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漂泊のベノス  作者: ism
【第五部・漂泊者の帰趨】

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決死の抵抗

ディアボリカの放った光輪が、エルトロの身体を少しずつ切り裂いていく。


エルトロを含め、ドラグガルドの者たちの竜形態は、高めた魔力で肉体を覆い変化する高等魔術・“魔力殻装”である。

魔力で構成された擬似的な肉体であるとはいえ、普通のドラゴンを遥かにしのぐ防御力を持っている。


そのエルトロの竜形態も、ディアボリカの強大な魔力の前には通常のモンスターらと大して違いはなかった。


「くっそ…!」

エルトロは苦し紛れに熱風のブレスを放った。

…が、ディアボリカの防御膜の前には頬をなでるそよ風に過ぎない。


「ブレスってのはこうするのよ?」

そう言って投げキッスの仕草をすると、ドリルのように高速で回転する幾つもの魔力の矢が蛇の如くうねりながらエルトロに襲いかかる。


身を守るも魔力の矢はエルトロの身体を貫き、竜形態を構成する魔力が鮮血のように辺りに飛び散った。

ドスンと膝を地につけるエルトロ。


エルトロの様子が視界に入ったベノスは、焦燥感にかられながらも冷静にディアボリカの分身の攻撃を見極める。

(早く加勢に行かないと…!)

もちろんエルトロに加勢したところでディアボリカに手も足もでないのは百も承知だが、このままエルトロがやられ続けるのを見過ごすわけにはいかなかった。


だが、高速の斬撃の嵐になかなか攻勢を図ることが出来ない。

(なんとか、ほんの一瞬スキが出来れば…)


──次の瞬間。

まるでベノスの思いを察したかのように、エンリスがディアボリカの分身に向かって体当たりを仕掛けた。

エンリスに蹴りを入れ弾き飛ばすが死角からの突然の攻撃に大きく体勢を崩す分身。



(…殺った!)

ベノスが放った閃光のような突きが、分身の胸を刺し貫いた。


…が、それと同時にベノスは脇腹にするりと何が刺しこまれていくのを感じた。


ディアボリカの分身の剣がベノスの脇腹に深々と刺さっている。


分身は、胸を貫かれながらまるで何事もないような動きでベノスに反撃を加えていた。


その様子を見ていたディアボリカは思わず吹き出して笑った。

「あはは、ダメよベノスそんなとこ狙ったって。生き物じゃないんだから心臓なんかないし、動きをとめるなら一撃で全身バラバラにしないと」


「──!!」

何かを発しようとしたが言葉にならず、ベノスはそのまま力ずくで押され、そのまま背面にあった大岩に叩きつけられた。


ベノスを貫いた剣は岩に突き刺さり、ベノスは磔にされたような状態になった。


「ベノスッッ…!」

ディアボリカの光輪によって翼はズタボロになり、魔法の矢によって体中を穿たれ満身創痍のエルトロは叫ぶようにベノスの名を呼んだ。


ベノスは素手で剣の刀身を掴むとなんとか引き抜こうと力を込めた。


だがディアボリカの分身はベノスに刺さったままの剣の柄頭を足で押さえつけた。


分身を睨みつけ、刀身を握った手から血を滴らせるベノス。

──まだだ。まだやれる。以前にもモンスターが放った矢や剣を体に受けたことがある。この傷ならまだ戦える。


なんとか抵抗しようと気力を振り絞るベノス。

だが、そんな気力すら一瞬で消えてしまう程の耐え難い激痛が傷口に走った。

「?!…ぐあぁああっっ!!」

ベノスはあまりの痛みに気を失いそうだった。これは、刺された痛みではない。


ベノスは震える血塗れの手で傷口に触れた。

先程エルトロを襲った槍の破片と同様に、微細な触手が剣から生え、ベノスの傷口から身体に根を張り始めていたのだ。


侵蝕が進むたび凄まじい激痛がベノスを襲う。

「…がっ…!!ぐぉおおっ!」

痛みに声をあげた。


「ベノス、もう降参したら?ドラゴンはともかく、普通の人間じゃ到底耐えられない痛みよ?」

ディアボリカは芝居がかかった、心配そうな表情を浮かべてベノスに屈服を促した。


だがベノスは歯を食いしばりディアボリカに抗いの眼差しをむけた。


「強情ねぇ。まぁあと数分で失神するでしょうからそしたら引きずって連れて帰るわ。あ・ドラゴンにはここで死んでもら…」

と、ディアボリカが言いかけたところでエルトロは最後の力を振り絞り飛び上がった。


「へぇ、まだそんな元気が…」

ディアボリカは少し驚き身構えたが、狙いはディアボリカではなかった。


エルトロは風の如くディアボリカの分身に襲いかかり爪で引き裂き瞬殺した。


そのまま意識を失いかけているベノスに覆い被さり

「オレじゃ力不足だったわ。わりィなベノス」

と一言告げると全身から発光。辺りが光に包まれる。


一瞬の閃光の後、ベノスを覆い隠し護るように鉱物化し固まったエルトロの姿が残されていた。


「なぁにソレ?護ってるつもり?」

ディアボリカは魔力で数本の槍を出現させると、それを鉱物化したエルトロに飛ばした。


一撃で粉々に粉砕つもりだったが、槍はエルトロの硬さに敵わず弾けとんだ。

エルトロが最後の力を振り絞った鉱物化の魔法は凄まじく、ディアボリカは次々に魔法を放つがびくともしない。


「…ぐっ…エ…エル…トロ」

鉱物化したエルトロに包み込まれているベノスは、僅かに残る意識でエルトロに語りかけるが返事はない。完全に鉱物となってしまっているようだった。


命懸けでベノスを護る行動をとったエルトロに対し、言葉にならない感情がベノスに胸に押し寄せていた。


ゴォン!という重い金属音がベノスの耳に響く。


「あ、これならいけそう」

エルトロの背には手のひらくらいドーム状のクレーターが出来ている。

ディアボリカはさらにもう一撃無属性魔法を放った。

クレーターがもう一つ増える。


「うわーこれ全部ぶっ壊すまであと何回やんなきゃいけないの〜?もーやだー」

そう言いながら乱暴に魔法を連打し続ける。


激痛に耐えるベノスの周りに重い音が響く。

思考は停止しかけていた。


──だが、重い金属音が突如止んだ。


外では、ディアボリカが魔法を撃つ手を止めていた。


何かが…

来る?!


辺りが一瞬光に包まれ、その“何か”がディアボリカに向かって急降下してきた。


ドォォオン!という地響きと落下時の衝撃に山が揺れ、ベノスらの戦いの場となっていた山岳中腹の荒野は地割れを起こしている。

エンリスは崩れそうな洞窟の奥でアフを守りながら驚愕している。

「ナンダ、コノ魔力ハ…?!」


その“何か”の落下、いや攻撃をかわして上空からふわりと舞い降りるディアボリカ。“何か”の姿を見て、忌々し気にその名を口にした。


「白金の重装…!“復讐者”ギルメルね?」


※ギルメルについては、第68話と第73話をご覧下さい。

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