村の対策
「なぜそれを早く知らせんのだ!」
数日前に隣村の住人からリザードマンのことを聞いていたという酒場の主人に対し、村長のオーマックは声を荒げた。
「そういうなって。マスターも夜遅くまで酒場の切り盛りで忙しいんだ。客ひとりひとりとの話全部に気を留めてらんねぇだろ」
アデットは酒場の主人を気遣った。
ゴブリンの時と同じく村の男たちが集まって村長邸で会議が行われていた。
アデットは訝しげに呟く。
「それにしてもなんだって頻繁にモンスターが現れるようになったんだ?しかも見たこともないような大型の」
「…ここだけじゃない。別の地域、他国でも急増してるらしい。手紙のやり取りをしている遠方の連中もモンスターが多くなってきてると書いていた」とロンボルトはアデットに話す。
村長も村の者たちも、う〜んと頭を抱えた。
こんなことが頻繁に起こると日常生活に支障がでる。迂闊に子供や老人を森や山に行かせることもできない。
そんなみんなの心配に思い至らないタウザールは、ヘラヘラと声を上げる。
「いいじゃねーか、幸いウチの村にはゴブリンキラーの剣士殿もおいでだし、ロンボルトがモンスター退治のために爆弾買ってきたんだろ?何も心配ねーじゃん」
そうそう!また退治に行ってもらおうぜ〜!…と、
取巻きの連中も囃し立てる。
タウザール達の声に特に反応せずロンボルトは今後の対応について話す。
「まず、状況の把握を。僕とアデットでリザードマンの痕跡を追う。また近隣の集落含め他にこういったモンスターが出没していないか調査する。
すまないがベノス殿、協力してもらえるかな?」
「もちろんだ。あと、ベノスでいい」
「ありがとうベノス」
ロンボルトとベノスはグッと握手をかわす。
「へっ、勝手にやってろバーカ」
タウザール達はぞろぞろと部屋をあとにした。
「奴らのことは気にせんでよい。もう子どもでもあるまいに村の者に悪態をつき日がな一日、山中の動物を狩って遊んでおるような連中だ。村が滅んでもヘラヘラしとるだろうさ。タウザールの父は立派な狩人だったんだがなぁ…。」
オーマックは残念そうに言い捨てた。
タウザールのことには触れることなく
「アデット、ベノス。可能なら準備がすみ次第すぐにでも出発しようと思っているんだが、問題ないか?」
とロンボルトは聞いた。両者も
「もちろん」「俺も問題ない」と返答。
「というわけで村長、皆さん、当面我々3人でこの件については調査、対策をねります。急な協力をお願いするかもしれませんがよろしくお願いします。」
不安は残るもののロンボルトの言葉に村の者たちも
頼んだぞ、無茶するんじゃないぞ、と口々に声をかけた。
話し合いも終わり村の者が退室する中、ロンボルトは鍛冶屋のせがれのイアンに声をかける。
「イアン、この間のアレ、うまくいきそうか?」
「まだ構造を確認したばっかだからなぁ。まぁ鉄製の部材の複製はそこまで難しくはないと思うが」
「OK、引き続きよろしく」
アデットが
「なんかオーダーしてんのか?」と問いかけると
「この間の鉄砲さ。ひとつ渡して複製できるか調べてもらってる。ちょっと急いでもらわないといけない状況になってきたが」とロンボルトは答えた。




