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漂泊のベノス  作者: ism
【第一部・王都/騎士団少年部編】

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13/117

下された処分

傷を負った仲間に一方的に決闘を申し込み斬りかかる──

ハーズメリア騎士団の長い歴史でも前代未聞の出来事だった。

騎士団総団長、各部隊の隊長、ラブロウの騎士団少年部入りを推した将官らが集まりベノスの処分について会議が行われた。

当然ながら騎士団追放及び罪人として刑罰に処するべきとの声が多かった。騎士団の名に泥を塗ったとして極刑を下すべきというものもある一方、ベノスの優秀さを知る者からは寛大な処置を…との声も上がった。また、ラブロウのような異分子を途中入団させたことが少年部に混乱を招いたのでは?とラブロウの存在を疑問視する者もいた。


現在、ベノスは一般の罪人が入れられる牢獄にいた。

ハーズメリアでは立会人を据えた決闘及び果し状を突きつけること自体は正統なものとして認められている。だがベノスのそれはもはや暗殺や襲撃と変わらぬものと判断されたからだ。


ベノスは放心していた。

全てを失い罪人になるであろうことは冷静さを失った状態でもさすがにわかっていた。ただ最後にせめて憎しみをこめた一太刀を浴びせようと闇討ち同然の蛮行及んだにもかかわらず魔法で返り討ちされてしまった。

完全に心は折れ、もうどうなろうとどうでもよかった。

簡単な手当てはされたものの火傷のような魔法の傷の痛みはかなりのものだったが、それすら今のベノスに生を実感させるものではなかった。


ベノスの件については徹底的な箝口令が敷かれていた。

騎士団の汚名を絶対に広めてはならぬと当事者となったラブロウ、ピットー、ジロッサ達に厳しく言い渡され、ほかの訓練生だけでなく騎士団団員にも厳命された。

その話題はおろかベノスの名前を口にすることすら硬く禁じられた。


一週間ほど経ち、騎士団少年部の訓練も日常に戻りつつあった。だがそこにはベノス、メキシオ、スラドルの姿はなかった。

メキシオ、スラドルは行軍演習の件について厳しく詰問されたが彼らなりにプライドがあったのだろう、頑なに認めることはしなかった。だがこれまでの他の訓練生に対する所行はハーズメリアの騎士を目指すものとしてとして到底見過ごすことは出来ないとされ、騎士団退団の処分となった。



そして、上層部によるベノスの処分が下された。


騎士団からの追放、及び今後王都への一切の出入りを禁ずるというものだった。誰がみても大甘の処分だった。


この処分には、実はラブロウからの嘆願が絡んでいた。


事件後ジロッサの父は怒り狂い、最悪極刑もやむなしという流れであったが、ラブロウから大嫌いなヤツだけど命をとったりずっと牢獄に入れられるようなことはしてほしくないと直接ジロッサの父と上層部に申し出たのだ。


その優しさに感銘を受けたジロッサの父は態度を一変させ、若者に寛大な処置を…と騎士団に決定を委ねた。


ベノスはディメナード家に戻されることとなった。

荷物をまとめ馬車に乗り込むベノスに、迎えに来た使用人のリントンは涙を浮かべ静かに声をかける。

「坊っちゃま…お痩せになられて…」

ベノスは無言で馬車に乗り、屋敷に着くまで声を発することは一切なかった。

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