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漂泊のベノス  作者: ism
【第四部・王都決戦編】

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行方

「王子?!常人を超越した力の持ち主であることは承知していたが、高貴な身分の方だったとは…大変失礼した」

確かに良く見ると、衣服は戦闘による綻びや汚れはあるもののシンプルだがしっかりとした縫製かつ気品のある王族が纏うような冒険仕様の衣服だった。態度をあらため向き直すベノス。


「いや、気楽に接してくれ。仰々しいのは苦手でね。普通にザンデロスと呼び捨ててくれて構わん」

ザンデロスがそう微笑むとベノスは肩の力を抜いた。

「俺は…ベノス。モンスター退治を生業にしている。新たな武具を求め遠方に出向き、ハーズメリアにある村に戻る途中だった」

ラブロウと共に戦いを続けていた者にはっきり名乗るのはいささか躊躇したが、一国の王子に対し偽名を名乗るのもためらわれたためベノスは腹をくくった。


「そうか。ベノス、何か礼がしたい。…とは言え魔力が尽き竜化できず誰とも連絡がとれん今の俺に出来ることもそうないが」

「いや、貴方が偶然ここに飛来しなければドラゴンに殺されていた。礼を言いたいのはこちらの方だ」

ザンデロスの感謝の言葉に返すベノス。


「戻る村はここから遠いのか?」

そう尋ねるザンデロスに

「そうだな…人の足なら夜明けには着くと思うが」

夜空を見上げてベノスは答えた。


「馬なら用意できる。少し待っててくれ」

ザンデロスは額に指を当て目を閉じて念じる。微弱な魔力がザンデロスから放たれているのがベノスにもわかった。


念ずること数分。遠くから馬の蹄の音が聞こえてくる。

「お、来たか」

数頭の馬が方々からベノス達のもとに駆け寄ってきた。

鞍をつけたどこかで所有されていたであろう馬から野生の馬まで様々だ。


「2頭でよかったんだが…魔力を使いすぎて制御もままならん」

ザンデロスは魔力のコントロールがままならない今の状態に歯痒さを感じた。

「すごいな。こんなことが出来るのか」

ベノスは素直に感心した。


「こいつに乗れば少しは早く着けるだろう。ベノス、悪いが村に到着したあと、道を教えてもらえんか?ハーズメリア王族の居城があるだろう?メレラとドラゴンどもはきっとそこだ。俺はひとりでそこに向かう」

「そんなことならお安いご用だ。だが…」

ベノスは中で突如、薄っすらと抱いていた不安が大きさを増す。

ヘキオン村は無事だろうか…俺のようにブラックドラゴンの襲撃を受けているなんてことは…。


「どうした?」

「いや。それより数時間馬を走らせるが、今の身体で馬上は問題ないのか?」

ベノスに問われたザンデロスは

「魔力が戻るまで数日かかるだろうが、身体の傷は手当てのおかげで動かせるくらいには回復している。お前さえ大丈夫なら先を急ごう」

と答えた。

「わかった。では行こう」

2人は鞍を乗せた馬に跨ると夜道をかけて行った。



──魔法郷ソザリア・善き魔導士達の拠点たる中央塔。

数日前まで魔導士メレラに占拠されていたが、ブラックドラゴンの大群と共にメレラが何処かへ去ったため、その好機に生き残っていた善き魔導士たちが残存していたメレラの配下を打ち倒し、塔を取り戻すことに成功したのだ。


ラブロウ、ザンデロスの仲間の少女・キアヒナは、元々ソザリアの出身だ。高い魔力を持ちソザリアを導く者として嘱望されていた存在だった。


メレラ侵攻の際、ソザリアの善き魔導士達の手によってひとりソザリアからはるか遠方まで逃がされた。そしてソザリア奪還のため仲間を集めようとしていたところ、ラブロウ達に出会い行動を共にすることになったのだ。


沢山の鏡が並ぶ部屋から、魔法による“遠話”で方々に連絡をとるキアヒナと数人の善き魔導士達。


異空間へ放り込まれたラブロウ。

ブラックドラゴンの後を追い、行方のわからないザンデロス。

塔を奪還できたものの、メレラ討伐の中心たる2人の生死が不明な上、メレラや配下の者がブラックドラゴンを引き連れ再度ソザリアに戻る可能性もある。事態は深刻だ。


そんな不安の中、キアヒナにハーズメリア領内の仲間から恐ろしい情報が飛び込んできた。

すぐさまピットーらラブロウ支援団に“遠話”を行うキアヒナ。

ピットー達はドワーフの地下精製場跡での騒ぎを片付けたあと、精製場跡が所在するイスタンド王国のとある都市で待機していた。


「キアヒナ!ラブロウは?!そっちはどうなんだ?」

先に遠話をしていたデルグから簡単に経緯を聞いていたピットーは、険しい表情で鏡の中からキアヒナに問いかける。


「ピットー、ラブロウのことについては仲間の魔導士達が塔の魔導書から異空間にコンタクトする術を探してる。その分野に詳しい者がいるからそんなに時間はかからないと思う。ザンデロスは依然消息がわからない。ドラグガルドの王族臣下の人達に伝えたら、すぐに捜索に出発してくれたわ」

キアヒナの答えに固い表情のままピットーも返す。

「まだ安心できる状況じゃないな…何か必要な物は?すぐに手配するよ。人手が必要なら僕らもすぐそちらに…」


協力を申し出るピットーにキアヒナが静かに話し出す。

「ピットー、よく聞いて。ついさっき、ハーズメリア領内の仲間から情報が入ったの。ソザリアからブラックドラゴンの大群とともに飛びたったメレラが、ハーズメリア王都に攻め込んで……王都は一瞬で火の海に…壊滅したそうよ」


「…!!…ウソだろ…?!」

ピットーは絶望に満ちた顔でガクンと膝を落とした。


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