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漂泊のベノス  作者: ism
【第三部・遺跡/ダンジョン探索編】

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43/117

「光の手」教団

「その人物が噂の“勇者”…?」

「おそらくは。そいつ以外考えられない」

ロンボルトの言葉に返すベノス。


メクスドラ城下の都。

ミノタウロス退治のあとジャルガはひとり別件で先に帰路につき、ヘキオンズコープスの面々は例の“勇者”の話について情報収集がてら酒場へ。

そこでベノスはロンボルトらに騎士団少年部でのラブロウとの出来事を話した。


「それにしても、勇者になったやつを昔殺そうとしたってすげえな。武勇伝になるぜ」

「なるかバカ。その“勇者”のこれからの活躍次第で下手すりゃ死刑になるかもしれねぇんだからデカい声で話すな」

思わず感心したタウザールを制するアデット。


「いや、ベノスはもう死人だろ。死刑になんてなるかよ」

確かに、と頷くロンボルトとスリッグス。


1年前。

ベノスがゴブリンとの最初の戦いの際に着ていた血まみれの衣服と、ディメナード家から持ち出した剣を「ベノス・ディメナード」を名乗る死んだ行き倒れの遺品として騎士団に渡し、死を偽装するという策はロンボルトの発案だった。


アデットは騎士団に偽の報告を行ったあと、ヘキオン村によく立ち寄る王宮内の噂が大好きな豪商にそれとなくベノスのことを聞いた。

騎士団少年部にいずれは騎士団を背負って立つって言われてる優秀な貴族の息子がいるんだって?…と。


「ああ、あのディメナード家の次男坊か。なんでも不慮の事故で亡くなったと騎士団のやつが話していたぞ」

─ベノスは少なくとも騎士団からは死んだものとされていることは間違いなさそうだった。


騎士団少年部所属していたベノス・ディメナードは死んだ。

今後どこかで余計な詮索をされることもあり得るからこれからは違う名を名乗った方がいい、という話が仲間達から出たが、ベノスはあえてそれをしなかった。


後悔や迷い、捨てきれないプライド…未だベノスの中で様々な感情がないまぜになっていることを何となく察し、仲間達はそれ以上なにも言うことはなかった。


酒場では、地方領主が話していたことと似たような「勇者が魔王と戦っている」といった話しか得ることは出来なかった。

「はー、仕方ねえな。一度宿に戻って夜また来るか」

酒場は昼間から酒をあおる者や昼食をとるもので繁盛していたが、やはり情報収集なら夜に来るべきだなと思い直し宿へ戻ることにした一行。


途中、広場に人だかりできており、何やら演説が行われていた。

「何者かの邪悪な意思によってモンスターが各地で人々を襲撃しています。…今、世界を闇が覆い尽くそうとしているのです。しかし恐れることはありません。皆さんもご存知でしょう、ついに光の力をまといし勇者が現れたのです!勇者を信じ、共に平和を祈りましょう!」

白いローブを纏った者がお立ち台の上から人々に呼びかけている。同様にローブ姿の一団が演説者の周りにおり、何やら施しを行っている。どうやら粗末な食料と医薬品を配っているようだった。


「最近よく見るな、あの連中」アデットが言うと

「たしか“光の手”教団だったか…信仰対象を勇者に変更したのか?以前は聞いたこともない神だったような」

とロンボルトは答えた。


人だかりを横目にそのまま通り過ぎようとするベノス達。

だがベノスの目にある人物が映る。


白ローブ達の中、後列から白ローブ一団の行動を監視するように見つめる大男。そしてその側で笑みを浮かべる少女。


ベノスは驚愕した。忘れもしないその顔。


(あれは…!1年前森の中で出会った馬車の少女と蛇眼の大男…?!)


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