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漂泊のベノス  作者: ism
【第五部・漂泊者の帰趨】

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107/123

怒りの果てに

「ああ…お前を生かしたのさ、間違いなく殺せるところをな」

怒りに震えるディアボリカに、ベノスはニヤリとこたえた。

ディアボリカの喉元には針でほんの少しだけつついたような傷があり血がたらりと一滴だけ流れ落ちた。


先ほどの、勝負がまさに決するその光景を思いかえすギルメル。


──ディアボリカの操る槍やナイフをかい潜り、ベノスの剣の鋒は彼女の喉元を捉えていた。


だがベノスはほんのわずか剣先がふれた瞬間、剣を引いた。


と、同時に身体中を槍やナイフで串刺しにされて吹っ飛ばされたベノス。

ギルメルはその行動に一瞬疑問符が浮かぶも、すぐ理解していた。

「生きるか死ぬかってこの状況で意趣返しするたぁ…まったく」

ギルメルはハットを少し目深に被り直しやれやれという仕草をする。


ハッとするエルトロ。

ベノスも、ドラグガルドの精鋭に選ばれるエルトロでさえディアボリカの力の前には手も足も出ず、2人をいつ殺すかはディアボリカの気分次第だった。


ベノスは、ディアボリカにいいように弄ばれたのが腹に据えかねていたのだろう。

同様に、“こちらの意思で殺さずに生かす”をディアボリカにやり返したのだ。

魔力も持たないたかが人間の、戦闘力において遥か格下のベノスにそんな舐めたマネをやられたディアボリカの心情たるや穏やかでいられるハズがない。

しかし、あの化け物相手によくそんなことをやってやろうとあの一瞬で判断したな…と、エルトロもまたベノスの行動に驚いていた。


ディアボリカのどす黒く強大な魔力が、怒りと共に大きくうねりをあげる。


「ベノス!!ドラゴン共々消えてなくなれ!!」


ディアボリカの怒声と同時に、竜巻のように彼女の周囲に渦を巻いていた複数の魔力が大蛇と化し、戦いの場となっていた山岳地帯の中腹の荒野を削りとりながらベノス達に襲いかかる。


辺り一帯丸ごと大爆裂し、地面もエンリスが身を隠していた洞窟も全て轟音をたてて崩落していく。


大蛇たちはしばらく荒れ狂い山岳地帯を破壊し続けたあと、静かに消えていった。


巻き起こった土埃が数キロ先まで覆う。



──山岳地帯の遥か上空。


ベノス、エルトロ、アフを背に乗せ、脇にエンリスを抱きかかえたドラゴンの姿のギルメルが滞空している。

「…ふう。危ねぇ危ねぇ」


「ギルメル公、ディアボリカは…」

警戒するベノスにギルメルは、

「魔力は感じない。頭に血が昇ったまま俺と連戦するのは危険だと判断したんだろうさ。なかなか利口な娘だ」

と、すでにこの場にいないことを話す。


「どこに逃げたかは姉上と連絡をとりゃ分かるはずです。…それにしても本当にすぐズラかる奴らだなぁ。これ何度目よベノス?」

はぁーとため息をついてベノスに問うエルトロ。


「ディアボリカの従者が襲ってきた時、それからディメナード家の近くで襲われた時、この間のメキシオ達の時、今回…4度目か」

指折り数えるベノスにギルメルは

「“逃げる”ってなモナルカどものドグマみたいなもんだからな。それにしてもモテる男はツライなベノス。いい加減こちらから会いに行ってハッキリ返事してやらねぇとな」

と言ってニヤリとした。…のだか、ドラゴンの姿な上に鼻先から尻尾の先まで隙間なく装甲で覆われているため表情はよくわからなかったが。


「本当に、次こそ最後にしますよ」

ベノスは遠くの空をジッと見つめ固い決意を口にした。

「…だな。その前に、一旦ヘキオン村ってとこに向かうか。このヘルハウンドとその衰弱した娘さんを安全な場所に運ばんとな」

ギルメルはそう言うとベノス達を乗せたまま矢のようなスピードで飛翔して行った。


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