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漂泊のベノス  作者: ism
【第一部・王都/騎士団少年部編】
1/107

影を歩む者

神々しい光を全身から放つ巨人は、森の木々を薙ぎ倒しながら敵味方の見境なく攻撃を続ける。


水晶のように透けた体躯の巨人の心臓部には、意識を失った“勇者”の姿がフワフワと浮遊しているのが見える。


巨人の足元を駆ける一人の男・ベノス。


この危機的状況にも関わらず、ベノスはまだ騎士団少年部にいた日々のことを思い出していた。

「…殺してやろうと思ったほど憎かったヤツを、今はなんとか救おうとしてるなんて、因果なものだな…」


「ベノス殿!逃げて!!」

後方から仲間の声が聞こえたその刹那、巨人の目から広大な森をも焦土に変える閃光がベノスに向かって放たれ─。



─遡ること1年と2ヶ月ほど前・ハーズメリア王国。

王国騎士団の統率力と騎士たちの武勇は国外にも誉れ高い。

その所以は騎士団入りを志願する少年たちを育成する少年部だ。王国への忠義や騎士道のなんたるかを早期に学ぶことで騎士として高い精神性が育つため、コストはかかるがハーズメリアではこの方法を長年とっている。


志願者は出自不問のため、貴族の子息から農村の出の者、貧民街出身の者もいる。それ故に部内では出自によるいじめはよくあることであった。だが騎士たるものが、生まれによって優劣をつけるなどあってはならぬことである。騎士道に背くものとして厳しい処罰の対象となることは誰もが知る事であるが、未熟さから愚かな行為に走る者はどんな所にもいる。


ハーズメリアの名家のひとつに数えられるディメナード家。ベノスはディメナード家の次男として生まれ、15歳で騎士団少年部に入団。厳しい訓練の日々を送り17歳になるころには同期の中では最も優秀な者として周囲の評価を得ていた。だが…。


─ある日の昼休みの中庭。

厩舎から大きな物音とともに興奮状態の馬が飛び出してきた。


馬番のピットーは降りることも制止する事もできずただただ荒馬にしがみついたまま助けを求めている。


休憩中の少年部の面々が騒然とする中、ベノスは別の馬に乗って後方から近づき、そのまま荒馬に飛び移った。


大暴れする荒馬の上で、ロデオ状態から巧みな馬術で馬を制止。

「すげえ!さすがベノス!」

周囲から喝采の声が上がった。


そこへ騒ぎを聞きつけた教官たちが中庭に駆けつけてきた。

「どうした?何の騒ぎだ?」


ピットーは半べそになりながら

「申し訳ありません…馬が虫に驚いて…」と説明する。


「いや、少し馬が暴れただけ。どうということはありませんよゼラー教官」ベノスは落ち着いた様子で教官に話す。


「そうか、大事なければそれでよろしい」

「ところで…今日の馬番はピットーではなくベノス、君の班のメキシオだったはずだが…」

駆け寄ってきていたベノスの取巻きのメキシオは突然の名指しに焦りの表情が浮かぶ。


「あっ、その、それは…」言い淀むメキシオを遮りベノスは

「申し訳ありません、教官。メキシオには次の時間に必要な訓練用の武具を運ぶ手伝いをしてもらっていました。ピットーには運び終わるまでの間、少しだけ馬の世話をお願いしておりました。僅かな時間なのでいいだろうと気を緩めて報告を怠ってしまっていました。次からはこういったことのないよう気をつけます。」


「そうか、以後気をつけるように。」

どこか訝しい顔をする教官が立ち去るのを確認したあと、ベノスはピットーの耳元で静かにこう言った。


「さっさと馬の世話を終わらせて、訓練用の武具を運んどけよ、道具屋のガキが」


挿絵(By みてみん)


漫画での発表を考えておりましたが、制作に途方もない時間がかかりそうだったのでこちらで小説として発表することにしました。小説をまともに書いたことがないので違和感のある表現や文章、誤字脱字などがあるかと思いますがあたたかく見守っていただけますと幸いです。


挿し絵のキャラクターですが、右からベノス、メキシオ、スラドルです。


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