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トロマの禍  作者: 駄犬
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ペテン師

 男子生徒は実に嗜虐的な心の持ち主であった。同級生の怯えた表情を舐め取るように見下ろし、刃物を得意顔でチラつかせる。恨み辛みを訴えるなどして、粗雑にこき下ろす悪罵の言葉遣いに走らない様子から、男子生徒の行為は特定の誰かに向けた私怨ではないことは明らかだ。だが、自身を取り巻く環境への漫然とした後ろ暗い怒りにしては、あまりに無秩序で節操がなく、人を傷付けることに関して躊躇いがなさ過ぎる。これは明らかに、嬉々として臨んだ男子生徒の夢想に近い。だからこそ、彼は一目散に悠然と向かっていったのだろう。


「?」


 その歩調が意味するものは、男子生徒が目の前の獲物から目を離すことに繋がり、対峙の様相を醸成する。「刃物」が持つ本来の用途を無視して、人間へ対する脅威に変えた男子生徒の自信は、不埒で目も当てられない。絵に描いたような下卑た表情を作り、近付いてくる彼を塵芥程度に捉えた。しかし、そんな余裕は、刃物をまるで恐れない彼の右手がするりと伸び、刃物を持つ右腕を掴んだことから、いとも容易く霧散する。


「な、何を触ってやがる!!」


 男子生徒の何者も恐れない猛々しさは瓦解し、唾を飛ばして威嚇する野生動物さながらの激しさを見せる。このような脅威はまるで想定していなかったようで、彼に腕を掴まれたことによる勃然とした怒りが顔を紅潮させた。彼の手を振り払う為に大きく右腕を振り回すが、並外れた握力がそれを許さない。すると、男子生徒は右手から刃物を左手に移し替え、彼を忌々しく睨むと共に、下から上に向かって刃物を振り上げると、顎から額にかけて切り裂く軌道を描いた。だが、苦し紛れに振るった男子生徒の動作は、ステップを踏むかのように後ろへ下がった彼に対して、取るに足らない隙だらけの一振りとなった。


「?!」


 修羅場をいくつも経験したかのような老獪な身の処し方に、男子生徒は驚きを隠せない。正常な反応だ。この場に於いて、これほど冷静に刃物へ対処できる人間が他にいるだろうか。男子生徒にとって、同じクラスメイトに彼がいたことが運の尽きであった。


「僕はなぁ、神様にお願いされたんだよ。だからなぁ、僕の邪魔をするってことは、神様に楯突く事と同義だぞ」


 男子生徒は神の威光を借りて、彼が如何に道義に反しているかを語った。その瞬間、彼のこめかみにミミズが這いだし、今までにない怒気が全身から醸し出される。


「ペテン師を崇拝して恥ずかしい奴だよ。お前は」

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