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漂泊のベノス  作者: ism
【第三部・遺跡/ダンジョン探索編】

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ゾゴム現る

「なっ…お前は!?」

エンリスは攻撃体勢で低く唸り、ベノスは剣を抜き身構えた。


「私はゾゴム。“モナルカ”当主の最側近を務める者。“ウォッチャー”の交信が突然途絶えて何事かと思えば…ヘルハウンドにクォーターエルフとは妙な取り合わせだ」

エンリスとアフに目をやりながら不気味な笑みを浮かべつつベノス達に語りかけるゾゴム。

「モナルカ?聞いたこともないが…俺を監視して何の意味がある?」

ベノスはゾゴムに問う。


「お嬢様にご納得いただくためであったが私も少々気掛かりだったものでね。なぜ未来視とは違った運命を歩むことができたのか」

ゾゴムの話にさらにベノスは返す。

「ああ…あの時、このまま死ぬはずだって言ってたことか。で、俺はなんで今も生きているかわかったか?」


「それは甚だわからん。…しかしベノスよ。お嬢様は情の深いお方ゆえ…お前の様な罪深いゴミにも哀れみと慈しみを向けられる。ただのゴミであればお前などどうでもよかったのだが、こちらの監視を妨げる不可解な仲間がいるとわかった以上、お嬢様の今後に何らかの影響を及ぼす可能性がある。私としてはもうお前の存在を捨ておけん。未来視通り、死んでもらおう」

そういうとゾゴムはベノス達に魔力を込めた掌をかざした。


「…最後にひとつ。魔導士メレラって奴はお前らの仲間か?」ベノスの問いに

「フフ、あんな者は知らんな。我ら“モナルカ”は最上にして至高。誰の下にもつかん。ではさらばだ」

魔力が放たれようとした瞬間、エンリスがベノスの横から凄まじい業火を放った。

「よし、エンリス!先生早く診療所の中へ!」

ベノスの指示に

「何言ってるの!私も応戦します!」

と返してきたアフにベノスは驚く。


「ははは、そんな物が通じると思ったか?」

いつの間にかベノス達の頭上高く、宙に移動していたゾゴムから放たれた魔力は黒い矢となってベノス達に降り注ぐ。

同時にベノス達の周りにドーム上の光の膜が生成される。アフの結界術だ。


降り注ぐ黒い矢は結界に弾かれていくが、ゾゴムの魔力放出がわずかに早くすり抜けた矢がアフの肩を切り裂いた。


「先生!」

「大丈夫!ベノス、ここから出ないで!あの魔力を一度でも受けたらあなた死ぬわよ!」

アフの負傷を見たエンリスは凄まじい咆哮をあげ、抑えていた魔力を解放する。


「ほほう、これはすごい!さすがは魔界の生物だ」

感心するゾゴム。

次の瞬間、エンリスの姿がフッと消えたかと思うとゾゴムの背後から頭を噛み砕こうと大口を開けたエンリスが現れた。


バクンと口を閉じた時にはゾゴムの姿はすでに地上にあり、間髪入れず上空のエンリスに向け魔法を放った。

ハーズメリア戦士団の命を一瞬で奪った闇の魔力の奔流だ。


しかしエンリスは魔法をものともせずゾゴムに飛びかかる。

またも瞬間移動し、エンリスに遥か後方に現れた。


エンリスの飛びかかりが一瞬早かったようで、ゾゴムの肩から胸にかけて大きく切り裂かれ血が滴っていた。

「…ヘルハウンドに闇の魔力は通用せぬか…」


エンリスは食いちぎった衣服の切れ端をぺっと出し、ゆっくりとゾゴムに歩み寄る。


「闇の力しか使えないと思ったのなら、大きな間違いだ」

ゾゴムの言葉に呼応する様にエンリスの足元の土が盛り上がり、瞬時にエンリスの足を拘束し始める。

エンリスは大暴れするが土の拘束は徐々に体中を覆う。土は硬化しエンリスを締め上げ、ブレスを吐かないよう口元も覆う。

「さて、躾のなっていない犬は仕置きせねばな」

ゾゴムの手には禍々しい形の槍が現れ、次はゾゴムがエンリスに歩み寄る。


「エンリス!」アフの叫びにたまらず結界の外に飛び出してゾゴムに斬りかかるベノス。


「…出てくると思ったぞ」

ゾゴムはニヤリと笑ったかと思うとかざした掌からベノスに向け魔力を放った。


熱を帯びた強烈な衝撃。数メートル吹っ飛ばされたベノスはそのまま動くことはなかった。


「そんな…」アフは結界を解き、ベノスに駆け寄る。

「犬よ、貴様の始末は後だ」

エンリスは身体を完全に拘束され、全く身動きがとれず咆哮すら上げることもできない。


ゾゴムは、アフとベノスのそばに来るとアフに槍を向けた。

「魔法は防げるようだが、これはどうかな?」


槍を振り下ろそうとした、その時──

起き上がったベノスが凄まじいスピードでゾゴムに斬撃を加えた。

またも瞬間移動で逃れたゾゴムであったが、ベノスの一撃は想定外だった様で脇腹に深い斬り傷を負っていた。

「バッ、バカな…真正面から魔力を受けて生きているはずなど…」


立ち上がったベノスに大した負傷はなく、胸元が青白く光っている。

かつてラブロウから受けた魔法の古傷からの溢れ出る光だった。


「貴様ぁあ!“福音”を!受けておったのか!」

取り乱すゾゴム。

「…?なんだと?」ベノスは聞き返す。


「…一旦預けておく。また会おう、ベノス」

ゾゴムは歪んだ空間に身体を埋めながら消えていった。


エンリスは土の拘束は解かれ、身体を大きく震わせた。

「一体何が…?」

ベノス自身もわからないまま何とか難を逃れることができたものの、ゾゴムの再訪の言葉に不安は拭いきれない。


「魔法で受けた傷は、適切な治療を行わないと傷に残った魔力が身体に影響を及ぼすことがあるの。一年前、あなたの治療を行った時、放置されてた魔法傷に残った魔力を除くことができなくてこれから先も痛みが残るかもって言ったけど…もしかしたら魔法傷に残った光の魔力のお陰なのかも」

アフの言葉にベノスは、この魔法傷に助けられることになるとは…と、まだ光が残る傷を複雑な思いで見つめていた。


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