魔法鏡が並んだ部屋にふくよかな女性がひとり監視の任についていた。


艶やかな髪を指先でいじりながら、最新の美容書を読むその女性はため息をついて愚痴をこぼした。

「…はぁ〜あと3時間も…退屈で死にそう」



━━次の瞬間、爆音とともに凄まじい閃光が監視塔の前に現れた。


「きゃあぁああぁあっ!!」

女性は悲鳴をあげながらイスから転げ落ちる。


閃光とともに姿を現した“それ”は、部屋の中を窓からのぞきながらひっくり返った女性に声をかけた。


「だぁっはっはっは!随分ヒマそうじゃねぇか!」


白金の装甲を纏った巨大なドラゴンは豪快に笑った。


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