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漂泊のベノス  作者: ism
【第三部・遺跡/ダンジョン探索編】

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50/119

探索者ベッカー

「いやーとりあえず命は助かってよかった。礼を言うぜ、にいちゃん。」

男は涙目で咳き込みながらベノスに礼を言った。


「このミミックはどこから現れたんだ?」

「あれあれ!あそこから飛び出してきやがったんだ。でもついに見つけたぜ、まだ誰にも見つけられてない通路をよ!」

男が指さす部屋のすみの壁板が倒れ、ベノスの腰くらいの高さの小さな入口があいている。おそらくドワーフの通用口だったのだろう。


「何かきっかけが?それとも偶然か?」

「偶然なもんかよ!この数週間、おれぁ各階の各部屋をくまなく調べてたんだよ。そしたらこの部屋だけ天井の絵と床の絵がほんの少しだけ違うことに気がついたんだ!」


ベノスが見上げると天井にはカビだらけだが薄っすらと羽ばたく鳥の絵が見える。そして石の床板が敷き詰められた地面にも殆どかすれてしまって見えずらいが確かに同じ鳥の絵がある。そして一部の床板には入れ替えた跡が。男が入れ替え天井と同じにしたのだろう。

意図的に組み替えられた床の絵を天井の絵と同じにすることで扉が開く仕組みになっていたようだ。


「すごいな。このかすれた床板とカビだらけの天井の模様が絵だとわかって、何かあるとよく気づいたな」

ベノスは素直に感心した。


「わははは、そうだろうそうだろう。よぉし、さっそく探索にむかうぜ!…と、言いたい所なんだが…あんなのが飛び出してきて少し不安でよ。どうだいにいちゃん、俺と組まねえか?さっきの身のこなしみてるとモンスターとの戦闘経験があるようだし」と男はベノスに同行を持ちかけた。


「それは願ってもない申し出だが…ほんの数分前に出会ったオレのことをあっさり信用して連れて行ってもいいのか?お宝を見つけた途端あんたを背後から襲うかもしれんぞ」

ベノスは男の警戒心の無さを指摘しつつ、こちらも易々出し抜かれたりしないという警告も込め男に聞き返す。


「こうみえても人を見る目には自信がある。悪党は煙幕吸って咳き込んでる奴にすぐ水を差し出したりしねぇしな。」

ベノスは笑みを浮かべながら

「人を信用させてから騙す詐欺師タイプかもよ?」

「詐欺師が警戒した方がいいなんて言わねぇだろ。おれぁベッカー。よろしくな出会ったばかりの相棒」

とベッカーは手を差し出す。

「オレは…ゼロスだ。今日ここに到着したばかりだが、よろしく頼む」

ベノスはピットーがすぐ近くにいることがふと頭をよぎり咄嗟に偽名を名乗ってしまったが、悪い人間ではなさそうなのでひとまず同行しようとベッカーと握手をかわした。


「よし、じゃあ行くとするか」

ベッカーとベノスはランタンに灯をともして身をかがめ低い入口に入ると、他の探索者らが自分達の後に続かぬよう中から壁板をうまく元に戻し入口を塞いでから進んで行った。



──翌日。

ピットー率いるラブロウ支援団のメンバー6名は早朝から地下精製場跡に潜り、地下3階でミミックの死体を発見した。


「どこから出てきたんだコイツは。地下3階・4階のモンスターはほぼ倒し尽くして久しく見てないぞ」

ピットーはミミックを見下ろしながら呟く。


「地下5階から上がってきたのかも」

女剣士レンデイラがピットーにそう返すと、

「有り得なくはないが…ここのモンスター達は殆どがドワーフ達がしかけた防衛設備の一部だ。“持ち場”を離れることは考えにくいんだよなぁ」

「とすると、この地下3階でなんらかのトラップが発動して飛び出してきたと」と魔法使い然とした身なりの男が言うと、

「ああ。そしてトラップを発動させてミミックを倒した者がいるはずだけどその者たちはそのまま地下へ降りたと思うかい?デルグさん」

魔法使いの男・デルグは

「いいや、“入った”はずだ。このミミックが飛び出してきた所から」

と答えた。

「だよなぁ。このそこそこ大きいミミックが収まっていた場所ってことは普通に人が通ったり入ったりできるはずなんだ」

「よし、地上に残ってるメンバーを全員呼んで、この地下3階に残るチームと地下5階に向かうチームに分かれて探索を行おう」デルグは手のひら大の長方形の鏡を使い地上のメンバーに“遠話”を行う。ベノスたちが遠方のジャルガと連絡を取るときと同じ、魔法による交信だ。


「それにしても、僕ら以外でまだここを探索しようって気概のある人達が残ってたんだなぁ」

ピットーが感心するように言うとレンデイラは

「昨日ユッケラさんとこで見かけたことない男がいたけど、もしかしたらその人かも」と返した。


「初日にこの探索し尽くされた地下の隠し通路を見つけられるような人、是非ともうちのチームに加わって欲しいね」ピットーはそう言って笑った。

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