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漂泊のベノス  作者: ism
【第五部・漂泊者の帰趨】

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村の復旧へ

ハーズメリア戦士団が村の復旧に協力していると聞き、しばし考えるベノス。


「ん〜別にほっときゃあいいんじゃない?ハーズメリア王国府自体、無いも同然なんだしさ。その方々がベノスをとっ捕まえたとして、じゃあどこで誰が裁くの?って話だし。王都に連行しても今は無人の廃墟だよあそこ」

とエルトロはあっけらかんに話す。

「まあ確かにそうだが、村の大半の人間はベノスの過去を知らない。戦士団の人間に下手に騒ぎ立てられても困るしな」

ロンボルトの心配をよそにタウザールが口を出す。

「ガタガタぬかすやつがいたら俺が黙らせてやるさ。エルトロの言う通り、気にしねぇでベノスは堂々と村に帰ったのをみんなに報告すりゃいいんだ」


ロンボルトはベノスの様子を見て告げる。

「…ベノスが判断する事だ。任せよう」


黙っていたベノスが口を開く。

「…行こう。過去が露呈する事を恐れ隠れていては何をしに村に戻ったのかわからないからな。戦士団についてはどういう連中なのか俺もあまりよく知らないんだが、もし村のみんなに迷惑がかかるようなら戦士団の判断に従うし、村も去ろう。もちろん、充分な復旧作業が済んだ後にな」


それを聞いてエルトロは

「潔い良いなぁ。…ただ。もしその戦士団がベノスにムチャなことするようなら悪いけど俺は黙ってないよ?王子からベノスは命がけで護るよう言われてっからさ」

とベノスに告げる。笑みこそ浮かべているが、もし実際ベノスに何かあった場合、エルトロは必ずそれを実行するだろうとロンボルトもタウザールも感じた。


「こんなに心強い味方はいねぇな。そんじゃ村に行くか」タウザールがそう言うと、一同は村の中心地に向かって歩きだした。



──ヘキオン村の中心地の大広場。

殆どの村人は家を失い、大広場で避難生活を余儀なくされている。とは言え、他の集落に比べてヘキオン村はエンリスやアフのお陰で圧倒的に生存者が多く、殆どが無傷か軽傷だ。怪我人の看病や物資の調達、焼けた家屋の撤去にあたれる者が多数いるため復旧作業はかなり順調だ。

噂を聞いて近隣の村や町の寄る辺のない生存者達も多く集まり出していた。


当然、村長オーマックと息子アデットは大忙しだ。

食料や薬の配布など、2人は休む間も惜しみ大広場で村人達に気を配っていた。

「アデット、ベノスが戻ったぞ!」

大広場に到着したロンボルトらは忙しく動き回るアデットに声をかける。


「おおおベノスーッ!よくぞ戻ってきてくれた!心配したぞ!」

ベノスを見るや体当たりぎみにハグをするアデット。

「はは、心配かけてすまん。忙しそうだな」


さらに村長オーマックも現れ

「おおー戻ったかベノス!やることは山ほどあるんだ!さあさあみんな早く手分けして作業にあたってくれ!」

とベノス達を急かした。


「で、何から手をつけりゃいーのよ」

というタウザールに

「もちろん男は全員、焼けた村中の家屋の撤去だ。ブランさんが仕切ってるから指示に従って取り掛かってくれ」

と言うとアデットとオーマックは再び村人達の相手に戻っていった。


村人や避難者で騒がしい大広場を離れ、ぞろぞろと木こりのブランがいる村人の家屋の並ぶ通りに向かうベノス達。

村の惨状を見て、ベノスは

(こんな状況であれだけの村人が生き残ることができたなんて奇跡だな。…いや、エンリスやアフ先生が奮闘してくれたお陰か)

とエンリスとアフのことを思い出し、早く、なんとかして先生とエンリスの行方を追わないとな….と、1人考えていた。


歩いてくるベノス達に気づいたブランは手を振り声をかける。

「おー!ベノス帰ったかぁ!待ってたぞぉ!」

ベノスも笑みを浮かべ

「やぁブランさん!待たせて悪い、すぐ作業にとりかかる!」

と答えた。

「おーし、そんじゃあ魔法で…」

と張り切るエルトロをベノスは

「少し人目が多い。辺りにひと気が無くなったら頼む」

と制止。

「あれ、そうなの?魔法を使った方がすぐ終わるのに」

といいつつエルトロもベノス達と同様に手作業で瓦礫の撤去にあたることになった。


ロンボルトは撤去作業を行いながら、ブランに訊ねた。

「ブランさん、手を貸してくれているハーズメリアの戦士団は今どの持ち場についているんだ?」

ロンボルトの質問に

「ああ、彼らならこことは真反対の西側の家屋を片付けて貰ってるよ」

と戦士団のいる方向を指差し答えるブラン。

「そうか。じゃ今のところあまり顔を合わすこともなさそうだな」

と言うロンボルトに

「なんだ、挨拶でもしとくかい?」

とブランは笑いながら返した。


「ま、必要ないだろう」

ベノスやエルトロの方をチラリと見てロンボルトも言葉を返す。


そこへ2人の男がブランの方に歩いてくる。

「おやおや、ウワサをすればなんとやらだ。戦士団の方が来なさったぞ」

そう言うブランに、戦士団の男達は声をかける。

「ブラン殿、あちら側の焼けた家屋の撤去なんだが思ったより早く済みそうなんだが…」


かつてベノスが所属していたハーズメリアの騎士団と、戦士団は基本的に交流は一切なかった。戦闘に対する信条に相反するものがあり、団員達は無用な衝突を避けるため 互いに避けあっていたのだ。

そのため、ベノスは戦士団の人間を誰一人知らない。

戦士団の中にもベノスの顔を知る者は恐らくいないだろう。ラブロウとの件で名前くらいは聞き及んでる者がいるかもしれないが。


そういうこともありベノス特に警戒することもなく、やってきた戦士団2人の顔を視線を向けた。


しかしその顔に、ベノスは驚きのあまり立ち尽くした。


2人は、騎士団少年部での無二の友人・メキシオとスラドルだった。


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