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漂泊のベノス  作者: ism
【第五部・漂泊者の帰趨】

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再会

メレラとの戦いから3日後。


ベノスとエルトロはヘキオン村付近に到着し、地上へと降りた。

「随分離れた所でおりるんだな。村の中心地まで行けばいいじゃん」

ドラゴンの姿から人間態に戻りながら言うエルトロに、ベノスは

「ついこの間ブラックドラゴンに襲われたばかりだ。竜の姿の君と舞い降りて村のみんなにいきなり警戒心を抱かせてしまうのは避けたい」

と答え、ヘキオン村から少し離れた森の中から村に向かって歩き出した。


小一時間ほど歩き、村外れまでたどり着いた。

モンスター討伐団“ヘキオンズコープス”のベースハウスがあった辺りだ。


焼け落ちた建物から物を運び出す数人の人影が見える。

「あれは…」

人影が、足早に近づくベノスに気づいた。


「…ベノス?!ベノスか!!」

ロンボルトとタウザールは、全身煤だらけなのも気にも止めずベノスに駆け寄ってきた。


「必ず生きて戻ってくると信じてたぞ!」

ロンボルトは煤で真っ黒になった手でも構わず、ベノスの手を強引に強く握手した。

「ああ、お互い無事で本当によかった」

ベノスもロンボルトの手を固く掴み、笑顔で再会を喜んだ。

「待たせやがって!生きてたんならもっと早く戻ってこいよ!」

憎まれ口を叩くタウザールに

「ふふ、すまんな。色々とやる事があったんだ」

とベノスもいつものように軽い調子で答えた。


「そうだ!ジャルガさんの所から戻ったスリッグスとティアミーから聞いたぞ!王都で何があったんだ?!」

はやるロンボルトにベノスは

「ああ、その前に…ここまで同行してくれた新たな友人を紹介する。エルトロだ」

とエルトロを紹介した。

「イェーイ、はじめまして〜しばらくベノスの護衛を務めるエルトロでーす。あ、呼び捨てで全然構わないし仲良くしてくれよお二人さん⭐︎」

「ご、護衛?!」

声を揃えて驚くロンボルトとタウザール。



ザンデロスとの出会い、ドラグガルド下臣団、ハーズメリア王都での戦い、そしてモナルカとの因縁…ベノスはそれらを順を追って説明していった。


「──ドワーフの遺跡に行くキッカケになった闇の者達…“モナルカ”には現在も目をつけられている。ただ以前と違い、奴らに匹敵する力をもつエルトロが居てくれている上、俺自身も新しい武器を手に入れた。倒せるかどうかはわからんが少なくとも奴らの急襲に対処できるだろう」

ベノスの今日に至るまでのこの2週間ほどの出来事に、ロンボルトとタウザールはただ驚くばかりだった。


「異界の竜の末裔の国・ドラグガルドか。そんな国が存在するとは…。実に興味をそそられる。世界はまだまだ知らないことだらけだな。それより何より、竜の戦士達とともに王都に赴き魔王メレラを撃退したキミの胆力はもう、驚嘆の一言に尽きる」

未知なるものへの興味、そしてベノスの活躍を褒め称えるロンボルト。

「いや、なんかもう想像の上を行き過ぎてわけわかんねぇや。疑ってる訳じゃねえがなんか現実味がなさすぎて…」

5体の竜と一緒に魔王に立ち向かい国を救った。まるでお伽話のようでベノスとともに沢山のモンスターを相手にしてきたタウザールでさえ、すんなり受け入れるのがなかなか難しかった。


「あらぁ、タウザールさんイマイチ信じきれない?よし、じゃあ特別に見せて差し上げよう」

エルトロはいたずらっ子のようなニヤけた顔をすると魔力を高め出す。

「おい、エルトロなにを…」

というベノスの言葉も聞かず突如、ドラゴンの姿に変化するエルトロ。


タウザールとロンボルトは驚きのあまりその場に尻をついた。


「あの焼けた落ちた家の材木片の撤去中だったんでしょ?そんなら…」

魔力をこめた翼を羽ばたかせると、凄まじい上昇風で焼けた材木が一気に宙を舞う。

「えっ〜と、炭化したやつとなんとか再利用できそうなやつにわけるか」

というと上空で魔力の風が焼けた材木を選別し出し、バラバラと落下してくる。

口をあけてただその光景を見つめる一同。


瞬く間に焼け崩れたベースハウスがあった場所は更地となり、傍らには完全に炭になったものと部分的に焦げた材木が分けられ積み上がっている。


人間の姿に戻ったエルトロは取り出した櫛で髪型を整えながら

「さ、どーだい?」と微笑みながら言った。


ドラゴンの姿もさることながら、その魔法の力に圧倒されたタウザールは一言、

「お、おう…」と答えるしかできなかった。


「全くなんと言っていいのか…確かにこんな途轍もない力を持った者が5人もいれば、メレラも倒せるだろうな」

ロンボルトもエルトロの力を目の当たりにしてあらためてベノスの話に誇張や嘘偽りなど一切ないと感じた。


「…まぁ、瓦礫が片付いて大事な地下室への道がひらかれて助かった。ありがとうエルトロ」

ベノスはエルトロのパフォーマンスじみた瓦礫の撤去に素直に感謝した。というのもベノスもロンボルトも、地下が無事かを一刻も早く確認しておきたかった。

ヘキオンズコープスのベースハウスは上物より地下室こそがメインスペースであり重要な物はそこに仕舞い込んでいるからだ。


ベノス達は早速、地下室を確認する。

「おお!地下のものは丸々無事だぞ!」

ロンボルトは胸を撫で下ろす。

「ベースハウス改築ん時に、万が一に備えてこっちも堅牢な造りに直しといてよかったなぁ!」

タウザールも地下室の状態に喜びを露わにした。


「いやぁこんなに早く地下室の確認が出来るとは思わなかった、ありがとうエルトロ!」

ロンボルトの感謝の言葉にエルトロも笑みを浮かべ

「ははは、お役に立ててなにより」

と返した。


「よーし、じゃあとりあえずここは置いといて村に戻ろうぜ。アデット達も焼けちまった村の家屋の撤去作業に追われてるだろうしな」

と言うタウザールに、ロンボルトはある事を思い出し付け加える。

「ああ、実は偶々通りかかって村の復旧作業に手を貸してくれている人達がいるんだが…ベノス、君は村には行かない方がいいかも知れん」

「…?どんな連中なんだ?」

ベノスの問いにロンボルトは答える。


「ハーズメリア王国の戦士団だそうだ。ブラックドラゴン襲撃の際、王都を離れていて難を逃れたらしい」


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