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漂泊のベノス  作者: ism
【第四部・王都決戦編】

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現れた巨人

キアヒナの合図とともに、研究室の中央に描かれた魔法陣にむかって数人の魔導士達が防御結界の中から魔力を込めた手をかざす。


ブォォン…という低く響き渡る音と共に魔法陣の上の虚空に真っ黒い穴が現れる。穴は次第に大きくなり、不死鳥の姿となったキアヒナが丁度通れるくらいまで広がった。


穴から、薄っすら輝く人…いや“巨人”の姿が確認できる。

ネネルが遠隔視で最後に見たラブロウの魔力殻装は、ラブロウの体の軽く10倍以上には膨れ上がっていたが、現在はさらに大きくなっているように思える。

魔力殻装からの攻撃を警戒しラブロウが浮遊する位置からかなり遠くに穴を開けたがそれでも油断はできない。


キアヒナは大きく羽ばたくと、異空間の穴の中に突入。

キアヒナの身体はネネルの手から伸びる魔力の縄と繋がっている。不測の事態が生じた時、保護しながらすぐにこちらへ引っ張り戻す為のものだ。


異空間に入った瞬間、キアヒナは凍りつくような極低温と強烈な空間圧を感じた。普通の人間が無防備に足を踏み入れればたちどころに凍りつき粉々に砕け散るだろう。


ゆっくり異空間を進むキアヒナを、穴の外から固唾を飲んで見守る魔導士達。


近づいてくるキアヒナの魔力を感じ、ラブロウの巨人型魔力殻装はゆっくりと身体を起こす。水晶のように透けた巨人の心臓にあたる位置には意識のないラブロウが浮遊しているのが見える。


「ラブロウ…私よ。わかる…?」

巨人は不死鳥姿のキアヒナをジッと見つめる。


緊張が走る研究室。

祈るように見つめるネネル。

「お願い…ラブロウ…キアヒナ…」


少しずつ距離を詰めていくキアヒナ。


──次の瞬間、巨人の目から放たれた光線がキアヒナの翼を貫いた。


さらに光線が2発目、3発目とキアヒナに撃ち込まれキアヒナの魔力殻装はボロボロと少しずつ剥がれていく。


「キアヒナ!!」

ネネルは瞬時に魔法の縄を縮め、キアヒナの身体は凄いスピードで穴の入り口まで引き寄せられる。

だが巨人もどう推進力を得ているのかわからないがぐんぐんこちらへ迫ってくる。

ネネルは魔力殻装が失われそうなキアヒナをギリギリで救い出すと魔導士達に叫ぶ。

「早く!!穴を閉じて!!」


慌てて魔力を集中する魔導士達。

急速に小さくなっていく穴。

だが巨人は異空間の中から穴のふちを掴み、穴が塞がるのを力ずくで阻止しようと凄まじい力で穴をこじ開ける。


「バカな!こんなことが…!」

魔導士のひとりが驚き声を上げる。


ネネルは気を失っているキアヒナをなんとか担ぎ上げ、

「全員逃げて!」

と大声で全員に避難を促した。


巨人は穴を突き破り、そのまま研究室の壁もぶち破って地上に降り立つ。

巨人が飛び出したことで研究室は階層ごと崩壊、研究室は塔のちょうど真ん中辺りにあったため塔の上半分も崩落し始める。


防御結界のスペシャリストであるネネルはキアヒナを抱きかかえ結界で護りながら、さらに魔力を全解放して塔の中にいた魔導士達ひとりひとりに防御結界をはる。


轟音を響かせて塔は崩れ落ちていくが、みんな球形の結界に護られていた為崩落に巻き込まれて瓦礫の下敷きになってしまったものは誰一人いなかった。


キアヒナを抱えたネネルも結界ごと浮遊落下しながら着地。大地に降り立ちじっと佇む巨人を見上げる。

その姿は鎧を着た騎士のようであり、体長は20メートルを越える。


「なんてこと…」

キアヒナに攻撃を加えてきた巨人と化した光の勇者に、絶望的な感情をいだくネネル。


警戒し逃げる隙を伺うネネルや魔導士達。だが巨人はそれらに目もくれず何かを探すように頭だけを左右に動かす。

そして西の方角に何かを察知したのかそちらを見据えたまま制止。

すると突然、巨人の身体が一瞬で巨大な球体と化す。


宙に浮かぶ球体は、先ほど巨人が見据えた方角の方へ緩やかなスピードで飛翔していく。


ネネルや魔導士達はただただその光景を見ていることしか出来なかった。



──ハーズメリア王都に程近い山岳地帯付近まで飛行してきたベノスとザンデロス、下臣のデズオン率いるドラグガルドの精鋭部隊一行は、ブラックドラゴンに気づかれぬようかなり離れた場所で地上に降り徒歩で林の中を進む。


デズオンが全体にはっている結界はこちらを認識させなくする効果があるようで、空を飛び回る無数のブラックドラゴンがこちらに気づくことはなかった。

戦って負けることはまずないが、相手にしていてはキリがないとの理由からの徒歩移動だった。


あるところまで来ると立ち止まり、デズオンが案内する。

「さあ、こちらです」

まるでカーテンように木と木の間の“空間”をめくると、そこには広々とした部屋があった。

魔法で作られたスペースらしく、簡易なテーブルや椅子、様々な武器や荷物、寝袋などが置かれている。


「まずキアヒナと遠話だ。通信できる鏡面はあるか?」

「は、すぐに準備を。と、その前にベノス殿に手短に自己紹介させていただいても?」

「お、確かにまだ2人を紹介していなかったな」

とザンデロスが言うと、街でもそうそうお目にかかれないような、美しい女性がベノスに挨拶をする。

「ベノス殿、キーラと申します。この者はエルトロ。お見知りおきを。わからないことがあれば何なりとお尋ね下さい」

「ああ、こちらこそ世話になりますキーラ殿」


髪を逆立てた男、エルトロが軽い口調で話す。

「ベノス殿よろしくぅ〜。なに?ベノス殿って剣士なのぉ?」

くだけた態度に少し驚きはしたものの、ベノスはしっかり言葉を返す。

「あ、ああ、よろしくエルトロ殿。そうだな、剣士と言われればそう…」

と言葉が言い終わるのを待たず、エルトロは瞬時に剣を抜きベノスに斬りかかってきた。


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