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漂泊のベノス  作者: ism
【第四部・王都決戦編】

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ドラグガルドより来たる竜

「お久しぶりです、王子」

ディアボリカを警戒しつつ、4体のドラゴンの内の1体がザンデロスに声をかける。


「デズオン!お前らどうやってここが…」

「ソザリアのキアヒナ殿より王子がメレラを追い消息を断たれたとの知らせを受け、ドラグガルドより精鋭のみで捜索に参りました。王子が生まれたてのブラックドラゴンどもを相手に遅れをとるはずはなかろうと…王子であれば必ずハーズメリア王都に向かわれるはずであろうと考え、王都近辺まで先回りし王子の魔力が現れるのを待ちずっと探知しておったのです。読み通り王都まで来られた王子を見つけることができ、安心しました」

デズオンと呼ばれた先頭の一際屈強なドラゴンはザンデロスに丁寧に説明をする。


「キアヒナが…。すまん、こちらから無事を知らせる“遠話”を行う手段がなくてな」

ザンデロスはキアヒナのことを思い出し、無鉄砲にメレラの後を追い心配をかけてしまったと数日の前のことを振り返った。


「後から後から次々と…本当に邪魔だわ」

冷たい表情を崩さないまま苛立った言葉をはくディアボリカ。

「モナルカの女よ、覚悟せい。ここにおるのは王子を筆頭にドラグガルド最強格の面々。どうあがいてもお主ひとりに勝ち目などないわい」

デズオンらはディアボリカにジリジリと詰め寄る。


「…そうかしら?」

その言葉に呼応してデズオン、ザンデロス達の周囲に無数の小さな空間の裂け目が浮かび上がる。

「皆の者、くるぞ!」

デズオンの呼びかけと同時に、裂け目から漆黒の刃や槍の鋒が一斉に飛び出した。

だがドラゴン達は巨体に関わらず素早く反応し、爪や牙、尻尾や角でそれらを叩き折る。


ザンデロスは人間体のまま何なくいなすが、ベノスの後ろに空いた巨大な空間の裂け目に気づくのが僅かに遅れた。

「ベノス後ろだ!」

ベノスの後ろの裂け目から数十の黒い腕が伸び、今にもベノスの身体を掴んで引き摺り込もうとしていた。

ザンデロスの言葉に一瞬で反応したベノスは振り向き様に掴みかかってきた腕を剣で斬り散らし、後方に退く。


全員がほんの一瞬目を離した隙に、ディアボリカの身体はすでに空間の裂け目の中にあった。

「ざーんねん…また会いましょ♪ベノス…」

ドラゴン達はディアボリカに向かって一斉に火炎や雷撃のブレスを放つも裂け目はすぐにピタリと閉じ、ブレスは宙で霧散した。


「ちっ…逃げられちまったか」

ザンデロスは残念そうに呟く。

「30年前もそうでしたが、あやつらの次元攻撃は厄介ですな」

そう言いながらデズオンら4体のドラゴンは竜化を解き、人間体に姿を変える。最も屈強な姿をしていたデズオンは小柄で丸っこい体型の白髭をたくわえた老人であった。


「しかしベノス、面倒な女に惚れられちまったな」

「まったくだよ」

事態は深刻ではあるが軽いやりとりをするベノスとザンデロス。


デズオンらはザンデロスの前に跪き、あらためて再会の挨拶を行う。

「王子、ご無事でなにより。先ほども申した通り、不測の事態に見舞われておられようと、王子ほどのお方であれば必ずここまで来られると我々信じておりましたぞ」

「おう、心配かけたな。彼はベノス。この一週間、ここまで共に旅を続けてきた。右も左もわからぬ地で随分世話になってな。礼に俺の装備を譲り渡した」

ザンデロスは簡単にベノスとの経緯を説明する。


「左様でございますか!私はドラグガルド王家下臣、デズオンと申します。王子の様子を拝見していても信用のおける御仁であるとお見受け致しました」と、デズオンは丁寧にベノスに向かって話す。


「デズオン殿、俺の方こそザンデロス…いや、王子には命を救われた。譲り受けたこの剣も俺には勿体ないくらいの代物…」

「ははは、急に畏まるなよベノス。それにあんなのにつけ狙われてんだ、もっといい武器があってもいいぐらいだ」

そう話す2人に、

「王子の仰る通り。どういった経緯でベノス殿に狙いを定めたのか存じ上げませぬが…彼の者どもは狡猾で執拗。必ずまた姿を現すでしょう。対策を講じる必要があります」

とデズオンは助言する。


下臣4名の内の、体格の良いスキンヘッドの男がベノスとザンデロスに声をかける。

「ベノス殿。わたくし、ルドレオルザと申します。王子と共に我らが現在仮の拠点としている場所へ向かい、一緒に戦いに備えましょう」


そこへ騒ぎを聞いたのか、マイザが部下を引き連れ様子を伺いに来た。


「ベノス!今こちらの方から真っ黒な渦や雷鳴、火の手が上がっていたが…?!」

遠目からもディアボリカの黒い魔力や、ドラゴン達の強烈なブレスが見えていたようだった。


ベノスは笑顔で

「大丈夫だ!何も心配はない!」

と答える。その様子を見たザンデロスは

「いい再会が出来たようだな。じゃあ行くとするか!」

と言うや白竜の姿に変身。他の4人もすぐさまドラゴンに変化した。

「うわぁあ!?なっ…!ドドドラゴン?!」

驚きのあまり腰を抜かすマイザとその部下達。


「じゃあな兄さん!またいずれ会おう!」

ザンデロスに目配せし、背に跨るベノス。

ベノスを乗せた白竜のザンデロスと、4体のドラゴンは猛烈なスピードで飛び去っていった。


「ママママ、マイザ様!亡くなられたと聞いていた弟君が

…ご、5体ものドラゴンとともに…これは一体…?!」


「さっぱりわからん…私は夢でも見ているのか?」

マイザ達はただ呆然とその場に座り込み。しばらく立ち上がることができなかった。



──魔法郷ソザリア・研究室。

「…やっぱり危険ですキアヒナ。どうしてもやるんですか?」

ネネルは心配そうにキアヒナに問いかける。


「準備はできた。このままいつまでも躊躇してても埒があかないわ」

そう言うとキアヒナは魔力殻装を行い、巨大な不死鳥のような姿に変化する。

「5分以内。さあ、異空間に通じる穴を開けて!」


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