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漂泊のベノス  作者: ism
【第二部・辺境/モンスター討伐編】

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36/115

急襲作戦

ロンボルトの村外れの小屋で襲撃の準備を整えた3人。

すぐ出発するかと思いきや何かを待つベノス。


「どうした?何を待ってるんだ?」

アデットが尋ねると周囲を見回すベノス。

「もう少し待とう。あと数刻待って来なければ…」

そこへこちらに近づいてくる数人の人影。なんと、タウザール、トゥーチ、フォークホードの3人だった。


「え?こいつらも?」意外な助っ人に驚くアデット。


「あぁ?なんか文句あんのか?そこのゴブリンキラー様がどうしてもっつうから来てやったんじゃねえか」

「ハハ。リベンジしたくはないかと聞いただけだがな」

ベノスは軽く返す。


「足引っ張んなよ」

「こっちのセリフだバーカ」

早々にいがみ合いをし出すアデットとタウザール。


「じゃあ説明するぞ。手筈はこうだ。」

2人を無視して話し出すベノス。

「あの観測地点から根城を見張り、4匹集まったところで根城の近くまで一気に接近する。ベストな射撃地点に各々が着いたら俺がリザードマンどもの前に飛び出して目潰し煙幕を投げつける。視覚を奪ったら俺はその場を離れるから総攻撃。デカブツはアデットとロンボルトが鉄砲と弩弓で、タウザール達はそれ以外を狙うんだ。いいな?」


「4匹?群れは5匹じゃなかったか?」

ロンボルトの疑問に、

「あの細身のリザードマンはおそらく根城には戻って来ない。群れの大規模な移動には同行しているだけで、ひとり周囲を徘徊し他より積極的に…人間狩りを楽しんでいるタイプだ。」とベノスは予測を立てる。

「そいつは別で討伐が必要だ。今のところ動きが読めん」

タウザールが突っ込みを入れる。

「待てよおい。村を襲ったのはそいつだろうが。まずそいつをやるのが先だろ」

「ほかの個体より知能が高いみたいだからな。良くも悪くも単独行動しているから群れの退治とは切り離して考えるべきだ。」

ベノスの答えにタウザールは毒づく。

「確かそいつだけ剣使うんだよなあ?敵いそうにねえからビビり上がってるだけじゃねえのか?」

「確かに敵わんかもしれんな。その時はお前に敵討ちを頼もうか」ベノスは静かに笑みを浮かべながらタウザールを見た。

「よし、では行こうか」ロンボルトは声をかけ6人は観測地点へと向かった。


──到着した山の中腹から見えるリザードマンの群れは、現在3匹。1匹の戻りを待つ一行の緊張感は次第に高まっていく。アデット、ロンボルト、ベノスから少し離れ、トゥーチとフォークホードは小声で話す。

「なぁ…やばいって。あんなデケェの勝てるわけない。殺されるぜ」

「あぁ。付き合ってらんねえよ」

渋々ついてきた2人は消極的だった。

タウザールは声をかける。

「…俺がこいつらに協力するつもりでついて来たと思うか?こいつらがスットロいことやってるせいでスリッグスは死にかけたんだ。落とし前つけさせてやる」

「どうすんだ?」

「適当なタイミングでズラかろうぜ。奴らにゃリザードマンの餌にでも勝手になってもらうか」


アデットが皆んなに声をかける。

「来た!降りるぞ」

ベノス、ロンボルト、アデットの3人は山のなだらかな丘を駆け降りる。後に続くタウザール達。


森に入り、静かに身をかがめ根城の近くまで進む。

リザードマン達はまだこちらには気づいておらず、残り物の肉や骨をしがんでいる。野生動物のように鋭敏な察知能力があるかと思われたが意外と人間並みのようだ。


ロンボルトはアデット、タウザール達に周囲を取り囲むように射撃地点につくように指示。その時、アデットはロンボルトだけに聞こえるように言う。

「…タウザールのバカどもは必ず逃げる。俺は小さいのを1匹ずつ片付けるから、デカブツは出来れば1発で仕留めてくれ」


「わかってる。だが一撃必殺は約束できないぞ」

ロンボルトもタウザールのことは信用していなかった。もともと3人で作戦を運ぶ予定であったから別にいようがいまいが特に影響はないと思っていた。


ベノスは目潰しで自身がやられないよう鼻と口を布で覆いゴーグルをつけ、木の影から仲間達だけに見えるよう指でカウントする。


3…

2…

1!


ベノスはリザードマンの前に踊り出て次々目潰し煙幕を顔目掛けて投げつけていく。

煙幕をくらったリザードマンは大きく咆哮しのたうち回る。

普通の体格の3匹に投げつけ、残りは巨大リザードマン。

だが手負いとされていた巨大リザードマンは凄まじい俊敏さで手製の槍を投げつけてきた。


ベノスはうまくかわすが体勢を崩してしまう。投げた槍はトゥーチとフォークホードの目の前の木に突き刺さる。

「ひいぃい!」トゥーチとフォークホードは恐怖のあまり、スリッグスが襲われた時同様たまらず逃げ出す。

それを見たタウザールも後方に駆け出す。

「勝手にやってろ!」

「男をあげる機会を棒にふるとはな」ベノスはタウザールを一瞥するとすぐさま体勢を立て直し巨大リザードマンに体をむける。

アデットはやっぱりな、といった顔でタウザールには目もくれず弩弓をリザードマンに構える。


グォンと風を切って飛んだ大型の矢は片目のリザードマンの胸を貫通。「よっしゃあぁ!」アデットはつい声を上げる。


巨大リザードマンはベノスにむかって高く跳躍。踏みつけるつもりだ。その時轟音が鳴り響く。


リザードマンの肩が爆烈。

ロンボルトの鉄砲が見事に命中した。と同時に

「ベノス!かわせ!」ロンボルトは叫ぶ。


ベノスは身を翻しながら、砲撃をうけ地面に叩きつけられた巨大リザードマンに向かって目潰しを投げつける。

視覚と呼吸を奪われ森中に響き渡る咆哮をあげ大暴れする。

「精度を上げるためとはいえ火薬を少なくしすぎたか」

ロンボルトはふたたび火薬と弾を装填しだす。


剣の通らない巨大リザードマンより他のリザードマンに狙いをさだめ、ベノスは素早く剣を抜きつつ小柄なリザードマンに渾身の斬撃を繰り出す。頭部を両断されたリザードマンはその場に崩れ落ちる。


その時。

遠く逃げゆくタウザールを追う影をベノスは見逃さなかった。あれは…!


胸当てをつけたリザードマンの首を容易く斬りはね、タウザールを追うベノス。

「デカブツは頼んだ!細身のリザードマンがいた!」

アデットとロンボルトに伝えると駆け出すベノス。



…トゥーチとフォークホードは少し離れたところまで来ると安心したように「こ、ここまできたら大丈夫だろ」と一息つく。そこへ後ろからタウザールがやって来た。

「ったくよー、逃げ足だけは抜群だなおめーら」


「おぅタウザー…ひっ!うわぁあぁ!」

トゥーチが声を上げる。

タウザールの頭上を高く越え、なんと細身のリザードマンがトゥーチに飛びかかってきた。


リザードマンの長剣がトゥーチの肩から脇腹までを斬り裂く。悲鳴をあげる間も無くリザードマンの剣はフォークホードの喉を突き刺す。2人の激しい鮮血がタウザールに飛び散る。


長年の悪友達が目の前で、ほんの一瞬で命を奪われた。


タウザールは、数日前のスリッグスの時と違い弓を構えることもできず呆然と立ち尽くしていた。


リザードマンは舌なめずりし、タウザールに近づく。

音もなく振り上げた剣が振り下ろされようとした瞬間。

ベノスはタウザールを突き飛ばしリザードマンの剣を、斬撃ではじく。


「間に合わなかったか。タウザール、お前はさっさと逃げろ」

タウザールは恐怖に顔をゆがませ一言は発することなく泣きながら森を一目散で駆け出して行った。


「…さて。ケリをつけるか。」

ベノスは鼻と口の布とゴーグルをはずし、笑みを浮かべながら剣を構えた。

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