表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漂泊のベノス  作者: ism
【第三部・遺跡/ダンジョン探索編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/115

隠された居住地区

探索中のピットー達がミミックの死体を発見する前日に遡る。


ベノスとベッカーは隠し通路の入口を発見後、長い通路を身をかがめて進む。その先には、中央に石像が飾られた大きな広間があった。


天井は吹き抜けになっており、はるか上には月が浮かんだ夜空が見える。この地下精製場跡は切り立った山々の下にある。ここはきっと山のどこかと繋がっているのだろう。


広間の壁には扉がいくつもあり、小さな部屋にはテーブルやベッドが置かれている。どうやら居住スペースのようだ。

しかしドワーフ達が去ってかなりの年月が経っているため家具はほとんどが朽ち、広間にも部屋にもそこら中に木の根がはって床や壁を隆起している。


2人は念入りに各部屋を探索したが、特に目ぼしい物はなかった。石像の後ろには大きな下り階段がありベノスはさっそく降りようと足をかけたところベッカーが声をかける。

「まぁそうあせるなよ。一息つくには持ってこいのスペースだ。せっかくだからコーヒーブレイクとしゃれこもうかい」


ベッカーは荷物から小型のポットと小さなカップを取り出し広間の窪みに溜まった雨水を汲み、火を起こして湯を沸かし始める。

ベノスも焚き火のそばに腰を下ろして一息つく。


「ゼロス、お前さん生まれは?」

「ハーズメリア。アンタは?」

2人はポツリポツリと質問と返答を続ける。


「オレは北のノーザンブロー。雪ばっかの何もないとこさ」

「そうか…。ドワーフの魔法の武具を求めてここまで来たんだが、アンタもそのクチか?」

ベノスの問いに

「オレは正直、武器やら何やらには興味なくてな。ドワーフや小人族、エルフとか人間以外の種族に何かと縁があって彼らの足跡を追ってんだよ」

とベッカーは答えた。


30年ほど前、ベッカーが挙げたような種族が、一部の人間と共に暮らしている者たちを除き世界中から忽然と姿を消す事件があった。現在も彼らの行方はようとして知れず、未だこの種族単位の集団消失に関してはさまざまな研究がされていたり噂が語り継がれていた。


「これまでの探索で足跡を追える手掛かりになるようなものは?共通点や遺物といったものは」

ベノスの問いに、ベッカーは肩をすくめ掌を上にむけてお手上げのジェスチャーをする。


「ここのドワーフ達も例の集団消失なんだろうが…みんなどこへ消えちまったんだか」

ベッカーは出来上がったコーヒーをカップに注ぎベノスにも手渡す。


「お前さんは、こういうダンジョンは慣れたモンなのか」コーヒーをすすりながら聞くベッカーにベノスは

「いや、モンスター退治のために2、3度入ったことはあるがじっくり探索をしたことはない。魔法の武器を探しに来たものの大方とり尽くされているようで無駄足かと思ったが、こんな好機と美味いコーヒーに恵まれるとは思わなかった。感謝する、ベッカー。」

と礼を言った。


「ははは、感謝はまだ早いぜ?!探索はこれからだからなぁ!」

ベッカーは笑いながらベノスに返した。



──地下3階と地下5階の二手に分かれて探索を進めるピットーらラブロウ支援団。


地下3階では、早速部屋の違和感に気づいたメンバーのひとりがレンデイラに報告する。

「レンデイラ、ミミックの死体があった目の前の部屋…床板が最近入れ替えられたと思われる場所がある」


入れ替えられた床板を持ち上げたり他の床板も確認するが何も起きない。


「何か仕掛けがあったのかも。他のトラップ同様一度解放したらおしまいなんでしょ。問題は部屋のどの部分が開かれたのか──」

そう言って床板を戻した瞬間。


ズドン!と、部屋の床が何かに突き上げられる。


「部屋から出よう!」

レンデイラの指示で部屋を出るメンバー。

ズドン!ズドン!と突き上げは力を増し…

ドォンという轟音と共に、ついに突き破られた床から巨大な手が伸びて来た。


床下から出て来たものは、部屋いっぱいの大きさのゴーレムだった。


地下3階探索チームは、探索済み階層の再探索ということもありレンデイラ以外ほぼ非戦闘員で構成されていた。今のメンバーでは到底敵いそうにない。


「みんな逃げて!」

ゴーレムは部屋の壁を突き破り通路に出てくる。

身をかがめ膝をつきながら少しずつ近づいてくる。

のっぺらぼうのようなゴーレムの頭部が口のように開いたかと思うと、そこから大量の石つぶてが放たれた。


石つぶてはしんがりをつとめていたレンデイラの全身に当たり、地面に倒れ込む。


身体を貫くような強力なものではなかったが、頭部や首に命中しレンデイラは意識を失いそうになった。


その時、小柄な女性メンバーがゴーレムに向かって光る掌をかざす。放たれた光に包まれたゴーレムは動きを停止する。彼女は魔法使いらしく対象の動きを一時的に止める魔法を使ったのだ。


「相手が大きすぎてほんの少ししか魔法を維持できそうにないから誰か早くレンデイラを背負って!」

レンデイラに駆け寄る他のメンバー。

だがレンデイラはその手を払い、停止して通路を塞ぐゴーレム巨躯の隙間をくぐり抜けゴーレムが突き破った穴に飛び降りた。


「ウソでしょ⁈何してんのレンデイラ‼︎」

「私がコイツをひきつけるから!リーリーもすぐ魔法を解いてみんなと地上に避難して!」


束縛魔法は早くも効力を失い、周囲の壁を破壊しながらレンデイラの方を振り向くゴーレムに、レンデイラは瓦礫を投げつけ気を引く。

ゴーレムは標的をレンデイラに定めたようで、はじめギクシャクとしていた動きだったがスムーズな動作でレンデイラの後を追う。起動と共に少しずつ本来の動きを取り戻し始めているようだった。


「バカ!やめて!」

小柄な女性の魔法使いリーリーの言葉も聞かず、降りた部屋にあった通路をかけていくレンデイラだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ