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漂泊のベノス  作者: ism
【第四部・王都決戦編】

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メレラの野望

ブラックドラゴンの襲撃により炎に包まれたヘキオン村から遠く離れた森の中の小さな湖のほとり。

ベノスとザンデロスはそこでしばし身体を休ませていたが、ヘキオン村のあまりの惨状に、ベノスは一睡もできずに朝を迎えた。


「…ベノスよ、これからどうする?昨夜も話したがあの炎はしばらくは消えることはない。ここらで鎮火を待ち、火が消えたら村人達の弔いをするか?俺も魔力が戻るまでは時間がいる。できることがあれば何なりと手を貸すが」

ザンデロス自身も一刻も早くメレラの元に向かい一矢報いたい気持ちでいっぱいだったが、ベノスを捨て置いて離れることはできなかった。


「ご機嫌よう、世界の諸君!」

突然、声が辺りにこだまする。

「な!なんだ?!」

すかさず身構えるザンデロス。ベノスも驚き辺りを見回す。

澄んだ湖の水面に、ザンデロスの身につけた美しい腕輪の表面に、ベノスが抜いた短剣の刀身に、身の回りのあらゆる鏡面にある人物の姿がうつしだされる。

真っ白い顔に、濃い紫の瞳と唇。深い青色の長い髪。寒気がするような妖しくも美しい姿だった。


「メ、メレラ!!」

ザンデロスはその姿に向かい声をあげる。


「私は魔導士メレラ。昨日は様々な場所で、多くの人間が見たことだろう。我がブラックドラゴンの群勢を。そして身をもって体験しただろう、私たちの力を」


「どういうつもりだ?!」

メレラを睨みつけるザンデロス。


「数日前、我が配下が命を賭して諸君らの希望たる光の勇者を虚無の異空間に葬ってくれた。そのおかげで強い光の力の影響がなくなり、産まれたばかりのブラックドラゴン達が無事に力強く飛び立つことができた。当初の計画では各国々に分散し送り込む予定であったが…有能な配下の魔人達をことごとく退け、我が支配領を解放するなど、光の勇者の幾たびにわたる邪魔だてに私も大変な憤りをおぼえていた」

メレラは演技じみた不愉快な表情を浮かべた後さらに続ける。


「故に計画を変更し、光の勇者ラブロウの所縁の地であるハーズメリア王国には新たな拠点の礎となってもらった。本日より、このハーズメリア城から各国々に侵攻を再び開始する。自国の軍に自信のある国や、腕に覚えのある戦士たちはどんどん挑んできてもらいたい。これまで光の勇者などというものの相手ばかりをさせられてきたが、私はもっと沢山の命と“遊びたい”のだ!」

メレラは満足そうな表情で全世界に対し宣言を行った。


「遊ぶだと…?!ふざけやがって!!」

怒りに震えるザンデロス。


「さて…侵攻の前に少し余興を行うとしよう」

そういうと、メレラの手下であろう黒衣の者達がある人物を引っ張ってきた。ハーズメリア国王と王妃だ。


ベノスも国の祭典の折、騎士団の末席から謁見を行ったことがあるため顔や姿はよく知っている。あの気品と風格ある国王と王妃がこんな魔導士の足元にひざまづかされるなんて…。ベノスには衝撃的な光景だった。


「何か言うことはあるかね?ハーズメリア国王よ!」

メレラの言葉にハーズメリア国王は答える。


「ハーズメリア国民、そして諸国の統治者ならび民衆たちよ。歴史あるハーズメリアをこのような形で奪われてしまい、すまない。…いや、この無念、言葉では到底言い表せぬ。…勇気ある者達よ!必ずやこの邪悪な輩を打ち滅ぼし…!」

言葉の途中、メレラの指先から放たれた魔法が国王と王妃の胸を貫いた。2人はがくりと息絶え倒れた。


「…くくく。いかがだったかな?ハーズメリア国王の最期のメッセージは。それでは諸君、いつか相対す日が来るのを楽しみにしているぞ」

メレラは妖しい笑みを浮かべながら、あらゆる鏡面にうつしだされた一方的な“遠話”は途絶えた。


ソザリアの中央塔ではキアヒナら魔導士達が、イスタンド王国の支援団の仮住まいではピットーらラブロウ支援団の面々が、メレラの全世界への宣戦布告を見ていた。


一方ザンデロスは、すっと立ち上がり馬に乗る準備をはじめる。

「すまんベノス。あんなものを見せられてはとてもじゃないがじっとなんてしておれん。悪いがひとりでハーズメリア城に向かわせてもらう」


その言葉にベノスも立ち上がる。

「…俺も行く。同行したとて、アンタと違いブラックドラゴンやメレラには到底手も足も出ないが…できることはなんだってやってやる」

ベノスにも強い覚悟が宿っているようだった。

そんなベノスにザンデロスも応える。

「よし。城を目指してとにかく少しでも先に進もう」


2人はまだ疲労が残る身体をおして馬に乗り、ハーズメリア王都へ向かう行路を進んで行った。



──ヘキオン村から少し離れた山中。標高が高く、ヘキオン村を一望できる場所だ。

生い茂る木々の間から数人の男女が辺りの様子を伺いながら顔をだし、燃え続ける村を見おろす。

「くっそ…全く火の手が収まる気配がねぇ。どうするよロンボルト」

「子どもや老人、怪我人も大勢いる。鎮火を待つのは諦めてもう少し落ち着ける場所に移動しよう。どこかいい場所は?タウザール」

「少し山を歩かなきゃいけねぇが、狩りのあとよく休憩してた開けた場所がある。そこに行こうぜ。ティアミー、薬になりそうな植物は調達できそうか?」

「大丈夫。薬効のある草花はこの辺いっぱい自生してるから」

タウザールとロンボルト、ティアミーはそう言うと、なんとか逃げおおせた村人達が集まる森の中に戻っていった。


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