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漂泊のベノス  作者: ism
【第二部・辺境/モンスター討伐編】

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35/115

ベノスの気付き

ベノスが村に戻ると村は大騒ぎになっていた。

集落を警備していた村の男が3人、細身のリザードマンに襲われ斬り殺されたのだ。


駆けつけた村の男達、特に木こりのブランが大斧を手に果敢に挑みかかり、攻撃こそ全く当てられなかったもののなんとか追い返したらしい。ブランは斬りつけられたが何とか無事であった。


事前にアフが倒れたことは説明を受けていたにも関わらず村の者が意識が戻らないアフをムリヤリ起こすため診療所に入ろうとしたところエンリスが大暴れし手がつけられず診療所には近づくことができなくなっていた。


村の者達を前にベノスは複雑な心境だった。大切な者を襲われ、息を吹き返す可能性を信じなんとか治癒魔法を受けさせたいのは痛いほどわかるが…これ以上アフに魔法を使わせることは罷りならない。そして下手な事をしてエンリスがもし本性を表せば、村が滅ぶ。あの夜、エンリスの力を垣間見たベノスは確信していた。

村長邸に村の者が集まりエンリスやアフに憤る中、ベノスは言い放つ。

「死んだ者は例え彼女の魔法であっても蘇らせることは絶対にできない。断言する。それでも一縷の望みをかけ彼女に治癒魔法を使わせるか?今の状態で魔法を使わせたら、彼女は確実に死ぬぞ。」

人々から、よそ者は口を挟むな!お前に何がわかる!…などと声があがるがベノスはさらに続ける。

「感情にのまれて判断を誤るな。もっと多くのものを失うぞ!」

それはまるでかつての自分に言っているかのようだった。

村が混乱する中、ベノスはアデットとロンボルトを別室に連れて行き、半日の観測と帰りの出来事を話した。


「すぐにでも行こう。もうこれ以上被害を出すわけにはいかん」ベノスの急な案にアデットは返す。

「仕方ねえな。…だが勝算はあるんだろう?」

「ある。ゴブリンの時と違ってひとりでは難しいがな」

ロンボルトは

「頼もしいね。こっちは正直地下室に引きこもっていたいくらいさ」と、冗談か本気かわからない軽口をたたく。


「目潰し煙幕は?」ベノスの質問に

「なんとか材料かき集めて5つだけできた」

とロンボルトは答える。


「なんとなく生態が見えてきた。夜道での襲撃、タウザール達の件、そして村を襲い俺と森で戦ったヤツ。どれも1匹で行動していた。観測している時も、根城を離れる時は1匹ずつ別々。群れて生活はするが狩りは気の向くままひとりでするようだ。集まっていては厄介かと考えたがむしろ逆かもしれん」ベノスは行動から予測を立てた。


「オイオイ、結局根城に飛び込むのかよ。ゴブリンの時と変わらんじゃないか!」

「その通り」ベノスはニヤリとする。

「だが、デカブツと取巻きは2人に任せたい。」

「本気か?」ロンボルトは不安げに尋ねた。

「鉄砲。それに、地下室にうってつけの武器をおいていただろう。あれは弩弓ってやつじゃないのか?」

弩弓。足や滑車を使って弦を引く大型の弓である。

「めざといなキミは。」特に説明もしなかった武器に目をつけていたベノスに妙に嬉しそうな顔で返した。


ベノスは2人に言う。

「作戦は準備しながら話す。地下室に行こう」

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