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漂泊のベノス  作者: ism
【第二部・辺境/モンスター討伐編】

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30/115

狩人タウザール

タウザール達は、ヘキオン近辺にいくつかあるいつもの狩り場に繰り出していた。


同年代の村の者たちは、ある者は村を出て王都で働き、ある者は家業を継ぎ店先に立ったり技術を身につけるため汗を流している。アデットは村の住人の困り事を解決するなど父である村長オーマックの補佐として働き、ロンボルトは豊富な知識と情報網を活かし村の何でも屋として評判も上々。ティアミーはご存じのとおりアフの助手として薬学を学びながら診療所で働いている。


タウザール、トゥーチ、スリッグス、フォークホードの4人は自分達の父と同じく狩人と名乗ってはいるが、害獣を駆除することも野生動物を食肉として狩ることもほとんどやらず、一日のほとんどを山で娯楽に近い狩りや川釣りをしてすごし、金に困れば狩った動物の皮を市場で高額で売りつけるなどして工面するといった日々を送っていた。


「よっしゃこれで3匹目!」

タウザールの矢は空を飛ぶ鳥を射抜く。


「俺一匹…」「俺もー」

「俺はゼロだ、クソ」ひとり大柄な体格のスリッグスは、もともと村の木材加工運搬屋の息子だ。他の3人とは違い、つるみ出してから弓を使い出したので弓の技術が他のものより劣る。


「こんなもんやってりゃそのウチ身につくから、まぁ焦んなって」タウザールは仲間内には優しいタイプな為、スリッグスを自然に気遣った。


実は4人がこうなったのにはキッカケがあった。

数年前、4人の父らが山で狩りの最中に急な悪天候による土砂崩れがおき、巻き込まれて全員亡くなってしまったのだ。

誰がどう見ても不幸な事故だったが、タウザールが救助が遅れたためだと村長や村の人達を逆恨みしだしたことから彼らはやさぐれた態度をとりはじめたのだ。


「それにしても最近鳥や動物が減ってきてないか?」

というトゥーチに、フォークホードは

「気のせいだろ。あ、リザードマンにビビってんの?」

とからかう。

「うるせー、ビビるかよ。」

とは強がるものの、タウザール以外はみな内心不安だった。

ただこの辺の地理は知り尽くし、リザードマンが現れそうな川や湿地はさけている。それに昨日ベノスが相当な手傷を負わせたと聞いている。出てくるわけない、よな?


「すくねーけど昼飯にすっか」

手際よく火を焚き、素早く鳥を下処理して火にくべるタウザール達。


ガサッ…

後ろの茂みが揺れる。4人に緊張が走る。素早く弓を構えるタウザール。

ザッ!茂みから飛び出してきたのは小さな野ネズミだった。


タウザール達は互いに顔を見合わせて爆笑する。

「ビビりすぎだろオイ!」


次の瞬間。


「ぐあぁああぁ!」

後ろから巨大な槍がスリッグスは肩を貫いた。

タウザールが咄嗟に身構えるとそこにはゆっくり近づいてくるリザードマンの姿が。


「わぁああぁ!」

一目散に逃げ出すトゥーチとフォークホード。

タウザールは震えながらもしっかりと弓を構えて狙いを定める。


痛みにうめくスリッグスに襲いかかろうと飛びかかるリザードマンに、タウザールは矢を放った。


放たれた矢はリザードマンの目に命中。着地にも失敗し激しくもがくリザードマン。火で威嚇しながらスリッグスを抱き起こすタウザール。

「た、立てスリッグス!逃げんだよ!早く」

火をリザードマンの足元に放り投げ、弓を構えながら後退する。リザードマンは弓矢を警戒して追ってこない。


「いいい行け行け行け!走れ!」

タウザールは槍が刺さったまま血だらけのスリッグスを無理矢理走らせなんとかその場を切り抜けることができた。


挿絵(By みてみん)

挿し絵のキャラクターは右からタウザール、スリッグス、トゥーチ、フォークホードです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろかったです! タイトルにビビビッときて読み始めました。 主人公がしょっぱなからクズ過ぎる(物語的にそこがイイ!)。転校生が優秀過ぎかつ人間的にも魅力的で、嫉妬から闇落ちする主人公…
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